第22話 襲う。
「ごめんなさい。上野君が好きだからゆーくんとは付き合えません」
「ええ。全くそんな意味で言ってないのに無駄に僕の心が傷ついたよ」
「それでどんな作戦に付き合えばいいの?」
「わかってて言ってるから相当立ち悪いよ。まあいいんだけどさ。作戦っていうのはとってもシンプルで僕が後ろから上野を襲ってみようと思うんだ」
「襲うって……なんでそんなことするの?」
「僕が上野を襲っている時にはっちゃんが助けに来るっていう少年漫画とかによくある展開さ。きっと助けてもらった上野は好きになるはずだよ」
「でも……そんな作戦上手くいくかな?ゆーくんが調べてくれたアカウントから地道に仲良くなっていったほうが現代的でいいんじゃないかな?」
「ダメダメ。さっきも説明したけど、あれはもう会話にならないよ。連絡を取るだけ無駄さ。それならいっそもう暴力でなんだかんだで仲良くなろうって作戦しかないと思うんだ」
「言ってることがよくわからないけどそれで上手くいくのね?」
「100%上手くいくよ」
「でも……うーん……。仮にやるとして上野君を襲うタイミングなんてある??上野君って気がついたらいつの間にかいなくなったりするんだよね」
「住所を僕は特定してるんだよ?上野の行動パターンなんて全て把握してるさ」
「ゆーくん凄い!そんなことまでわかるんだ!」
「僕は何でも知ってるからね。ちなみに昨日の上野の晩御飯はからあげ弁当だったよ」
「え……?なんでそんなことわかるの?」
「家の近くのゴミ捨て場を普段から漁ってるからね。もはやゴミから何を食べているのか推測するのが毎日の楽しみになりつつあるよ」
「きも」
「ええ。やめてよ。たしかにストーカーを通り越して変質者以外の何物でもないけれど、そんなシンプルな言葉で罵倒するのやめてよ」
「それで具体的な作戦はどうするの?襲うっていってもどうやって?」
「周りから人間性を疑われるかもしれないけれど、僕が上野をひたすら蹴って弱らせるから、はっちゃんがそのうちに僕を蹴って弱らせて上野を助けるんだ。そうしたらもうラブラブハッピーだよ」
「ゆーくん……」
「どうしたの?なんか問題あった?」
「その作戦凄い!きっと上手くいくよ!」
こうして、今週の金曜日に上野君を蹴って弱らせてから助けよう作戦を実行することになりました。




