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第80話 オ・ハ・ナ・シ・しましょうか?3

何とか生きてます。

活動報告にちょこっとこの小説についての出来事を書いてあります。

よろしかったらご一読ください。

 さて、3馬鹿女神(さんばか)も退散した後、俺はキュルケの話を聞くことになった。


 結果から言うと、俺の取った行動は特に問題無かったそうだが、キュルケ達が俺と言うイレギュラーに対処できず。

 この地方の環境に致命的な危険を招く可能性が出て来た為、俺に『神のダンジョン内の魔物の死体を持ち帰る』事を控えて欲しいと言うお願いであった。


 正直、嫌な予感しかしなかった俺としてはそんな事になっている事に驚いたが、俺の落ち度は無かったようだ。

 今回は神様側の不手際であり、あくまでもお願いと言う事らしいが、俺が原因で世界規模の環境破壊が起こると言われれば自重するしかない。

 俺としては稼ぐ手段を1つ断たれるわけで、それならそれに見合う何かが欲しいと思ってしまう。

 ほら、ソシャゲとかでもバグとかあったら謝罪アイテム出るでしょ?


 そうは思うが、今回の件は世界の環境破壊を俺がしてしまうと言うお話だったので怒られないだけまだマシなのかもな。


 それに俺としても自分が生きて行かなきゃいけない世界の環境破壊を勧んでするつもりはない。

 するつもりはないが、俺にも生活と言うものがある以上、自分が困窮した場合はその限りではない。


 概ね了承した事を伝えつつも、自身が生活に困窮した場合等はその限りではないと言う事をオブラートに包んで伝えると、キュルケは納得してくれた。


「そう言う場合は仕方ありませんね。ただ、少々加減して頂けると助かります」


「それはもちろんですよ」


 そうして対話が終わりかけた頃、別の声が割り込んで来る。


「キュルケ。今の話なんだが、神である我々がお願いするだけと言うのは何とも締まらない話だとは思わないか?」


 そう言われキュルケも少し考る。

 確かに神々である自分たちが人の子にお願いするのに何もしないと言うのも変な話だ。

 我々が何かした場合は信仰心や、お供え物と言う形で見返りがあるのに、楽太郎にお願いした内容について自分たちは何も見返りを与えていなかった。


 そこに気が付き指摘してくれたウェイガンに感謝の念を抱くと共に楽太郎に尋ねる。


「それもそうね。それなら・・・楽太郎さん。何か欲しい物とかありませんか? 山にあるものであれば私が何とかできますし、ウェイガンは鍛冶の神と言うだけあって様々なものを作れます。大概のものはお渡しできると思いますが、如何でしょう?」


 そう言われて何だか心を見透かされた様な気がして少し恥ずかしくなったが、ここはお言葉に甘えよう。

 何を貰おうか・・・


 そう考え、最初に思いついたのはドリンクサーバーだった。


 これから炭酸ジュースを試作する上でレシピを纏めるのはもちろんだが、それ以上に飲みたくなった時に素材を用意していなければすぐに飲めない。

 なら、ここは魔導具とかの不思議魔道具で魔力を込めたらレシピ通りのジュースが出てくるドリンクサーバー。


 なんか、()()な気がする。複数レシピを覚え込ませることが出来れば・・・そうだな、500種類ほど記録出来たら良いな。

 もちろんレシピの削除も出来て空いた分をまた新しいレシピを記録できるようにして・・・

 そんな事を思いつき、俺はウェイガンにドリンクサーバーが欲しい旨を伝えると、案の定どういったものかを問われたのでドリンクサーバーの仕様を大まかに説明する。


「ふむ・・・結論から言うと、多分作れるが、ジュースを生み出すのにそれなりの魔力を消費する事になると思うんだが、その点は大丈夫かな? なんなら魔石でも代用できるように作るが?」


「おぉ!確かに。疲れている時なんかに魔力を放出するのは億劫だし、その案は採用! ・・・っと、これだと他にも欲しい機能が出来るかも知れないな・・・」


 ウェイガンの答えに気分が高揚し、言葉使いが少々慇懃無礼になってしまったがまぁ良いだろう。


 それ以外にもドリンクサーバーの仕様についてウェイガンと意見を交換する内に熱い議論へと移行して行き、楽太郎も何時から取り出していたのかメモに走り書きをしてドリンクサーバーの仕様を殴り書きしていた。


「えーと、まぁ、大体こんな所ですかね?」


「ふむ、中々細かい所まで拘るのだな」


 そう言われて楽太郎は昔の出来事を思い出す。

 地球にいた頃、仕事で客先から「PC上で〇〇を自動で実行するツールを作って欲しい。あとそれを複数同時に実行できるようにして貰える?」と言われ「できますよ」と答えて作ったのだが、後日その客先から「複数同時に実行できない」と言われて状況の説明を受けると同時実行する数が3000件であったことが判明したのだ。楽太郎の想定では多くても20件程度と思っていた為、客先との『複数』と言う言葉の認識が大分違っていた。

