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16.幸せなスローライフを

 村の門まで案内された俺たちは、ひとまず借金取りが来るまで身を隠そうということになった。


 借金取りはボタンさんが誘導してくれるらしい。


 俺たちは近くの路地裏で、門前にいるボタンさんを確認する。


「たっく……これから戦うのか」


 頭をかいて、腰に下げているナイフに手を伸ばす。


 相手は借金取り。言うならば因縁の相手だ。


 少しばかり手が震える。



「あ、ボタンが誰かと話始めたよ!」



 ミーアが俺の肩を叩いて、言ってきた。


 あれは……知っている顔だ。


 俺を追い回していた借金取り――ヤモリだ。


 その後ろには……五人くらいいるな。


 人数にして六人と相手するのか。


 三対六。人数にしては不利だな。



「あああああ! スレイたちがおったぞ!!」



 ボタンさんが俺の方に向かって叫んできた。


 借金取りたちも一斉に俺の方を見る。


 はぁぁぁぁぁ。やるっきゃないか。



「行くぞお前ら。あんましたくないけど、戦闘だ」



「よっし! ボコるぞ!」



「やりますかぁ」



「よ、よし!」



 物陰から飛び出し、俺たちは借金取りの方に駆けていく。


 ナイフを手に取り、ふうと呼吸をした。



「久しぶりじゃねえかスレイ。会いたかったぜ」



「ど、どうも~借金取りのヤモリさん。俺はあまり会いたくなかったです~」



 本音である。


 だってこいつらに首を取られそうになったから逃げたわけだし。



「てめえ、よくもまあ逃げてくれたな? ああ?」



「それは……あなたたちが理不尽な請求をしてくるから――」



「ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞコラ! こっちは妥当な金を請求しているわけだが? ええ?」



 反論しようとすると、俺の胸ぐらを掴んできた。


 力の差がありすぎて、俺の体が少し浮いてしまう。


「やっぱダメだわこいつ。今、殺して内臓でも売っぱらうか」


 そう言って、ヤモリが奥に控えている男たちに合図を送る。


 すると、五人全員が俺に向かって銃を向けてきた。


 うわ~……これは終わったかもしんない。



「さよならだ。スレイ――」



 瞬間、銃声ではなく金属音が響いた。



「なっ!?」



「嘘だろ!?」



「は、はぁ!?」



「お前らどうした!」



 男たちが困惑したような声を上げると、ヤモリが後ろを振り返る。



「銃が……真っ二つに!」



 見ると、男たちが持っていた銃が完全に折れてしまっていた。



「スレイに銃を向けるなんて最低!」



「これで勝てると思っていたのかしら」



「……さすがに銃はビビりますね」



 ミーアの口、イヴの手、レイレイの目の前には銃身が浮いていた。


 マジか。こいつら、あの一瞬で銃を破壊したのか。


 やっぱ、こいつら只者じゃねえ。


 俺が勘違いしてただけで、やっぱりこの三人は超すごいんだ!



「は、はぁ!? たっく……お前の奴隷か。危惧していたことだが、やっぱりレア物だけあって面倒だな」



 そう言いながら、ヤモリは自分のポケットに手を突っ込む。


 そして、またもや銃をこちらに向けてきた。



「は、はは。さっきので分かっただろ。銃はこっちには効かないんだ……!」



 俺には三人がついている。


 ヤモリなんか敵じゃない。



「舐めんな。こっちも対策済みだ」



 言って、ヤモリが俺ではなくミーアの方に銃を向ける。



「魔族にとびっきり効く銃弾。どんな魔族でも一発で致命傷だ」



「は……?」



「作戦変更だ。レア物の魔族をぶっ殺すか捕獲して、そいつらを売っぱらう。よかったなスレイ。お前は生きれるぞ」



 ニヤニヤ笑いながら、トリガーに指を当てる。


 嘘だろ……本気でやるつもりかよ。



「や、やばいかも」



「スレイ、先に謝っとく。もしなんかあったらごめん」



「ははは……魔族に効く銃弾はキツイかもですね」



 そんなこと言うなよ。


 クソ……最悪だ。


 ここで何もかも終わっちまったら、ボタンの野郎に情報を売られてまんまと引っかかった馬鹿じゃねえか。


 これじゃあ、本当に馬鹿野郎だ。


 俺だけが生き残っても意味がない。


 全員が楽しく生きることができてこそ、初めて俺の存在意義が生まれる。


 ここで終わるわけにはいかねえ。



「さよならだ。魔族ども」



 銃声が響いた瞬間、俺は咄嗟にナイフを引き抜いていた。


 ミーアたちの目の前に立ち、構える。


 そして――放たれた銃弾を思い切り斬り裂いた。



「なっ!? お前……嘘だろ?」



「ミーアたちに――手を出すな」



 一気にヤモリの方に距離を詰め、ナイフを胸に当てる。


 ギリギリだ。突き刺さる寸前で止める。



「帰ってくれ。そしたら、俺も何もしない」



「おいおい……俺ら借金取りを更に敵に売る気か?」



「仕方ないでしょ。そうなっちゃったんだから」



 息が上がりそうになりながらも、俺はヤモリに言い続ける。


 すると、ヤモリが額に手を当ててケラケラと笑い出した。



「こんな馬鹿野郎は久々に見た! 覚えとけよ……絶対にお前らは許さねえからな。撤退だ、帰るぞ」



「は、はい!」



「分かりました!」



 言いながら、ヤモリたちが踵を返す。


 は、はは。俺、撃退できたのか?



「すごすぎるよ! めっちゃかっけー!」



 安堵していると、ミーアが抱きついてきた。


 うぐっ息苦しい。



「……やるじゃない」



「た、助かりました!」



 イヴたちも微笑を浮かべながら、俺に駆け寄ってくる。


 ふ、ふう。これでひとまず撃退できたってことでいいんだな。



「助かったぁぁぁぁぁ」



 本当に怖かった。


 マジで死ぬかと思ったわ。



「お主やるではないか! ほんの少し『あれ、あやつら死ぬんじゃね?』と不安になったぞ!」



 嘆息していると、ボタンさんも駆け寄ってきた。


 というか……ほとんどボタンさんの仕業なんだけどな!



「いい物を見せてもらった! 妾たちも全力でお主らをアシストしよう! ガハハ!」



 めちゃくちゃ笑ってはいるが……こいつ。



「ボタンさんのせいで俺の居場所、完全に割れちまったじゃねえかよぉぉぉぉ!!」



 俺の安泰で安全なスローライフが……完全に壊れた。


 夢も希望もねえよ。



「うりうり」



「やめろミーア」



「……楽しそうね」



「た、楽しそうです」



「どこがだよ!」



 たっく……でも、もう少し頑張ってみようかな。


 夢も希望もないって言ったけど、頑張ったら少しは見えてくるかもしれない。


 四人で、幸せなスローライフを目指して。

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