第29話 上野君を蹴って弱らせてから助けよう作戦。3
そこからは鎖かたびらVS鎖かたびらの高度な戦いです。蹴って蹴り返しての繰り返しです。
……途中から蹴り以外にもっと有効的な攻撃手段があるのではないかと思いましたが、男の戦いは理屈ではないのかもしれません。
戦いが始まって約1時間以上経過しました。少年漫画並みのバトルシーンが目の前では展開されています。私が入る隙が全くありません。作戦が台無しです。
これはもう私も鎖かたびらをネットで購入して鎖かたびらVS鎖かたびらVS鎖かたびらの戦いをすべきなのでしょうか。お急ぎ便なら案外間に合うかもしれません。早速スマホを使って注文をしてみましょう。
私が地べたに寝ころびながら、何かいい感じの鎖かたびらがないかと鼻歌交じりに検索していると、ゆーくんの「しまったっ!」という大声が聞こえてきました。何か状況に変化があったのでしょうか?姿勢を直して状況を確認しようとすると何やら凄いスピードで此方に物が飛んできます。
それは私の真横にあった木にサクッと勢いよく刺さりました。……くないです。
改めて二人の方向を見てみると、上野君が此方の存在に気づいたようで徐々に近づいてきます。
……やばいです。殺されるかもしれません。ゆーくんから「逃げて!」と叫び声が聞こえますが、好きな人を前にしているのと、怖いもの見たさで全く足が動きません。体の震えが止まりません。
気が付くと上野君は私の目の前にいました。
一体何をされるんでしょう。一体何を言われるんでしょう。
「ぱおーんっ!!!」
それだけ言うと上野君は去っていきました。




