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僕は僕だから僕なんだ  作者: 深雪林檎
◆第二章
34/52

番外編 三年前の雪の日

普段の約3倍量

三年前の秋頃。

中学二年の私はある男子生徒に告白された。

私より少し小さくて、無邪気で素直で優しくて可愛い……女子から人気のあるクラスメートの男の子だった。

私は最初は何となくOKして付き合い始めた。

まだ恋愛感情というものがはっきりと分かってなかったのかもしれない。

友達からは良くはしゃぎたてられていたが、どこか冷めたように聞いている自分がいた。


でも好きになるのには時間がかからなかった。

甘えん坊の寂しがり屋。

そんな彼氏をずっと守ってあげたかった。



しかしそんな関係も呆気なく終わった。

クリスマスの日をきっかけにして。









12月21日。



「凌!起きなって!」


私はその男の子を揺すって起こす。

黒い学ランに黒い髪。

頭髪は違反にならない程度に短く整えてあり、制服は今は机に突っ伏しているから分からないけど、襟のフックまでとめてある。

見るからに真面目そうな凌。

でも一日中寝てばかりいる。


「んー?あ、おはよ玲」


眠たそうな目を擦って起きる凌。

そんな何気ない仕草が可愛らしいと思ってしまう。


「もう放課後だよ」


私はちょっと冷たく言ってやる。

照れ隠しだ。


「あと5分…」


そんなベタな事を言って腕の枕に顔をうずめる。


「駄目」


「うわっ!?」


椅子を思い切り引くと、声を上げながらも、そんなに派手な音も立てず凌がひっくり返る。


「い、痛いよ玲」

お尻をさすりながら、床に座る凌が泣きそうな声を出す。


「目、覚めたでしょ?」


笑いながら意地悪く聞く。


「いじわる」


「そうだよ?」


「ふん」


未だに座り込んで鼻を鳴らして顔を背ける。

そんな仕草もやっぱり可愛い。


「ごめんごめん。はい、手」


軽く謝って手を差し出す。

凌はその手を掴んで起き上がろうとする……から手を離した。

やっぱりというか当然というか、再び凌がひっくり返る。

本当に泣きそうになった凌に謝りながら、私たちは学校を出た。









「最近寒いなぁ」


「うん、もうすぐ雪も降りそう」


帰り道を一緒に歩きながら、たわいのない会話をする。

学校じゃ寝てばっかだから、放課後が唯一の会話の機会と言っても良い。






「玲」


「ん?」


しばらく歩くと呼びかけられる。

少し先に歩いていた私は後ろ手に鞄を持って振り向く。


凌は立ち止まっていた。


「凌?」


「僕弱いからさ、玲の事守ってあげられないかもよ?それなのに僕なんかが彼氏で良いの?」


俯いて凌は言う。

そんな凌を見て私はため息をついて口を開く。


「クラスの誰かにでも言われた?」


「…うん」


少し躊躇いながらも肯定する。

やっぱり。

こんな大人しく凌だから、周りからあれこれと言われて余計に気を回す。


「そんなん気にするなって!私は凌が良いんだよ」


「でもさ……玲が傷つくの嫌だし」


「凌に心配されるほどヤワじゃないよっ!この話は終わり!」


「でも…」


「終わり!」


まだ何か言いかける凌を無理やり黙らして歩き出す。

少し遅れて足音が聞こえた。

ありがとう、と凌が呟く声と。





「もうクリスマスだよっ」


しばらくして凌が周りをキョロキョロと見ながら言った。

さっきと違って笑っている。

色んな店や街路樹に電灯や彩色が施されていて、クリスマスのムードを作ってる。

今は明るいし、雪も降ってないからそんなにだけど。


「んーそだねー。クリスマスプレゼント何が欲しい?」


「何でも良いよ。玲がくれる物だったら大事にする」


ニコッと笑って答える凌。

バカ……ちょっと嬉しいじゃんか。

癪だからからかってやる。


「どうしよっかなー。じゃあプレゼントは……」


いったん途切り、凌の顔を両手で掴んで向き合い、わざと恥じらいのある顔をしていう。


「わ・た・し。凌だったら…好きにしていいよ?」


途端に顔を真っ赤にする凌。

いくら人畜無害な凌だって人並みにはそういう知識がある。


「な、な、何言ってるの玲!?そんなの…えと…まだ早いっていうか…その…」


少ししてバタバタと慌てる凌。

やっぱりそんな仕草が可愛らしくてクスッと笑う。


「冗談だよ、冗談。それとも…期待した?」


私は意地悪く笑って聞く。


「別に期待なんか……」


ちょっとむくれて凌は俯いて答えた。


「なーんだ。凌は私に興味無いのか。胸だって大きくなったのに」


「ぶっ」


私の言葉でふき出す凌。

やっぱりからかうと面白い。

胸は本当だけど。


「べ、別に興味が無いってわけじゃ…」


「はいはい。じゃあまた明日ね」

ちょうど家の方向が逆の道まで来たから、私はそのまま帰った。









12月22日。


今日で今年最後の学校だ。

