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79.思考停止すること、ありますよね

桜花の言葉の意味が理解できず、マリは口を半分開けっ放しにしてしまい、ぽかーんと一時停止の状態となった。


それはもうテレビを一時停止したかのように動きを止める。


みんな息はできるでしょう?とでも言うかのようなレベルで桜花は言うが、マリにとっては逆立ちで世界一周できるでしょ?と言われているかのような気分だ。


普通に出来るはずがない。


対面して話しているのに、2人の思考が交差しない。それぞれの常識が全く違うとこにあるからこそ、話が噛み合わないのだった。


入れ歯のサイズが合わない老人のカポカポな口くらいに噛み合わせが悪い状態だった。今にも入れ歯が口から飛び出しそう。かぱっていってしまいそう。


「え?」


「ヤギドリは火を吐くだけでコントロールは出来ないから。術式1でコントロール出来ちゃえば、その火は自分の物にできる。魔力少なく火を使えて便利。」


ぽかーんとするマリに桜花はニカッと笑いつつ言った。


やってみぃ〜と気軽なノリで話す。


ぽかーんとしてしまうような凄いことを、だ。軽いノリで話すようなことではない。絶対ない。あるはずがないとマリは断言する。


「そんなことができるのかよ?!」


魔物の出した火を奪える?


何を言っているんだとマリが言葉を失う中、秋明がマリの気持ちを代弁するように声を上げた。


驚きに顔を染めて、桜花を見つめていた。


驚いたのが自分だけでないことにマリは安心する。普通のように桜花は話すが普通ではないようだ。多分。


「そもそもがそのための基本系の術式だからね。」


術式1は火を出す術式じゃあなく、操るものだよ?と桜花は言う。


なんだか、次元が違いすぎてよく分からない。


桜花がすごいだけなんじゃ。そんな気さえする。いや、それが事実な気がする。凄すぎる桜花だからできるんだとマリは結論つける。


「とは言っても、それ難しいよね。魔物が強ければ強いほど無理だし。あの場面でいきなりはキツいよ。」


悠真の言葉にマリはそうよねっ!と強く思った。


が。


あの場面ではキツイ。


ふと、その言葉に引っかかる。喉に引っ掛かった魚の骨のような不快感があった。


それはまるでできそうだとーーー


「えー?谷上、前にやれてたじゃん?」


「あの時は一体だけだったし、たまたまだよ。またやれるかは分からない。」


ーーーできたらしい。


術式が得意とはいえ、悠真は実際やってみせたらしい。本人は自信がなさそうだが、自信がないのは悠真のデフォルメなのだから不思議はない。


桜花曰く、マリ達にもやれるらしい。


到底、できる気がしないが、周りはできている。桜花が特別凄いわけではない。その事実がズッシリと重々しく感じられ、先程の後悔とはまた別の痛みが胸を襲う。


「て、やれてたの??すごっ!」


声を上げつつマリは考える。


よくよく見れば火がコントロールできるという話をした際にビックリしたのは秋明やマリだけだった。


自身が出来るか否かは置いといて、出来ることは知っていたのかもしれない。


もし。


もしも、自分が出来ていたならば。


あの場面で助けられる必要はなかった。


考えなしに出て行ったくせに結局助けられるなんて情けない。間抜けすぎる。


もっと。


もっともっと頑張らないと。


そう思って、マリは己の拳を握りしめた。もしも、手中にくるみがあったならば割れていたかもしれない。パリッと簡単に。


ま、ともかく。気合を入れ直したマリだった。


気合だ気合た気合だあああああと叫びたくなるくらいにしっかりと気合が入った。


とりあえず、術式については帰ってから練習しよう。


出来ないことも多ければ知らないことも多い。とにかく頑張らないとガッツが入るわけだ。











◇◇◇


「で?気を抜くなって言ったのに、何してんのよ?」


頑張ろうと気合いを入れ直した矢先。


いきなりマリは脱力させられていた。


脱力させてきた原因はにへらぁと笑みを浮かべつつ、マイペースに作業を進めている。この笑みもまた、マリを脱力させてしまう。


マリを脱力させた人物ーーー桜花は肉やら何やらを切っていた。一体どこから材料や調理器具を取り出したのやら。


いつもと変わらぬ様子で昼ごはんの準備をしているようだった。


「お昼ご飯の準備かな〜?お肉採れたし?お昼食べるでしょ?」


昼。


みんなで休憩を始めたあたりで桜花が何やら動き出した。みんなが休むスペースを囲うように何やら物を置き出した。それをユキや結弦が興味津々というか、食い入るように見つめていたため、マジックアイテムか何かだろう。


