27.クッキングタイム!
もちろん、俺はカレーを作るとなると一切の妥協はしない。
誰にだって一つや二つ、負けられないものがあるだろう。
俺にとっては、それがカレーだ。
奴隷商人に格上げされるまで、俺は何年も何年も雑用をしてきた。
その中でよく作っていたのがカレーである。
周囲の人間を嫌っていた俺ではあるが、カレーを作ると毎回喜んでくれていたのは嬉しかった。
俺が持つ、人を喜ばせる唯一の特技なのだ。
「よし、材料をっと」
箱から材料を取り出していく。
さすがに生ものは送れないから、肉系統は基本的に缶詰だ。
これに関しては仕方がない。
だが、その状況下でも美味しくする工夫は妥協しない。
野菜は……うん、新鮮だ。
きっと第三村で育てた物なのだろう。
人参にじゃがいもと玉ねぎ。それに……面白い材料もあるな。
スパイスがほとんどない分、味を近づけるにはこの材料は必須だろう。
「スレイー、水汲んできたわよ」
「ありがとう! んじゃ、イヴは米を炊いてくれるか」
「分かったわ」
よしよしよし。主役は揃った。
「クッキングタイムだ!」
「待ってたよ!」
「楽しみです! パチパチ!」
「ま、期待しているわ」
俺がそう叫ぶと、背後から歓声が上がる。
くくく……俺の料理で喜んでくれるなんて最高じゃないか。
こんな家族を持てて、俺は幸せだぜ。
盛り上がってきたところで、素早い手付きで料理に進む。
汲んできてもらった水を鍋に注ぎ込み、魔道具を使ってグツグツと沸かす。
その間に俺は野菜の処理をしていく。
素早く、そして丁寧に。
テキパキと捌いていき、鍋の中に放り込む。
もちろん、これが一般的に言う美味いカレーの作り方とは違うことを自負している。
しかし――これでいいんだ。
美味しいカレーってのは、正しいレシピから生まれるわけではない。
そこに、職人のこだわりがあって生まれるものだ。
火が通ってきたらカレールーを入れ、グツグツと煮込む。
その間に、俺は隠し味の準備をする。
「ふふふ……これは美味いぞ……」
少しビターにするためのコーヒー粉。
そして刺激を生むための刻みニンニク。
そいつらを鍋の中にそっと放り込み、ゆっくりと煮込んでいく。
まだだ。
まだ、まだ待って良い。
じっくりと、優しく。
さながら赤子を触るかのように煮込むんだ。
「――ここだっ!」
俺はすかさず火を止め、スプーンで味を確かめる。
「これは……! 素晴らしい!」
イヴに目線を送ると、こくりと頷いて炊けたご飯をよそう。
俺はお皿を受け取って、カレーを黄金比に則って注ぎ込む。
「完成だ! 俺特製のカレー、おまちどう様!」
「キター!!」
「もうお腹ペコペコです!」
「……いい匂い」
三人は急ぎ足で椅子に座り、目を輝かせながらカレーを見据える。
「食べていいぞ!」
「「「いただきます!」」」
同時に、三人はカレーに勢いよくがっつく。
そして、幸せそうな表情を見せた。
「さ、最高! 超美味しい!」
「これですこれ! やっぱりスレイさんの作るカレーは最高ですね!」
「うん……美味しい!」
「ふはは! そうだろうそうだろう!」
一切妥協しなかった、スレイ特製カレー。
これに関しては不味いわけがない。
「イヴ、笑顔漏れてんぞ」
「……っ!」
言うと、目を真っ赤にしてそっぽを向くイヴ。
ふはは。やっぱり俺の子たちは全員可愛いな。




