89.ウサギはビビリで弱虫のようですよ?⑤
いつになく、桜花ちゃんは俺たち3人に対する態度が悪い。
にゃんこ先生は俺に対する態度が悪いと怒ってくれたが、俺にだけ悪いわけではないだろう。にゃんこ先生は自身に対しての態度は当たり前として受け入れてしまっているのだろうか。
俺は桜花ちゃんの態度に文句はない。仲間を想うからこその態度だ。尊いものだろう。怖いが。怖いと言う事実は払拭できないが、尊い。嫌悪はない。
「事実を言ったまでだし。」
「おめぇなぁ!」
「仲間を罠にはめて危険に晒すようなクズは嫌いなんだよ。アンタも含めて。死なないようにサポートするって出来るだけの実力あるんかっての。」
荒々しく桜花ちゃんは言う。感情的に言葉を吐き出している。それはもう、唾でも吐き出しそうな態度だ。
よほど、ご立腹らしい。
「ッ!?だからいい加減にすっぺ!どんだけ拗ねれば気が済むんだ、おめぇは!!!こんの、おたんこなす!!」
荒々しく感情をあらわにする桜花ちゃんに怯むことなく、にゃんこ先生は怒鳴った。
感情がしっかりと乗ったこれでもかと言うほどに真っ直ぐな声で桜花ちゃんをしっかりと見据えてにゃんこ先生は口を開く。
「おめぇは分かってんだろ!人が人を罠にはめることがあるってぇことも!敵が魔物だけじゃねぇってことも!!分かってるんだろ?!大切なのは分かる!オレらだってやらなくて良いならやりたくねぇ!!けんど、あの子らに経験させずに守るだけで何になるっぺ?!罠も含めて教えて対処できるようにしねぇと、死んじまうのはあの子らだっぺよ!!サポートするんはオレらだけじゃねぇっ!ぜってぇ!ぜってぇ
死なせねぇようにするっぺ!!オレらが全力を尽くす!!おめぇは仲間だろ?!信じて待たねぇで、どうするだ?!あの子らのためにもならねぇべ!!」
がーーっと手を振り上げ言う。幼児が起こっているかのような態度だ。だからこそか、威厳やら怒られていると言う迫力はあまりない。
迫力があろうと、桜花ちゃんにはあまり効果がないであろうに、迫力がないんじゃ、反応はしてもらえない。
にゃんこ先生を気に入らないと言うように見ていた桜花ちゃんはため息を吐くだけだった。
そして、彼らのいる建物のある方へと視線を彼女は向ける。心配そうな視線だ。
にゃんこ先生は怒りを爆発させたが、桜花ちゃんは何も言わず、遠くを眺めている。
桜花ちゃんが見ている方向をみるが、そこには木々があるだけであり、建物など見えない。
それは桜花ちゃんも同じはずだ。
だが、視線の先には確かに見えはしないが建物がある。あの子達が今いる建物が。
話をしっかり聞いているかも分からない桜花ちゃんに、にゃんこ先生は動きを止め、ため息を吐き出した。
「分かってるのか、おめぇ。こうして八つ当たりすんのだって、仲間を傷つける行為だっぺ。」
疲れたというように、にゃんこ先生はため息混じりに言う。
俺たちは罠を仕掛け、あの子達を危険に晒している。
それを桜花ちゃんは怒っているが、桜花ちゃんの今の行動もまたーーー八つ当たりであるならば仲間を傷つける行為である。
にゃんこ先生は厳しいことを言う。
「…………………そんなの、分かってるもん。だから、あの建物には乗り込んでないじゃん。あーっ!もーっ!人為的な罠に気付けないとか!仲間を危険に晒すとか!!」
にゃんこ先生が言ったことに対し、たっぷり間を含ませてから、桜花ちゃんは駄々をこねる幼子のように頬を膨らませた。
その場でジタバタする姿は実に幼く見えーーーいや、年相応か。まだ子どもなんだ、あの子は。
そうだ。怒ってはいる。
だが、彼らに必要であることも理解できているからこそ、彼らのもとには行かない。
とはいえ、分かっていても納得はできていないのだろう。
罠にかかってしまった自分も許せず、助けに行けない現状もまた、納得できない。
だが、どうすることもできない。
それはどれだけ歯痒いことか。
思い通りにいかず、地団駄を踏むのはおかしいことではないか。
そんな子どもにおびえ、いまだに立てずにいる俺がどれだけ情けないことか。……まだ立てそうにない。
