報道特番 成田空港郊外テロリスト籠城事件
視聴率凄いことになった模様
「はい。こちらは籠城現場から一キロほど離れた場所から中継しております。
ここから少し先に警官隊の包囲線があり、積み上げた土嚢の後ろに機動隊員が隠れ、そのさらに後ろに警察の車両が止まっています。
現在、テロリスト側の銃撃は散発的になっており、日が暮れだした現在、機動隊は投光車の用意をしているという事です。
現地からは以上です。一旦スタジオに戻します」
「はい。
現場からでした。
解説の○○さん。
映像を見ると、警察以外の車両も見掛けますがこれは何でしょう?」
「BTR-70ですね。
車体に所属が書いていますね。
北樺警備保障ですから、ターゲットにされた桂華院瑠奈公爵令嬢の警護部隊なのかもしれません。
この警備会社は、旧北日本軍の将兵の雇用を目的とした桂華グループの桂華商会の子会社で、桂華グループの施設や要人の警護をしています。
今回のテロ事件では、改正警備業法により東京・千葉の警備会社を指揮下に入れる命令が発動されており、この警備会社は現在警察の指揮下に入っているはずです」
「その桂華院瑠奈公爵令嬢ですが、そちらの現場の××さん?」
「はい。
こちら成田市郊外のホテルです。
桂華院瑠奈公爵令嬢はこのホテルのスイートルームに移動しており、状況が整い次第記者会見を開くと先程発表がありました。
既にホテルの周囲は警察及び警備会社の車が囲んで厳重な警戒を行っています。
既にこの成田空港周辺には、空港警備隊千五百人の他に、警視庁の機動隊が順次派遣されており、北樺警備保障を始めとした空港警備会社の警備員を入れると数千人規模に膨れ上がる状況になっています。
成田空港は事件解決まで完全閉鎖が決定されました。しかし、利用客を空港外に避難させる作業が続けられており、未だ混乱は収まっていません。
こちらからは以上です」
「ありがとうございました。
ここで、桂華院瑠奈公爵令嬢が自らテロを防いだシーンをもう一度お見せします。
○○さん。
公爵令嬢凄い動きですね」
「ええ。
完全に警備の人間が出し抜かれていますよ。
彼女はアカデミー助演女優賞を取りましたが、アクション映画にも関わらず彼女のシーンはスタントなしだったそうです。
華族は第二次2.26事件で決起部隊の標的にされ多くの犠牲者を出しました。その教訓から自衛ができる程度まで鍛えることは、旧大名家を始めとして行われていたということです。
彼女がテロリストの手を押さえ付けなければ、手榴弾で自爆されていたかもしれませんね。
また、先にこのテロリストに体当たりをした少年がこのテロリストを見付けなければ、最悪の事態になっていたかもしれませんね」
「ちなみに、テロリストに体当たりをした少年は帝亜グループ一族の帝亜栄一さんで、桂華院瑠奈公爵令嬢の御学友でもあるそうです。
さて、今回の事件において政府は自衛隊の治安出動を決定しましたが、国会記者クラブの××さん?」
「はい。
今回のテロ事件では自衛隊の治安出動というだけでなく、米国からの注目も高いことから永田町関係者も動揺を隠せません。
桂華院瑠奈公爵令嬢は若年ながら桂華グループの広告塔として活躍し、現大統領とも親密な関係を築いているセレブの一人です。
その彼女が狙われたということで、ワシントンでは日本大使を呼んで状況説明を求めました。また、先程ホワイトハウスの報道官は会見で『米国は同盟国日本の窮地に際してありとあらゆる支援を行う用意がある』というコメントを発表しました。
政府関係者の一人からは、米国の注目度も踏まえて自衛隊の治安出動が決まったという情報が得られました。
外務省の関係者によると『米国にとってイラクの戦況が思わしくない中、大兵力を派遣している日本の脱落は、根底の戦略を変えかねない』ということで、何かしらの動きがあったのではと推測されています」
「ですが、自衛隊の治安出動については国会内でも異論が多いようですね?」
「はい。
先の新宿ジオフロントテロ未遂事件は警視庁独力での解決で終わっただけに、警視庁幹部の一人は『我々だけで解決できたはずの事件に政治が介入した』と憤りを隠そうとしませんでした。
自衛隊の治安出動は第二次2.26事件ぶりで、国会での承認が必要になることから野党側は徹底した追及を行うと既にコメントを発表しています。
内閣支持率は40%台を維持しているとは言え、イラク戦参戦の説明責任等を含め波乱含みの国会になる事は必至で、与党幹部からは『風が吹き始めた』という声も聞かれました」
「風、つまり解散風という事でしょうか?」
「はい。
2000年の前回選挙から衆議院の任期も残すところ後1年となり、以前から官邸は解散も視野に入れ機を探っていたという情報もあります。
任期満了に伴う総選挙では、解散を封じられた総理が追い込まれたと見られてしまうからです。
与党側は、イラク戦争の勝利と不良債権処理の抜本的な解決を今国会で図った後に、会期末もしくは秋の臨時国会冒頭に解散というシナリオを描いていたと見られています。
それがこのテロによってシナリオが狂わされたのではないかとの憶測もあります。
現在までこちらには警察に負傷者が出たという情報しか届いていませんが、警官隊に死者が出た場合や再度桂華院公爵令嬢が襲われた場合に、『これ以上イラク戦争に関与していいのか?』という声が出るのは確実で……」
「あ、今、成田の現場に動きがありました。
そちらに繋ぎます」
「はい。
こちら籠城現場です。
たった今、自衛隊が到着しました!
今回の治安出動によって成田に来たのは陸上自衛隊第1空挺団及び土浦駐屯地武器教導隊で、現在、90式戦車をトレーラーから下ろしています。
陸上自衛隊の発表によると、状況によっては東部方面隊の投入まで視野に入れ……あ、ご覧ください!
テロリストの立てこもった建物から白旗が上がりました!建物から白旗が上がりました!!!」
視聴率
あさま山荘事件の時の視聴率は89.7%。
さすがにそこまでは行ってないと思うが、50%は確実に超えていると思う。
解散の意味
総理の伝家の宝刀だからこそ、抜かなければ『抜けない』と侮られてかえって総理の権力が落ちる。
それで退陣に追い込まれた例の一つが海部総理である。