退屈な終業式、面倒なHRを終えた途端に教室中がはしゃぎ出す。

クリスマスもあれば大晦日、年越し、正月とたくさんのイベントがある休み。

教室を飛び出して帰る人もいれば、友達と休みの間の打ち合わせをする人もいる。

そんな中で唯一微動だにしない人に近づく。


「凌!終わったぞ!」


「ん゛ー」


「最後くらい自分で起きたら?」


ん?そもそも寝なければすむ話か。


「おはよ」


顔だけ横に転がしてこっちを向く。


「帰るぞ」


「うん」








一緒に寄り道をして、帰り道を歩きながらクリスマスの予定を立てる。


「クリスマスどっか行くかー」


「どこに行くの?」


「えっと、映画とか?」


「何の映画?」


「えっと……ていうか普通は男の方がこういうの決めるんじゃないかなー?」


「玲の方が男らしいじゃん」


「なっ!?コイツ!」


「痛い痛い!ごめんってば、頭凹む!」


「ふん!凹んじまえ」


「うぅ、まだズキズキする」


「自業自得……ん?この店なんだろ?改装中かな」


「あ……喫茶店になるらしいよ。」


「ふーん。良く知ってるな。ここ通るの初めてじゃない?」


「うん、ちょっと聞いたことあるだけ」


「それにしても何だか寂しい店構え」


「……このままの方がマシだと思う」


「なんか言った?」


「ううん、何にも。帰ろ?もう遅いし」


「そだな」


「で、何の映画にするの?」


「えーっと……凌も考えるんだよっ!」


「ははははは、はーい」

何だかんだでやっと決まって帰りました。








12月23日。


うー寒い。

今日は一段と寒いなぁ。

特に用事も無いし。

布団から出るの面倒だし。

寝よ。









12月24日。


「おっそい!」


「ごめん、寝坊しちゃって」


待ち合わせ場所に笑って来る凌。

30分くらい遅れている。


「私が起こさないと起きれないのか」


頬を思い切りつねる。

あ、柔らかい。


「痛い痛い!ごめんなさい!」


涙目になって言う凌。

そんな顔されたら……もっといじめたくなる。

でも我慢しよう。


「じゃあさっさと行くよ。時間もギリギリだし」


「あ、うん」


凌の手を引っ張って映画館に向かう。

凌は反対の手でしばらくの間、解放された頬をさすりながらついてきた。






「疲れたぁ」


凌が喫茶店のテーブルに突っ伏す。


「何よ、私といると疲れるっていうの?」


「だってあっちこっち連れ回されるんだもん」


テーブルに顎をのせたまま文句を言う。

確かに色々と回ったかも。

私はアハハと笑って誤魔化す。

日の出る時間が短い冬の時期もあって辺りはすっかり暗くなっている。


「雪……降らないね」


凌が顔をつけたまま外を向いて呟く。


「好きなの?」


「まあね。なんか優しくてふわふわしてて、お淑やかなお嬢さんって感じするしね」

「……私に対しての嫌みかな?」


私はちょっと睨みながら聞く。

どうせ粗暴な女子ですよ。

すると凌は再びこっちに顔を向けて笑う。


「ううん。玲が一番大好きだよ」


「っ!?な、何言って……!?」


私は顔を真っ赤にして慌てて立ち上がる。

当の本人は自覚が無いのか、どうしたの?といったふうに私を見ている。

いきなりそんなの反則だって。

……凌のくせに生意気。


「痛っ!」


私は鞄から取り出した袋を凌の顔に叩きつける。


「クリスマスプレゼントっ!」


照れを隠して大きな声で言う。


「あ、ありがとう。開けるよ?」


キョトンとして礼を言って封を開ける。

取り出した手には帽子とマフラーに手袋。

凌は嬉しそうに笑って口を開く。


「これって玲の手作り……なわけないか」


生産地だとか素材だとかが記してあるのを見て苦笑する。

そもそも私がそんな事出来るわけが無いじゃない。


「要らなかったら返せよな」


「ううん。大事にする」


「…そっか」


「僕からもプレゼントあるよ」


そう言って袋を取り出して渡される。

私は黙ってそれを開けてみる。


「あっ」


中に入ってたのは頭につける可愛らしいリボンだった。

これってもしかして……


「喧嘩売ってるの?」


わざわざ私に似合わない物を渡すなんてね。


「売ってないっ!!玲にもそういうの付けて女の子らしくなってもっと可愛くなって欲しかったから……」


尻すぼみな口調で凌が答える。

そんな凌を見て私はクスクスと笑う。


「冗談だよ。ありがとう」


「うんっ。付けてみてよ」


「えっ!?今?」


「うん」


凌はワクワクした目で見てくる。

気持ちは嬉しいけど、こんなの付けた事無いし絶対似合わないって。

私は少し渋ったけど、仕方無く付けてみる。

うぅ、なんか恥ずかしい。

凌は笑ってこっちを見ている。

「すっごく似合ってるよ玲!」


「あ…りがと」


少し照れくさいけどお礼を言う。

頭の上に乗っかるリボンを少し手で触れ微笑む。

たまにはこんなのも良いかな?







