77.ピンチは突然です
武器が把握しているはずがない。そんな質問を桜花はチビに聞く。いつからなんて概念は人間のものであって、武器にそれは通用しないだろう。
なぜ、当たり前のように武器に聞くのか。案の定、チビは頭を傾げているではないか。
この辺りが桜花の天然さであるとマリは思う。
「分からないねぇ〜。気がついたら銃を撃って、ナイフ振り回してたぁ。」
恐ろしい事を桜花は言う。なんてこともなく言ってのける。笑いながら言うことじゃない。
物心がついたときには武器に囲まれ、解体などもしていただなんて、マリには怖い事実だ。
「こわっ!!怪我したりは…」
マリは声を上げる。
マリならば絶対、何度も自分が扱う武器で怪我を負っただろう。
今、桜花は怪我せずにいろいろやって見せるが、幼い桜花ならば怪我もしていたのだろうか?はじめから何でもできるようなイメージではあるが。
「怪我するまえに私から武器を取り上げる姑がおりましたから?」
「にゅうっ?!」
姑と比喩された武器ーーーチビは気に入らないと言うように桜花を睨んだ。
なるほどなるほど。
練習の際にはチビがそばにいて怪我をしないように見ていたようだ。
つまりそれは、それだけ幼い時から護獣を出現させていたということ。自身は未だに名すら知らないと言うのに、それが可能だっただなんて凄いものだとマリはなんとも言えない気分になる。
「自覚あるんじゃん。練習する私から武器を奪って、私が泣きじゃくるっていう騒ぎを幾度となく起こした事か。」
「にゅっ。にゅにゅにゅー!」
「ま、言えてるねぇ。今だったら奪わせないし?チビ風情じゃあねぇ〜?」
「にゅあん?」
当の本人らは凄いもの達と感じさせないような様子でじゃれあっているが。
あれですごい人物なのだとは思いにくい。
高飛車な偉そうな奴は嫌。そこにいるだけで鬱陶しいと感じてしまう。
確かにお金持ちのガキ的な地位を持った学年トップを打ち負かし、そこから始まる友情やら愛情やらを描くものはある。
が。
現実、高飛車な偉そうな奴は殴りたくなっちゃう。ツンデレがツンデレを攻略できるはずもなく。いや、ツンツンし合うからこそ、くっつくのか。とはいえ、マリにはレベルが高すぎる。だって短気だもの。
て、なんの話だってなるかもだけど、すごい奴って才能があるからこそ、天狗になって高飛車になることあるよねって話だったりする。
そういうキャラって1マンガに1人くらいいるよね。そういうキャラはいらないなって思ったりするわけだよ。
とはいえ。
だからと言って、すごい子がごくごく普通な子に見えるって言うのもどうなのか。そんなワガママなことを思うわけだよ。
凄いんだから。すごい子なんだから、もう少し威厳というか、なんと言うかを持てないのか。いや、それだと話しかけにくくなってしまう。それはさみしい。だったならば、このままの話しやすい人物の方が良いのか。
よく分からなくなってくる。
「喧嘩しないの!アンタ達、元気ねぇ。」
とりあえず、マリはいつも通りのノリでじゃれ合う桜花とチビに声をかけた。
すごい子達って一見、分からない子ら。だけども、ものすごい子だ。マリの自慢の友人である。
「にしても、チビに武器を奪われて泣く小さい桜花ちゃんか。」
クスクス笑いつつ、魁斗は言った。
想像しているのか、魁斗は楽しげに桜花に視線を向けていた。
「ん〜?」
「見てみたいもんでぇ。」
写真とかないのかぃ?と魁斗は桜花を見る。
幼い桜花。武器を奪われ泣きじゃくるなんて可愛いだろう。
見てみたい。マリは目を輝かせる。
「たしかに。泣きじゃくる桜花って想像つかないわね。」
すごく見てみたいと思う。
絶対可愛い!
