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第26話 ボコボコ。

「大丈夫ですか?」


「こ、怖かったよぅ……」


「もう安心してください」


 ゆーくんが慣れた手つきで縄を解くと、桃百合さんが泣きながらゆーくんに抱き着きました。怯えている桃百合さんに対してゆーくんが優しく頭を撫でています。


 ふ、二人とも初対面なのでは……?なんですかこれ。二人が恋に落ちても何の違和感もないのですが。


「……はっちゃん。ちょっといいかな」


「な、なに?」


 ゆーくんは泣き止んだ桃百合さんを帰すと、怖い表情で話しかけてきました。こんなに怒っているゆーくんを見るのは初めてです。少しビビッてしまいます。……私は何か間違ったことをしてしまったのでしょうか。


「なんで彼女を蹴ろうとしてたの?」


「……ゆーくんが考えてくれた作戦を実行するには練習が必要かなって……」


「嫌がってたじゃないか」


「でも……あれは演技で……」


「演技じゃないことぐらい見ればわかるよ」


「……でも……えっと……」


「僕以外に人の嫌がることをするのはダメだって注意してきたじゃないか」


「……ごめんなさい」


「こればっかりは謝っても許されないよ。……流石に今回に関しては僕の言う通りにするんだ」


「……はい」


「まずは僕の手足を縄できつく縛るんだ」


「……はい」


「そして次は僕のケツを全力で蹴るんだ」


「……はい」


 私は言われるがままゆーくんを縄で縛りケツを思いっきり蹴りました。怒られていたはずなのにいつの間にか話をすり替えられている気がします。


「……ぅ……気持ちいぃ!……これこれ!」


「あの……えっと……ゆーくん質問してもいい?」


「どうしたんだい、はっちゃん」


「どうして私の家に入ってこれたの?カギを閉めてたはずなのに」


「そりゃピッキングしたんだよ。あらゆる事態に対応できるために練習してたのさ」


「そもそもなんでタイミングよく家に入ってきたの?」


「そりゃ盗聴器で聞いてたからさ。はっちゃんの家に何個か設置してるからね。これは作戦が失敗してしまうと思って急いで駆け付けたんだよ」


「……作戦?」


「僕が考えたはっちゃんに蹴ってもらおう作戦だよ。上野を襲うっていう提案をすれば当然はっちゃんは練習がしたいって言うと思ってさ。毎日蹴られるのを楽しみにしてたのに、まさか彼女を練習に使うなんてひどい話だよ。意味わかんないよ。流石の僕も怒るよ」


「ゆーくん……」


「ん?どうしたの?」


「私はとても怒っています」


 その日、私はゆーくんをボコボコにしました。

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