第31話 楽太郎。支部長室で作戦会議?
短いですが、書きました。
ジェラルド氏との密談でキング討伐を約束してしまった・・・
ま、まぁ、流された感はあるが、良いだろう。レベルアップにはもって来いだと前向きに捉えよう。
あの後、密談を終えると、アロマ氏とクレオ氏を呼び戻し、ゴブリン・オークのキング討伐について、今後の方針を話し合った。
『風巻の団』が実際ゴブリンと戦った結果、同数なら何とか中級冒険者でも対抗出来そうだと言う事だった。
ただ、以前俺が出した根城探索作戦だが、やはり囮役は俺かジェラルド氏位しか出来そうにないそうだ。
もちろん俺はそんな危険な事は引き受ける気はない。 ジェラルド氏に丸投げする気満々だ。
あと、探索役は『風巻の団』が行うことになったそうだ。
他にも2、3中級冒険者パーティに探索役を依頼するとのことだ。 数が揃うのに3日程掛かるそうだ。
俺の役割も探索役で、囮役はジェラルド氏が観念して納まった。 なんせ俺は戦闘に疎い錬金術師だからな。
そう言えば、この国の軍隊は何してるんだ? 王都の危機だってのに。
その事をジェラルド氏に聞いてみると、
「あれは使い物にならんよ」
との答え。意味が分からないので詳しく聞くと、
「1国の軍隊が3分の1以下に減って、しかもその殆んどを各地の魔物狩りに動員しているんだよ。現状立て直しを図るどころか、ほとんど身動き出来ていない。 その証拠に今回のゴブリン・オークのキング討伐を打診したら、『今は動けない。そちらで何とか対応してくれ』だそうだ。全く税金泥棒にも程があるとは思わんかね?」
途中から愚痴も混じって来たな。しかし、なるほど、軍隊には期待できない訳か。 それなら・・・ うん? そういや、警備隊とか王城に居る騎士とかはどうなんだろう?
そう疑問をジェラルド氏にぶつけると、
「警備隊については、今回の件を警備隊の本部に知らせたんだが、情報が内部に浸透していなかったようだ。その件が発端で内輪揉めが激しくなったようで、本部と支部で論争が始まって収拾がつかないらしい。 王城の騎士。つまり近衛隊だが、『王の警護を疎かにする訳にはいかない』と言って断られたよ。ある意味正論ではあるがね。 あぁ、序でに神殿だが、こちらも打診したんだが、『忙しくて手が回らない。すまないがそちらで対応して頂きたい。あなたにサスティナ神のご加護がありますように』だとさ、軍の対応と変わらんよ。 この国の組織は何を考えてるんだろうね。まるで滅びたい様じゃないかね?」
お疲れ様です。ギルドマスター・・・孤立無援なんですね。国が亡びるかも知れない危機なのに・・・
なんか、この国もう終わってるだろ。 立て直そうにも根幹が腐ってちゃ、時間の問題だ。
想像以上にヤバいなこの国・・・ 逃げる用意しとかないと・・・
そんな事を考えていると、ジェラルド氏が咳払いをし、話題を変える。
「ま、まぁ、その代わりと言ってはなんだが、それぞれの組織からたっぷりと軍資金をもぎ取ってやったよ。この作戦や討伐に従事する者たちの報酬は破格の値段になるので、期待してくれ給え」
ジェラルド氏はそう言って笑顔を取り繕う。 ・・・組織の長って大変なんだな。
その後も話を続け、作戦時の役割をアバウトだが、取り敢えず決めた。
ジェラルド氏の行動予定
1.囮として森の中で暴れる。
2.ゴブリンないしオークが集まってきたら、敵が追って来れる程度の速度でカーチス防風林へと逆走。
3.街道に出たら王都と反対側へ移動し、追って来れない速度で逃げる。
4.引き離せない場合は、ある程度蹴散らす。 (全滅させてはいけない)
楽太郎以外の探索役パーティの行動予定
1.カーチス防風林内でジェラルド氏の様子を伺いながら待機する。
2.ジェラルド氏に敵が群がってきたら、様子を見つつ森の中へ移動する。
3.接敵しない様に注意しながら、敵が出てきた方へと探索する。
4.接敵しそうな場合は任務を放棄し、撤退を開始する。
5.敵の根城を見付けた場合は、場所を記録し、撤退する。
楽太郎の行動予定
1.ジェラルド氏の様子を伺いつつ待機する。
2.ジェラルド氏が移動し始めたら敵に見付からない様に後を追う。
3.ジェラルド氏を追い損ねた敵を追跡し、根城に戻るまで後を追い、根城を見付ける。
4.追跡中、見付かりそうになった場合は、何とかやり過ごす。
5.それでも敵に見付かった場合は殲滅する。
6.殲滅後、地道に根城探索を行う。
7.根城を見付けたら場所を記録し、撤退する。
以上の様に役割分担をした。・・・って、あれ? 俺だけ難易度高くない? これなら囮の方が楽じゃ・・・
そうは思ったが、経験値も稼げそうだから別に良いか。
その後は報酬についてジェラルド氏と色々交渉し、話し合いが終わったのは空が茜色に染まる頃だった。
話し合いも終わったので、俺はサッサと支部長室を出て歩き出した。
因みに、作戦までの2日間は俺の自由にして良いとの事だった。
そろそろ他の街か国の情報も集めんとな。王都を出るとしても、どこ行けばいいか分からんしね。
あ! マークさんとこ行かないとな。ルッツさんと約束してたんだ。
俺は約束を思い出し、マークさんの肉屋に足を向けた。