喫茶店を出て家に帰る事にした。

名残惜しいけど、時間的にも帰らないと。


「今日は楽しかったよ」


凌が歩きながら話す。

そんな凌に私はつい憎まれ口をたたいてしまう。


「あちこち連れ回されて疲れたんじゃなかったっけ?」


「まぁそうだけど…って痛いよ!」


「そこは否定しなさいっ!」


話しかけの頬をつまむ。

我ながら理不尽な気がする。

でもこんなやり取りが楽しくて、心が安らいで、凌と一緒にいるのが嬉しくて、落ち着いてたまらない。

こんな時間がずっと続けば良いのにと思う。



そんな調子で歩いていると、前から1人の男性が歩いてくる。

見るからに不良というか、明らかに不真面目そうな格好をして、こっちを睨んでいる。

こんな時期に1人で歩いているのだから、私たちに苛立ちを覚えているのだろう。

あからさまに不快な態度をとっている。

こういうのは相手にしないのが得策。

特に目を合わさずに横を通り過ぎる。

しかし男は思い切り肩を凌にぶつけてきた。

その勢いで凌は地面に倒れる。


「痛っ!」


「凌!アンタ何すんのよっ!」


私が男に怒鳴ると、舌打ちをする。


「うるせぇな!文句あんのか!」


男は逆ギレする。

本当にめんどくさい。


「凌、大丈夫?」


「うん、大丈夫。倒れただけだから」


凌に声をかけて手を貸して起こす。


「行こっ。あんなの放っといて」


「うん」


「おい、待てよ!」


その場を離れようとすると男が呼び止める。


「人にぶつかっといて謝りもできねぇのか?そこの坊主は」


「はぁ?アンタがぶつかっといて何言ってんだよ!」


私は頭にきて言い返す。


「……僕の注意不足でした。すみませんでした」


「凌!?」


そんな私とは逆に素直に謝る凌。

そんな凌の態度に男はつけあがる。


「分かりゃあ良いんだよ!腰抜けがっ!そっちの女は謝んねーのかよ」


「何で謝んなきゃならないんだよ!」


私は刃向かう。

こんな奴に謝るなんて絶対に嫌だ。


「分かんなきゃ体に教えてやるよ」


「あっ!?」


突然、両手首を掴まれて動きを封じられる。


「良くみりゃ結構可愛いしnへぶっ!?」


突然変な声を出す男。

顔には凌の鞄がめり込んでいた。


「玲に手を出すな!!」


怒った凌がいた。

今まで大人しくしていた凌が初めて見せた感情だった。


「いってぇなこのガキ!!」


男が凌を殴る。

そのまま凌を掴んで暴力を振るい続ける。


「やめて!凌を離して!」


私は男の腕を引っ張って凌を解放しようとする。


「うるせぇ!」


「きゃっ!!」


しかし蹴り飛ばされてあっけなくうずくまってしまう。


「先に相手して欲しいのか?」


そんな私に男は凌を落として、いやらしく笑いながら近づく。


「ひっ」


そんな男に恐怖を覚えて体が凍りつく。

逃げなきゃ。

人呼ばなきゃ。

そんな事が頭にあっても、体は動かないし周りには誰もいなかった。

大通りから少し離れたこの道は人通りも少なく、その事が男に味方していた。

男が手を伸ばして顔の前まで近づいてくる。


「いやっ!!」


頭を抱え込んで叫ぶ。

しかし何も起きない。

恐る恐る顔を上げてみると、男は後ろを向いて自分の足を見ていた。

正確にはその足を掴んでいる凌を。


「玲に…触る…な」


「凌!」

苦しそうに声を出す凌を見て、私は泣きそうになって呼ぶ。


「うぜぇ!」


男はもう片方の足で凌を何度も踏みつける。

でも凌は手を放さずにいた。

私はまだ動けずに泣いていた。


「あーもうめんどくせぇ!俺が悪かったよ!悪かったから手を放せって」