何を置いたかを聞く前に、桜花はどこからか机とか調理器具を取り出して、肉を切り出し始めた。バーベキューが出来そうな器具もどこからともなく出していく。


マジックバックを持っていると言っていたから、そこに入れていたのかもしれない。


なぜ持ってきているかは分からないが。


「匂いで魔物が来たりは…?」


マリは食材を見て、食べたいと思いつつも、先ほどまで様々な魔物に出会っているからこそ、恐怖もあり、周りを忙しなく見渡しつつ桜花に聞く。


いつあらわれるかも分からない状況だ。落ち着いてくつろいでなどいられない。


そんなことができるのは桜花くらいだと、マリは訴えたい。


「しっきーが四方に置いたアレは魔物除けのアイテムだ。」


ユキが休憩を始める際に桜花が置いていたものを指差し言った。


疲れているらしく、その場に座り込み、動く様子はない。仕方もないだろう。普段、体力作りをしているとはいえ、夜中からずっと活動し続けているのだから。


今すぐアイテムを見たいが、見る余裕はなく、後からじっくり見たいとつぶやいていた。


「そゆこと。緊張しっぱだったし、昼は美味しいもの食べたいじゃない。途中途中、薬草ついでにキノコも採っといたよー。ご飯の準備もしてまっせ。」


にぃと人好きのする笑みを浮かべつつ、桜花は鍋やお玉まで取り出していた。いやはや、森の中で何を作るやら。


どうやら桜花はこれから本格的に調理をする気らしい。嬉しい限りだ。はらぺこだが、携帯食は味気ないため出来立てが食べたい。


「にゅ。」


にぃと笑った桜花のそばにチビが寄っていく。口には何やら咥えられている。


桜花はチビが咥えて持ってきたそれを受け取り、カバンにしまっていた。


「やけに水や食料を採ってたのはこれのためだったのかぃ。」


「そそ。それがなくてもチビさん私への貢ぎグセがあるから持ってくるんだけどね。せっかくだし、その場で採ったものを調理して食べたいなぁと思います!!ゲテモノは使わないから安心して良いよ〜。」


桜花はご飯を作るよぉと宣言した。


その宣言に疲れて体力が限界を迎えていた面々に光が刺す。パアァと表情を明るくした。


マリも表情を明るくしたが。


やや気になる単語を桜花が口にしていた。


ゲテモノは使わないとは言ったものの、ここは森の中。周りにはさまざまな食材がある。いわゆる、高栄養だが、見た目が悪いものもわんさかーーー


「ゲテモノはいやっ!!」


ゲテモノは使わないの言葉に反応し、マリは叫ぶ。


「ハハッ、だから使わないって。使うにしても調理して分からなくなるから大丈夫!」


マリの反応に目を細めつつ、手をテキパキ動かして行った。


「手伝いますね。」


他は立ち上がれずにいる中、自分だって疲れているだろうに、佳那子は立ち上がると桜花に近づいていく。


意外と体力があるらしい。


「ありがとう〜。じゃあ、スープお願いしよっかな。はい、調味料セット!山菜もあるよ〜。」


「ありがとうございます。」


佳那子にぽんぽんと桜花は物を渡していく。


カバンやら術式やらに収納していたらしいが。


「そんなものまであるの!?」


調味料セットやら食材やら調理器具やら。


次々に出していくから驚いてしまう。


「食事は私の担当だったから、持ち歩いてるのー。食糧も集める癖がついとります☆チビも十分に食材持って来てくれてるしね。」


「にゅぃ!」


どんな癖だと言いたくなるような事を桜花は朗らかにいう。


マリは自分も調理を手伝わなきゃと思いつつも、疲れで動けず、結局はテキパキ動く桜花や佳那子を眺めつつ、休憩することで時間が過ぎていった。


魁斗や秋明が途中から手伝い始めるが、マリは動く余裕はなく。


動こうとしたが、桜花に休めと言われ。何だったら寝てて良いとまで言われてしまった。


お言葉に甘えて、だらーんと休んで過ごしてたら食事ができたのだった。情けないと思っちゃうのがマリなんだが。


救いなのは佳那子や魁斗、秋明くらいしか動けているものがいないことか。


いくら気合を入れたとて、体力はどうにもならず。疲労は蓄積しているため休むほかないわけだった。



読んでいただき、ありがとうございました^_^

楽しんでいただけてますと嬉しいです!


気合だけが空回り。

あります、あります。


動けなさがより明白に自覚しちゃうがゆえに悔しくてたまらぬわけです。

ま、気合を入れすぎず無難に適当に適度にが自身に負担をかけすぎず、一番だと私は思って肩の力を抜きまくってますが。


マリのような頑張り屋はプライドも目標も高いから熱さを持たない私には眩しく感じる今日この頃ですね笑

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