「つまり?志貴さんは憂さ晴らしのために僕らに絡んだんだね?」
わんこ先生。
そこは事実だろうが、言わないでやるものだろう。
なぜ、あなたは神経を逆撫しているんだ。しかも、楽しそうに。顔は見えないが、声は面白がっているのが全く隠せていない。
まったくもってこの同僚のことが理解できない。
わんこ先生は真っ直ぐに言葉にしすぎている。
「うっさいっ!!」
「それで?志貴さんは僕らに絡んでどうしたいのかな?」
突っ込んでやるなよ、わんこ先生。頭をかしげつつ、わんこ先生は桜花ちゃんに聞いているが、わかりきった話だろう。
今、貴方が憂さ晴らしだと言っただろうに。
子供なんだ。八つ当たりくらい良いだろう。受け流すのが大人だ。
にゃんこ先生もわんこ先生も厳しいんじゃないだろうか。
「むしゃくしゃするのは分かるけど?それで、どうしたいのかな?君がどうしたいか、言ってくれなきゃね?」
「………仲間を危険に晒したくない。」
むすーっと拗ねた幼子のような様子で桜花ちゃんはぼそっと言った。
言っていることは実に桜花ちゃんらしい。
「そっかそっか?今の彼らの安全は僕らがどうにかするかな?ウサ先生やにゃんこ先生が頑張るよ?」
桜花ちゃんに対し、わんこ先生は優しい声色で言う。
自分が頑張るとか言わないのか。そこは自分が頑張ると言うところだろう。
しまらないのは彼のキャラ所以か。彼らしくはあるんだが。
「…………私、今の時間は自由?」
桜花ちゃんは納得は出来ていなさそうだ。
まだまだ文句を言いたそうだが、それらを飲み込み、わんこ先生を見上げている。
「まぁそうだね?」
「おめぇの課題も準備してっけど、罠にかからなかったからな。全員出てくるまで待つっぺ。」
「………そう。じゃ、自主練してる。罠に気付けなかったのは人為的な罠に対する警戒が足りなかったわけだし。鍛えて待つ。」
未だに気に入らないと態度では言っているが、引いてくれるらしい。
いや、彼女はハナから文句を言いにきただけでどうするつもりもなかっただろう。
彼らを危険に晒すのは嫌ではあるだろうが、彼らのためには多少の危険も必要だということもわかっているはずだから。
「罠に気付けなかった悔しさもあったからね?悔しさ、ウサ先生にぶつけていたし?鍛える方にエネルギーを向けてくれるのは僕らとしてもありがたいね?」
だから、わんこ先生、煽らないでくれ。
幼児にその対応は大人げなさすぎるだろう。
罠にかかったことが悔しいのは至極真っ当だ。それを俺達に向けたのだって俺達が罠を仕掛けたのだから当然だろうに。
「わんこ先生、コイツまだ絶命してなーーーあ、噛まれた。」
ギロッとわんこ先生を睨んだ桜花ちゃんは捕まえていた魔物を向けーーー不注意にも噛まれていた。
桜花ちゃん。それは毒を持つ魔物なんだが。
虫の息だったとはいえ、毒を持つ魔物に油断は禁物なんだが。
幾度となく口を酸っぱくして言ってきたが、桜花ちゃんのこういうとこは中々治らない。いい加減、治してほしい。本人に治す気もなければ、問題だとも思ってないから勘弁してほしい。
こうして、ちょこちょこやらかすから、空様とはぐれて彷徨うなんてことが起こるのだろうな。
噛まれた姿を見て、にゃんこ先生もわんこ先生も、当然だが、ぎょっとする。
あ、こういうときはわんこ先生も心配するんだな。狼狽る姿を見るとは意外だ。いや、心配するか。当たり前か。お優しい方ではあるからな。
あの程度の魔物の毒ならば桜花ちゃんにとってはどうってことないだろうが、そこじゃない。子どもが毒を持つ魔物に噛まれたら誰だってギョッとするだろう。
面倒そうに2人に視線を向けた後にこちらに視線を向けてくるが、俺は2人は止めれないぞ?悪いのは桜花ちゃんだ。
しっかり、説教をうけろ。そして反省しろ。直せ。
そんなに見つめてもダメだ。
いまだに座り込んでいる俺をあてにしようとするな。というか、なぜあてにするんだ。
常時でも俺は庇わないぞ。
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