17.知らなかった
「飯……美味え! こんなにも美味しいご飯食べたの久しぶりだ!」
「美味しい! これ、超美味しいよ!」
「スレイが作るものには劣るけど……美味しい」
「最高です!」
色々とあったが、ボタンさんに気に入られた俺たちは食事に誘われた。
第三村内にある酒場にて、豪華な肉と魚が並べられたテーブルを囲っている。
こんなにも美味しい料理を食べたのは、本当に数年ぶりくらいだろう。
「ガハハ! 美味いじゃろ! 妾が雇っている料理人は一流じゃからな!」
がっつく俺を、ボタンさんはケラケラと笑いながら見守る。
「でも、情報を売られたって考えると全く釣り合わねえ……」
ボタンさんの興味本位で、完全に俺たちの居場所は把握された。
向こうはいつでも俺たちを仕留めに来られる状況にある。
「仕方ないではないか! すまん! お金も渡したし許してくれ!」
「許すよ! ご飯美味しいし!」
「ミーア……だからお前は軽いんだっての」
嘆息しながらも、美味しい食事を口に運ぶ。
今後の不安も、ギリギリご飯が美味しいおかげで絶望までは行っていない。
まあそれも気持ちだけの話だけれど。
「それで、俺たちはやることやりましたし、ちゃんと協力関係になってくれるんですよね?」
「もちろんじゃ! 妾に何でもいってくれて良いぞ!」
ガハハと笑いながら、ボタンさんは腕を組む。
小さい体躯のせいで、安心感はあまりない。
どちらかと言えば不安ばかりが募っていく。
「んじゃあいいかな……ギリギリ相殺された感じか」
借金取りに場所が把握されたとはいえ、村のボスを仲間にすることができたのは大きい。
こんな感じだから不安でしかないが、多少なりとも守ってくれるだろう。
それに色々と援助してくれるのなら、俺としては助かる。
「にしても、本当に面白いメンツじゃな! 獣人は特殊個体。吸血鬼は純血のようじゃし……エルフの方は希少種か! よくもまあ人間がこんな魔族を引き連れておるものじゃな!」
「……え? 特殊個体……純血……希少種? この子たちってそんなにすごいんですか?」
「お主、知らずに一緒にいたのか?」
「知らなかったです」
「こやつら、なんか強くね? とか思わなかったのか?」
「あ、それは心当たりあります」
「じゃろ? そいつら、化け物たちの集まりじゃ」
「お前ら……マジ?」
食事を取っている三人の方に顔を向けると、苦笑しながらレイレイが頷く。
「逆に今まで気が付かなかったのがすごいですね……」
ええ、マジか!
やっぱりこいつらすごかったんだな!
ちょっと誇らしい……と同時に俺、そんな子たちと一緒に暮らしてたと考えるとヤベえな。
「でじゃ、仲間になった印に妾からも情報を提供する」
ボタンさんがステーキをフォークで突き刺し、一口で飲み込んだ。
パクパクと食べながら、フォークをレイレイの方に向ける。
「エルフの娘よ。お主は今、山賊に狙われておるぞ」
「え……? 山賊ですか?」
「おいおい……まさかまたボタンさんが情報を売ったんですか?」
「違うわ! 全く、妾なわけがないじゃろ!」
いや、今のあなたにはそこまでの説得力ないですから。
というか、レイレイが狙われている?
これまたどうしてだ。
「最近、ここらで希少種のエルフを見かけたって話題にしている山賊がおってな。第三村にも聞き込みに来ておったわ。お主ら、第三村の人間だけじゃなく、外部の人間にも見つかっておるぞ」
「マジっすか……ボタンさんの方でどうにかなりませんか?」
「妾は無理じゃな。山賊は完全に独立したコミュニティを持っておるせいで、妾がいくら言ったって話なんて聞かんわ」
「戦うしかないってことか……」
考えるだけで頭が痛くなる。
スローライフなんて、やっぱり全くできねえじゃないか。
しかし、これを乗り越えたらって考えるとな。
頑張ろうって思えるのが不思議だ。
「悩んでも仕方ないわよ。とりあえず、山賊をぶっ倒せばいいってことでしょ?」
「ぶっ倒そうよ! レイレイを狙うなんて許せない!」
「ひ、ひえ……わたしは怖いです……」
まあ、悩んでも仕方がない。
現実は現実だ。
潔く受け入れよう。
「情報提供、ありがとうございます。なんとなく心の準備はできました」
「構わん構わん! というかお主、いつまで敬語を使っておるのじゃ! 妾、そういうの嫌いじゃぞ!」
「ふぐっ!?」
突然、ボタンさんに腹をどつかれて変な声が出た。
スキンシップの仕方が力強い……。
「わ、分かった。それじゃ、よろしく」
「よろしくな! あ、そうじゃ! 早速じゃが、お主ら。何か欲しいものとかあるか?」
パンと手を叩いて、ボタンが聞いてくる。
欲しい物か。せっかくなら貰っておくか。
何かいい物……。
「ベッドがいい! ふかふかのベッド!」
「ちょ、ミーア! 俺何も言ってねえ!」
「おお! ベッドか! 構わんぞ!」
「あ、ちょっとボタンまで! ありがたいですけど!」
たっく、仕方ないな。
「それじゃあお主らの家にベッドを運ぶことにするか! おーい、部下ども~! ベッドを用意せい!」
そう言って、ボタンは立ち上がる。
「食事会も終わりじゃ! せっかくじゃし、妾に家を案内してくれ!」




