第12話 ゆーくん。
ゆーくんはとってもいい人です。
ちょっとだけ紹介するなら外見は極めて普通です。かっこいいわけでもなく、ブサイクというわけでもなく、本当に普通という言葉が一番しっくりくる見た目をしています。もしこの世に普通コンテストがあったとしたら銅賞ぐらいはギリギリ取れないと思います。世の中決して甘くありません。
ゆーくんと知り合ったのは幼稚園からです。実家が隣だったためよく遊んでいました。遊ぶ内容と言えば決まって私がゆーくんにミッションを出して、それを完遂するまで家に帰れないといったシンプルな遊びです。一週間ほど家に帰ってこないという事態も度々ありましたが、本人が望んでやってることなんですと私が説明すると親御さんも納得されていました。今から考えるとおかしいと思います。でもちゃんとやり遂げるのでゆーくんは偉いと思います。
そんな仲が中学まで続き、私たちも気がつけばもうお互い高校生です。生憎ゆーくんとは別々の高校になってしまったけど、今もこうやって私の通学手段として頑張ってくれています。
「思ったことがあるんだけどさ」
「何ー?」
私を後ろに乗せて自転車を漕ぎながらゆーくんが喋ります。
「中学の時は別に同じ学校だったから乗せていくのもよかったんだけどさ」
「うん」
「高校別々になったんだし、僕がはっちゃんを乗せて行くのやめない?」
「なんで?」
「昨日やってみてわかったんだけどさ、はっちゃんを学校に送ってから自分の学校に向かうと絶対に遅刻になるんだよね」
「たぶんなるよね」
「あ、想像はできてたんだ。やっぱり僕も毎回遅刻をすると先生に怒られちゃうからさ」
「ごめんね。頑張って怒られてね」
「えぇ。嘘でしょ。僕が今後怒られるの前提なの」
「頑張って」
「えぇ。わかったよ。もう諦めるよ。その代わりにさ、妥協案を出していい?」
「ダメ」
「集合時間をせめて変えない?はっちゃんが降りてくる時間が15分でも早くなればさ、僕が学校に間に合うし、あと僕だけ4時集合って本当に意味ないと思うし、時間を変えようよ」
「ダメ」
「えぇ。嘘でしょ。流石にこの意見は通るんじゃないかと思ってたのにショックだよ。わかったよ。もう諦めるよ」
そうこうしているうちに学校につきました。ゆーくんは私を降ろすと全力で学校へと向かっていきました。
いつもありがとう。ゆーくん。




