第13話 手紙。
時間は経ち、再び授業の時間です。作戦を実行する時がやってきました。
横を見てみると、何を考えているのかわからない表情で上野君が窓を眺めています。カッコいいです。私も見つめられたいです。これはもう窓になりましょう。やめときます。
さて、今回の作戦は題して『授業中に手紙のやり取りをしよう作戦』です。勿論手紙と言っても長文ではなく、ちょっとした短い文のやり取りを繰り返し、上野君と仲良くなろうといった、ドラマや少女漫画で良くある光景のシンプルな作戦です。
因みに一番重要な最初の文章ですが、『上野君と仲良くなりたいです』と書いた手紙を渡す予定です。シンプルイズベストです。私の純粋な気持ちを表しました。『下半身に興味があります』と正直どっちにしようか悩んだのですが、痴女っぽいのでやめました。
勿論今回もどんな返事が来てもいいようにシュミレーションもバッチリできています。やり取りはこんな流れを想定してます。
◇
『上野君と仲良くなりたいです』
『実は俺も話したかった』
『本当ですか?嬉しいです』
『俺も嬉しいよ』
『上野君は好きな食べ物はありますか?』
上野君は急に席を立ち、黒板の前にいる教師からチョークを奪い取ります。
「ちょっと!上野!何やってるんだ」
「黙って見てろ!このクソ教師!!」
獣のように黒板に上野君が殴り書きをします。――書き終わるとそこには認識できない文字が。
「上野!これはなんだ!」
「おい、葵!」
「は、はい!」
突然名前を呼ばれて緊張して私も席を立ちます。
「持ってる3Dメガネかけてみろ!」
「は、はい!」
偶然持っていた3Dメガネをかけると、そこにはなんと『味噌汁』という文字が。
「葵!俺のために毎朝作ってくれ!!」
「はい!!!!」
◇
完璧です。手紙のやり取りからプロポーズされる未来が完璧に見えました。




