12.すごすぎんだろ
彼女たちの実力が一体どんなものなのか、俺は一切把握していなかった。
もちろん、多少は彼女たちは出来る子だと認識していたが、人並みだと思っていた。
けれど……こんなの見せられたら、やっぱり最強なのではないかと疑ってしまう。
でも三人は当然のことだって言うからな。
分からない。分からないままだ。
「そろそろ第三村だね」
「んあ。あ、もうか」
悩んでいると、イヴが隣から声をかけてきた。
考えながら歩いていると、時間の経過ってのは早いものだ。
木々も次第に少なくなってきて、開けた場所までやってきた。
「ここが第三村か」
目の前には、多くの家屋が立っている村があった。
こんなにも大きい村だとは思っておらず、少し驚いてしまう。
「すごい! 建ってる家、みんな同じ形してるね!」
「ふ、不思議な村ですね!」
確かに、言われてみれば家屋はほとんど同じ形をしている。
多分、村独自のルールでもあるのだろう。
「おいてめえら! 一体何者だ!」
村の景観を眺めていると、数人の村人が武器を構えてこちらを睨めつけてきた。
というか、よく見てみれば村人のほとんどが武器を所持している。
……やばい場所に来ちゃったかもしれない。
「お、落ち着いてください。俺たちは許可を貰ってここに来ているわけで……」
慌てながら、村人たちに説明しようとする。
客人が来るってことくらい事前に説明しておいて欲しいところだったんだけど。
「一体誰から許可を貰ったんだ? ああ?」
「ボ、ボスから?」
「嘘つけ! てめえらみてえな弱っちい奴らがボスから許可を貰えるわけがねえ!」
やっぱり納得してくれないか。
というか、これ絶対ヤバい状況だよな。
俺たちは四人。
相手は五人以上。
あ、これ死んだか?
どうしよう、めっちゃ怖い。
やっぱり帰りたくなってきた。
「ふははは! こいつ、怯えてやがるぜ!」
「笑えるな! 無様すぎて、腹が痛えわ!」
「さっさとぶっ倒して、金目の物は奪っちまおうぜ!」
「そうしようそうしよう!」
やばいやばい。
普通に不味い状況になってきた。
俺は慌ててナイフに手を持っていくが……ダメだ。
あの時みたいに戦える自信がない。
「こんな無様な男についてくる女供は可哀想だぜ!」
言いながら、村人たちが俺に向かって武器を突きつけてきた瞬間のことだった。
俺が思わず目を瞑り、死を覚悟したのだが。
一切、痛みなんて走らなかった。
通常なら、相手が持っていた槍で一突きにされていたはずなんだが。
「え……?」
恐る恐る目を開けると、槍が目の前で停止していた。
「ねえ。私の旦那様を今、馬鹿にした? 殺そうとした?」
ミーアが鋭い視線を向けながら、槍を掴んでいたのだ。
「俺様の槍を素手で……ひっ!?」
「あたし、スレイに責任を取ってもらうって約束しているんだけど。勝手に殺そうとしないで貰える?」
槍を持っていた男の背後には、イヴが立っていた。
鋭い爪を首元に当てて、冷たい視線を向けている。
「な、なんだこれ……体が動かねえ!」
「何が起きてんだ……体が重い……」
「立ってらんねえぞ……!」
他の男たちは、地面に突っ伏しながら悲鳴を上げていた。
ちらりと隣を見てみると、レイレイが何かの魔法を発動しているようだった。
「こういう戦闘、苦手なんですけどね」
レイレイがすっと、手を振り下げると、更に倒れている男たちに負荷がのしかかる。
完全に動けなくなった男たちは、悲鳴を上げることもせずに解放してくれと呻いていた。
「どうなってんだ、これ」
この現象が発生したのは、本当に一瞬。
俺が目を瞑り、ちょっとした後に開いたらこうなっていた。
と、とにかくだ。
「三人とも、もう大丈夫だ! 多分、こいつらにはもう敵意はない!」
そう叫ぶと、三人は不満そうにこくりと頷いた。
ミーアは掴んでいた槍をへし折り、イヴは嘆息しながらこちらに戻ってくる。
レイレイは少し躊躇しながらも、魔法を解除した。
男たちは、やっと自由になった体を噛み締めながら、涙目で俺たちのことを見る。
「お前ら……何者なんだ……!」
「強すぎるだろ……!」
肩を揺らしながら、叫んでくる。
「その前に、スレイに謝ってよ」
「謝りなさい」
「謝罪を求めます」
俺が固まっていると、隣から冷たい声が響いてくる。
「ひっ!? す、すみませんでした!!」
「勘弁してください! 謝りますから!」
「本当にすみませんでした!!」
全員が、必死で頭を下げてくる。
「あー……すごいなお前ら」
俺は少し困惑しながら、ミーアたちに聞く。
「スレイのためならなんだってできるよ!」
「まあ、責任取ってもらう前に死なれたら困るし」
「と、当然です!」
やっぱり、俺は何か勘違いしていたのかもしれない。
こいつら、やっぱり只者じゃない。
すごすぎんだろ!




