29.見ていてください!
「釣りか。確かにスローライフっぽい」
釣りと言えばスローライフの代名詞と言えよう。
のんびりと静かな湖で、ゆっくりと釣りをする。
想像するだけで心が休まる気がする。
「釣りいいね! 私もしてみたい!」
「あたしも気になるわ。釣り、いいわね」
「そう言ってもらえて嬉しいです! それじゃあ、釣りで確定でいいですかね?」
「俺は構わない。というか、みんな賛成しているしな」
思い返してみれば、釣りなんて人生で一度もしたことがない。
幼い頃は両親に捨てられて、そんなことをする暇なんてなかった。
既に奴隷商のグループに放り込まれた俺は、雑用ばかりをしてきた。
それこそ、少し自由を手に入れたのは昇格して奴隷商になった頃合いである。
とはいえ、自由と言っても料理をする時間ができたとかそのくらい。
そう考えてみると、俺って忙しかったんだなと思う。
「でも釣り竿はどうするんだ? 確か一本しかなかったよな」
以前、レイレイを狙った山賊を嵌めるのに使った釣り竿一本しかこの家にはない。
倉庫にまだあるかもしれないが、もう探索し尽くしたといえる場所にあるとは思えない。
「作るんですよ!」
「作る……? 誰が?」
「わたしがです!」
「レイレイが!?」
「作れるの!?」
「釣り竿って素人が作れるものなの!?」
「作れますよ! 任せてください!」
俺たちは半ば驚愕しながら、レイレイのことを見た。
確かに彼女は器用な方だと思うが、釣り竿なんて作れるのだろうか。
疑っていると、レイレイは胸を張る。
「ふふふ。まあ見ていてください! きっと驚きますよ!」




