6.ミーアとオッドアイ
「……頭痛え」
「ごめんね! 私、寝相悪いの忘れてた!」
早朝。俺はミーアの渾身の蹴りによって目を覚ました。
頭にダイレクトアタックした蹴りは見事、俺の脳を揺らした。
もちろんわざとじゃないって分かっている。
でもさ、寝相が悪すぎじゃね。
どう寝たら蹴りをお見舞いできるのさ。
「にしても……あれ? イヴとレイレイは?」
周囲を見てみるが、二人の姿が見当たらない。
首を傾げていると、ミーアが腰に手を当てて。
「二人は近場を探索してくるって! 私たちは家の掃除!」
「本当に勝手に行ったんだな……心配なんだけど」
「大丈夫だって! 二人は強いんだから!」
しかし、今はミーアの言っていることに頷くしかない。
彼女たちはもう行ってしまったんだし、止めに入るにはもう手遅れだ。
どうにか帰ってくることを祈って、任されたことをするべきである。
それに……最後まで爆睡してたのは俺たちだし。
「家の掃除か。にしても……よくこの中で寝れたよな」
家具はあちこちに転がっているし、ほとんどが壊れている。
ゴミは大量にあるし、これは苦労しそうだな。
俺はふうと息を吐いた後、気合いを入れるために袖をまくった。
よし、やるか。
「なんか掃除道具ないかな……お。あるじゃん」
ほうきとハタキを見つけた俺は、とりあえずミーアにハタキを渡した。
多分、ほうきで床をはくよりハタキの方がまだ幾分楽だろうと判断したからだ。
「わー! ありがとう! 頑張るね!」
「おう。頑張ろうな」
ミーアが目を輝かせて、何度も嬉しそうに頷く。
やっぱり彼女の笑顔は可愛いな。
見ていてすごく癒やされる。
それに、綺麗な目をしている。
「どうしたの? 何か顔についてるかな?」
「いや、違うよ。今日もミーアの瞳は綺麗だなって」
「えへへ! そう言ってくれるのは昔からスレイだけだよ!」
嬉しそうに、また頬を赤く染めた。
彼女の瞳は赤と青のオッドアイである。
まるで宝石のようで、俺は彼女を引き取ってからずっと好きだった。
「全く、他の奴らは分かってないよね。こんなにも綺麗なのに」
ほうきで床をはきながら、ぼそりと呟く。
心の底から出た、本音である。
ミーアは鼻歌を歌いながら、椅子の上に立って窓辺のホコリをはらっていた。
「スレイのところに来てから、本当に幸せ! 生まれた集落からも瞳の色が違うのは呪いだって忌避されて、奴隷商人からも擦りつけ合いされて。もう、本当にどうなるかと思ってたんだ!」
「そうだったな。そんで最終的に俺が引き取った。ま、俺はそいつらはミーアの魅力なんて一切分かってないと断言できるけどな!」
そう言って、俺はミーアの方に足を運ぶ。
ミーアの瞳を見て、微笑を浮かべた。
「こんなにも綺麗な目を持っている子なんて、そうそういないよ」
「……! もう、スレイったらダメだよ!」
「ああ……ごめん。ちょっと気持ち悪かったか?」
少しばかり本音が漏れすぎてしまった。
どこか昔話をすると、ミーアが悲しい思いをするかと思って語りすぎてしまう。
「違う! もっと好きになっちゃうってこと!」
「あはは。嬉しいよ。まあ、俺みたいな男なんてやめとけよ。ミーアになら、もっといい人がいると思うからさ」
「もう!」
「おう!?」
突然、ミーアが頬を真っ赤にしてハタキを俺の顔面にもふもふしてきた。
思わず変な声が漏れてしまい、ホコリでゲホゲホと咳き込んでしまう。
「私はスレイが一番なの! 一番〜!」
「わ、分かった! 分かったからもふもふはやめて!」
叫ぶと、ミーアが「むー!」と言いながらやっと止めてくれた。
彼女の耳がいつも以上にピコピコと動いている。
「ホコリまみれだ」
「いつもスレイがそんなこと言うからだよ! もっと自信持ってよ!」
「持ってるというか、ミーアを思っているからだな……」
「……もう!」
彼女の言っている通り、俺も自信を持たないとかもだな。
ミーアと俺が釣り合うかって言われると、俺は自信持てないけど。
それでも、ここまで言ってくれるのならそれ相応に頑張らないとダメだと思う。
「そういうところも、大好きだけどね!」
「……ありがとう。嬉しい」
素直に嬉しかったので、俺は思わず口角が緩んだ。
「さてさて! 速く掃除しないとイヴたちに怒られちゃう――」
「そうだな……ってどうした。急に固まっちゃって」
ミーアが一点を見つめて、全く動かなくなったので心配になる。
なんだなんだと視線の先を探ると……奴がいた。
黒い悪魔、通称Gである。
「スレイィィィィィィ!!」
泣き叫びながらミーアがこちらに抱きついてくる。
「うがぁ!?」
思い切り肘が顎に当たり、一瞬意識が持っていかれそうになった。
どうにか意識を引っ張り、ミーアを抱きしめる。
「お前……無理なんだな」
「この子は専門外!!」
涙目を浮かべているミーアを見ながら、俺はほうきでGを外に誘導していった。
まあ、こんな場所だからあいつも出てくるか。
「こ、怖かった……」
「ミーアがそこまでなるって相当だな……」
彼女にも苦手なもの、あるんだなぁ。
というか、これで先程までしていた話なんて全て吹っ飛んだ。
でも……嬉しい気持ちは変わらない。
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