 『複数』と言う言葉のニュアンスの差が生んだ齟齬であった。


 因みにその話の落ちとしては当時のPCでは3000件ものツール実行を同時に(こな)すのはスペック的に不可能に近く同時ではなく連続実行する形で話を纏めたのだが、結局3000件も実行するとPCがその処理を終えるまでに2日ほど時間が掛かっていたので1年程でそのツールはお蔵入りとなったらしい。


 そんな事を思い出しながら楽太郎は答えた。


「まぁ、要求仕様は曖昧な表現を除いて出来るだけ細かく作っておかないと想定したものと全く違うものが出来る可能性がありますからね」


「ふむ、確かに一理あるな」


「さて、それでは私の方で一旦、要求仕様を纏めますので後日私から連絡すればよろしいですかね?」


 いつの間にかお仕事口調になってしまっているが、楽太郎は気にせず返答を待つ。


「そうだな。それでは完成した要求仕様とやらを楽しみにしておこう」


 ウェイガンも自分の権能に関わる分野(趣味)の話に機嫌よく答える。


「それではそろそろ失礼しますね」


「う、うむ」


 ウェイガンも満足げに返事をするが、何か引っ掛かるものを感じた。


「それではキュルケさんも長々とお話してしまったようですみませんでした」


「それには及びません。こちらの身勝手なお願いを聞き届けて頂いたのですから、そのような事はお気になさらないで下さい」


 そこでようやくウェイガンが悪魔のダンジョン攻略について話していないことを思い出した。

 自分の趣味分野の話で熱くなって話を忘れていた。


「それでは失礼し「ちょっと待った!」」


 楽太郎の別れの挨拶に割り込むように慌ててウェイガンが待ったをかける。


「ウェイガンさん。どうしたんです?」


「あー、っと、その・・・だな。」


「はい?」


「実は、近々下界に下知するつもりではあるんだが、悪魔のダンジョンの攻略が全く進んでいないんだ」


「・・・そのようですね」


 予期しない方向へと突然話が移った為、楽太郎も表情を変えて身構える。


 これは不味いかもしれない。そう思いウェイガンはお願いをするのではなくドリンクサーバーのように物で釣れないかと話を変える事にする。


「我々神々も困っていてね。なので悪魔のダンジョンを制覇し、ダンジョンコアを破壊した者に褒美を授けようと考えているんだよ」


「そうですか。それでどんな褒美を用意するつもりなんです?」


「一応私は鍛冶の神なのでね。褒美はそのものが望む・・・武器を授けようと考えているんだ」


「なるほど。冒険者であれば強力な武器を欲しがるでしょうから、よろしいのではないですか?」


 楽太郎の表情を見るにあまり関心が無いように見え、ウェイガンは人知れず(ほぞ)を噛む。


 楽太郎からはウェイガンが何を意図してそんな事を突然話し出したのかわからず、訝しむ。


「そういえば楽太郎さんも武器作成の依頼をしていましたよね?」


 そこで思い出したようにキュルケも話に加わる。


「え?えぇ、そうですけど・・・」


「それならドリンクサーバーとやらではなく、ウェイガンに武器を作ってもらった方が良かったのではないですか?」


「いやいやいや! 作成依頼した武器は予備(サブ)と言うか、ダミーと言うか、目立たない様にする為の物なのでウェイガンさんに作ってもらったら逆効果にしかならないんですよ。なので遠慮させてください」


 楽太郎としては今一番欲しいものがドリンクサーバーであって、武器など2の次3の次。と言うか既に神様謹製武器は貰っているので不要である。

 むしろドリンクサーバーが遠ざかるようなお話は遠慮願いたいのでやんわりと即座に却下した。


「・・・そう言うものなんですか?」


「はい、そう言うものなんです」


 その返答を聞いてウェイガンは絶望した。

 鍛冶の神としてそれなりの自負もあったウェイガンにとって必要ないと断言されるのは心に堪える。

 その衝撃は本人も気付かぬ内に膝をついてしまう程であった。


「ど、どうしたんですウェイガン?! 先程の戦闘でどこか怪我でも?」


 その様子にキュルケが慌てて声を掛けるが、ウェイガンは虚ろな表情で答えるのみだ。


「ははは、いや、大丈夫。大丈夫だ。それよりも楽太郎君」


「な、なんです?」


 いやに気落ちしたウェイガンの声音に戸惑いつつ返事をする。


「君も良かったら悪魔のダンジョンを制覇してみないかい? 君が制覇してダンジョンコアを破壊したら望みの武器・防具・魔導具、何でも良いから1つだけ提供するよ」


「有り難いお申し出ですが、私は自分の命が惜しいので悪魔のダンジョン攻略には手を出す気はないです」


「そ、そうか・・・まぁ、気が向いたらよろしく頼むよ」


「は、はぁ」



 と言った感じで歯切れ悪く話し合いが終わった。


 そして一息つくと、楽太郎は部屋の中を見回し、ベットの上で寝息を立てて眠っているリディアーヌを見て顔を顰める。


「参ったな、すっかり忘れて話し込んじまった」


 時間は既に深夜を回っていた。


 暫し瞑目するが仕方ない。楽太郎は1階に下りると宿の親父に頼んで別の部屋を用意して貰い、そこで要求仕様を纏めるのであった。





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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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