8.ツンツン娘は困っちゃうな
「にしても、スレイって実は強かったんだね! 私感動しちゃった!」
「強くねえって。本当、あれは俺でもどうしてあんな動きできたのか一切分かってないから」
それに、万が一あんなのが常だったら借金取りに関しても自分でどうにかしていた。
別に逃げなくても真正面からやりあえばいいのだから。
いや……といったものの俺の性格的には向いてないな。
今回こそ、三人が危ないからって理由で動いたわけだし。
家の前の庭にて。
俺は目の前にあるミーアが気合いで起こした火に、イノシシの肉を近づけながらそんなことを思った。
「そういえばイノシシなんて食ったことなかったな」
狩りを生業にしている人間はよく食べていると聞いていたが、俺なんて全く関係ない仕事をしていたし。
とはいえ、魔物化したイノシシを狩る一般人がいるかと言われたら分からない。
ともなれば、このイノシシを食べるという行為自体はわりと珍しいことなのかも。
なんか魔物ばっか食べてるな。
まあ、この環境だから仕方ないけど。
「あたしもイノシシは初めてね。最初は嫌だったけど、レイレイが実質豚みたいなものだからって理由で狩ってきたのよ」
「品種としてはイノシシも豚も近いものですからね。イヴさんには我慢してもらわないと」
「はぁ~……スレイが作るカレーが食べたい」
「あれ? 俺の作るカレーってイヴにとっては微妙なんじゃなかったっけ」
ぼそりと呟いた言葉に、俺は少しからかうように指摘する。
すると、イヴの目が赤く輝いて視線をこちらから逸した。
「イノシシより、断然カレーがマシってこと! 勘違いしないでほしいわ!」
俺は知っている。
お前が俺のカレーをものすごく食べたいってことを。
全く、隠すのが苦手なんだからオープンにしちゃえばいいのに。
ツンツン娘は困っちゃうな。
ちょうどイノシシの肉が焼き上がったので、口の中に放り込んで見る。
おお……やっぱ実質豚ってこともあって全然食えるな。
雰囲気こそ違うが、どことなく豚を感じる。
「美味しい! やっぱスレイのカレーには断然負けるけど!」
「まあ、ぼちぼちってところ」
「美味しいです!」
とりあえず皆も満足しているようだし、狩りをしてきてくれたイヴとレイレイには感謝しないとな。
危ないことは避けてほしいけど。彼女たちがいなかったら今頃ご飯にはありつけてなかっただろうし。
あ、そうだ。
彼女たちに話をしないといけないことがあるんだった。
「さっき襲撃してきた男たちを、俺がまぐれで倒したじゃん。その時にさ、ついでに近くの村のボスと話がしたいってお願いしてて」
「村の人達と関わりを持とうとしているの? 怖がりなスレイにしては珍しいわね」
イブが不思議そうに首を傾げる。
まあ俺も、その場の勢いでお願いしちゃった感じだからね。
「一応、近くの村とは関わりを持っておいた方がいいかなって思ってさ。多分、近々行くことになると思うから、その時は……申し訳ないけど護衛として付いてきてもらってもいいかな?」
もちろん、彼女たちが襲われる可能性があることを考えると悪手かもしれない。
しかしながら、俺を置いて家で留守してもらうってのもかなりの危険性がある。
なんたってここは環境が最悪だ。
人数がいるからと言って、女の子三人で待たせるのは心配である。
ならば一緒に付いてきてもらった方がマシだ。
「もちろんいいよ! 護衛とか面白そうだし、人間たちとも話してみたいな!」
ミーアは案の定目を輝かせた。
ただ……何も考えていなさそうなのが心配だけど。
「あたしも構わないわ。何かあったらぶっ飛ばすだけだし」
「わ、わたしも! スレイさんの役に立てるなら頑張ります!」
二人も納得してくれたらしい。
これで満場一致ってことでいいかな。
「許可が下りたら空砲で教えてくれるらしいから、それまでは待機だな」
言いながら、俺はぐっと背筋を伸ばす。
そして、家の方をちらりと見て唸る。
「家具とかもヤバいし、寝る場所も正直ヤバい。許可が下りるまでの間、なんか快適に暮らせるように色々と頑張ってみようか」
このままだと家とは到底呼べない環境で暮らすことになる。
それだけは彼女たちのことを考えると避けたい。
「わ、わたし手伝いたいです! 工作とか、ちょっと興味あります!」
「レイレイ気合い入ってんな。手伝ってくれるなら歓迎するよ」
「それじゃあミーアとあたしは素材集めしてくるわ」
「いいね! 私も周囲見てみたいかも!」
「よし、んじゃ決定だな」
俺はそう言って、イノシシの肉をかじった。
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