第13話 引っ越し
眠い。
朝、目が覚めたけど、まだ眠い。
目を閉じて再び寝る。
「ミー君」
すると燈加さんに呼ばれる。
毎朝の日課になってしまっている。
僕は目を擦って起きる。
「布団の中に入らないでください」
燈加さんは僕の布団の中に潜り込んで添い寝している。
「けち」
「けち、じゃありません」
そうして、ぶつぶつ文句を言いながら布団から出て行く。
毎朝こんな調子だ。
慣れとは恐ろしいものなんだな。
もうなんかどうでもよくなった。
洗面所での一件があってからも燈加さんは特に変わらず、あれからしばらく経って月曜日。
僕と燈加さんは学校の用意をして、一緒に登校する。
「おはようございます」
校門で茅依ちゃんがトコトコと近付いてくる。
ここのところ良く会う。
今日も小動物らしくて可愛らしい。
「おはようございます」
「おはよう、茅依さん」
僕と燈加さんも挨拶する。
茅依ちゃんは何か疲れた顔をしている。
「茅依ちゃん、どうかしましたか?疲れているように見えますが」
玄関で僕は茅依ちゃんに尋ねる。
すると茅依ちゃんは慌てた様子で答える。
「ご、ごめんなさい。昨日までちょっとバタバタしてて……あの、引っ越しするの」
「引っ越し?まさか転校!?」
隣から燈加さんが話に入る。
まさかいきなり転校はないだろうに。
「ち、違うの!!ただ両親が仕事で……1人暮らしするの」
転校という言葉を聞いて、さらに慌てる茅依ちゃん。
やっぱりね。そんな事だろうと思った。
って、なんか聞いたような話だな。
「そうなんですか。何か手伝う事はありますか?」
「大丈夫です!!業者さんが荷物を運んでくれるそうなんで」
「でも何かあったらすぐに頼ってね。遠慮なんてする必要ないんだから。というより私たちのい……」
「急がないと遅刻しますよ!!行きましょう」
僕は燈加さんの言葉を遮る。
一緒に住んでいる事は柑奈しか知らない。
その柑奈もちょくちょく遊びに来て困っているのだが。
僕としては断りたいのだが、燈加さんに押し切られてしまう。
どうしてこんなに嫌なのだろう。
別に柑奈が嫌なわけじゃない。
誰かを家に上げるということに関して、何か心がざわつくような嫌な感じがするのだ。
自分で自分が分からない。
僕たちは教室に向かった。
「朝の続きだけど、いつ引っ越すの?」
昼、燈加さんが食事中に茅依ちゃんに聞く。
「何々!?茅依ちゃん引っ越すん?」
心が興味津々と言った様子で食いつく。
他のみんなも驚いた顔をしている。
「う、うん。朝も燈加さんとミー君に言ったんだけど、両親の仕事の都合で1人暮らしすることになったの」
「へぇ。茅依に1人暮らしなんか出来んのかよ」
「あんたが言うか?ポチ」
「誰がポチだ!!」
凌と玲が騒ぎ出す。
本当に飽きないな、この2人は。
「バカ2人は放っておくとして、いつ引っ越すんだ?」
来人が茅依ちゃんに聞き直す。
「明日の学校が終わった後引っ越す予定なの。ちょっと慌ただしいけど業者さんにお願いするだけだから。荷物ももうまとめてあるし」
それでも平日の学校のある日だと大変だとおもう。
「まぁ、さっきも燈加さんが言ってましたけど、何かあったらすぐに頼ってくださいね」
「俺らにも頼ってくれよー」
心も茅依ちゃんに言う。
来人は黙って頷いている。
凌と玲も気が付くと話を聞いていた。
「ありがとう」
茅依ちゃんは一言そういって、涙ぐんでいた。これから大変だろうな。ちょくちょく気に掛けてあげよう。
昼休みが終わって僕たちは教室に向かった。凌の壊したところはもう直っていた。
そして翌日。
学校が終わって、僕はソファーに寝転がっていた。
何だか体調が悪い。
風邪でも引いただろうか。
熱は無いからただの疲労だろう。
この所落ち着いて来たけど、燈加さんが来てから大変だったからな。
僕は燈加さんを見る。
部屋の埃を拭いて掃除している。
「なーに?」
「いや、何でもないです」
僕の視線に気付いて聞く。
僕が答えた後にインターホンの音が鳴った。
僕が玄関に向かう。
ドア越しに声が聞こえる。
「今日上の階に引っ越して来たものですけど」
挨拶ですか。ご苦労様なことですね。
僕は玄関の扉を開ける。
「え?」
そこには茅依ちゃんがいた。
今書き終わったため、後書きの時間がありませんでした。