男が音をあげて言い、少し緩んだ凌の手を思い切り引き離して足早に去っていった。


しばらくしてハッとした私は凌に駆け寄る。

凌は仰向けに転がっていた。


「凌っ!」


「…玲……ごめんね……痛かったよね…恐かったよね」


何で凌が謝るんだよ。

あんなに必死に私の事を守ってくれた凌が。

私が謝らないといけないくらいなのに。

凌の方が痛い目にあったのに。


「弱いくせに何やってんだよ」


そんな私の気持ちとは裏腹に強がった言葉が出てしまう。

でも、か細い震えた声しか出なかった。


「……ごめん」


そんな私の声を聞いて、少し笑いながらまた謝る。

だから謝るなって!


「怪我、無い?」


そんな意味のない言葉しか出ない。

悲しくて怖くて、涙が止まらない。

頭がちゃんと回らない。

凌の胸に顔をうずめて泣く。

凌も泣きじゃくっていた。


「……僕強くなるから」


私は何も答えない。答えられない。

凌は続ける。


「強くなってもう傷つけさせないから……だから…………」


凌は言葉を途切る。

私は顔を上げると凌も私を見ていた。

今までにない真面目な顔をして言う。


「だから……別れよう」


目から幾粒の涙がこぼれ落ちる。

拭っても拭っても溢れ出てくる。

そんな私を見ながら凌はさらに続ける。


「僕が自信を持って強くなったら……そのときはまた……ちゃんと付き合って守るから」


「……うん…うん」


私は何度も頷く。

その間にも涙は流れ続ける。

弱いと思っていた凌が自分で強くなりたいと言った。

悲しいけど嬉しくもあった。

そんな凌が愛おしくて抱き締める。


ピトッと鼻先に冷たいものが乗ったと思うと、白いものが周りに降っていた。

今年度初の雪。

そんな柔らかな雪は私たち2人を優しく包んでいた。

この日の雪だけは忘れられなかった。

そしてその日を機に凌は変わった。


またしても更新遅れましてごめんなさい。

今回は横路にそれることにしました。

いつもよりちょっと長い上に纏まっているかどうか……。


本編の続きも書けないし。

これはラピュタに逃避行するしか……。







ドーラ「40秒で書き上げなっ(・ω・´)」


無理っ!!


ムスカ「3分間待ってやる(´-ω-`)」


無理っ!!短いよっ!!


ルイ「コイツ金貨なんか持ってるぅ!(´∀`)」


500円玉×3ですね。

私も所持しています。


パズー「父さんは嘘つきじゃなかったんだ!(´>ω<`)」


……羨ましいです。


ムスカ「見ろっ!人がゴミのようだっ!(´∀`)」


同感です。


パズー「ちっとも寂しくなかったみたいだね。友達もいるみたいだし(・ω・´)」


……羨ましいです。


ムスカ「読める!読めるぞ!(´∀`)」


読めても書けないんだいっ!(ノ△T)


ムスカ「次は耳だっ!(`・ω・´)」


ねこ耳以外は認めないっ!


ムスカ「ラピュタは滅びぬ!何度でも蘇るさ!(´∀`)」


ザオ○ク!(・ω・´)


パズー「僕の左手に手をのせて(・ω・`)」


左手は添えるだけ!





そんなわけでラピュタより台詞を抜粋。

ラピュタはいいですね。

不朽の名作です。

もう何十回観たでしょうかね。


でも今回初めて思ったこと。

シータの声可愛いですね。

とても良いと思います。

そしてたまに変な風に聞こえるのは私だけですか?


とりあえず今日もここまで。

一部見苦しい文字、顔文字が連なりましたが、軽くスルーしていただけると幸いです。

ではでは(・ω・´)ノシ



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