期待を込めてマリは桜花を見た。
「ハハハッ。見るほどの価値ないって。ほら、さっさと遠足の課題、片付けよー。」
桜花に軽く流され、残念と唇を突き出し拗ねたような顔をするが、桜花はそれを無視してユキや結弦に視線を向けた。
これは見せてくれそうにない。残念だ。
「そうね。」
視線で促されユキや結弦を中心として、順路の見直しをする。
初めに決めていた順路があるため、確認がてらに話すだけだ。
そして、確認後にはそれで大丈夫かを桜花に確認する。頼りにされているわけだ。
「…………………何で最終的な決定の時に毎回、私に許しを乞うのかな?」
確認された桜花は良し悪しを言うではなく、頭をかしげていた。
やや不満顔でユキや結弦を見ていた。
「しっきーは現場慣れしているだろう?どう動くべきかは1番分かっているはずだ。」
「自分達で考えはしてるけど…間違ってないか確認したくなるのよ。」
ユキや結弦は言う。
桜花なら確かに正解を知ってそうだ。知っているならば、教えてくれたって良いのではないか。
こうしてしぶるのは、ケチなのではとマリは思わなくもない。
「私は教師ではないんだけど?何でそんなに凄い人認定されてるんかなぁ?ごくごく普通の戦闘員なんだけど。」
桜花はぷくーと頬を膨らませる。フグのようだ。
マリには、桜花が何が気に入らないのか、わからなかった。桜花が優れているのも事実。それが認められ、皆に頼られるなんて頼もしい戦闘員ではないか。
教師のように頼られ、不満顔な桜花。
ぷくーと頬を膨らます様子もまた、可愛らしいんだが、何が不満なのかが理解出来ない。
「桜花ちゃんが1番強い上に1番現場慣れしてるから、頼りたくなるんでぇ。頼りにされてるってぇ、喜ぶところだぜ?俺ぁ、そんな桜花ちゃんが大好きでぇ。」
メロメロになっている魁斗のいつも通りの様子には呆れてしまうが。
ふぅとため息をつき、魁斗の愛の告白を受け流す桜花にも呆れを禁じ得ないが。
やはり、なぜ桜花が不満に感じているかは分からない。
「私、大したことみんなの前でしたことないんだけど…過剰評価にビックリだよー。まぁ、良いや。順路とかはそんな感じでいいと思う。さっさと進もうか。まだまだ薬草採らなきゃーーー北の方角から魔物!ユキ、ゆずるん!下がれ!こっち側にいてっ!」
途中、桜花が何かに反応したように動き、そして声を張り上げた。普段はのんびり話す桜花の緊急時の指示。それにより一気に場が張り詰めた。
桜花の言葉に反応し、全員が武器を構え、桜花の言った方角に注意を向けーーマリは拳を握りしめると、魔物が来るであろう方角をを睨むように見た。
まだ、魔物の姿は見えないわねーーーなんて思ったその時。桜花が言った方向からいきなりの襲撃を受けた。黒い何かが猛スピードで顔面近くを通り抜けて行った。
桜花に言われ、皆が警戒していたからこそ、出会い頭のその不意打ちにやられることなく防御できた。が、何が飛んできたのかもさっぱり分からない。
皆、姿を現した魔物に注意を向ける。
あらわれた魔物は掌サイズの魔物だった。真っ黒な蝙蝠のような生き物が5体。
最初の一撃を弾かれ、コウモリ達は近くの木の枝に止まった。そして、こちら側の出方を伺うかのようにじぃとまり達へ注意を向けていた。
「こ、コウモリ?」
「はや…」
皆、武器を構えたまま、魔物を凝視する。
両者見つめ合ったまま、数秒が経ったところでーーー桜花が動いた。
始まりの合図と言わんばかりに銃を撃つ。一体のコウモリが地に落ちていくのが見える。
それを合図に両者が動き出した。
まず、魁斗や秋明がコウモリに突進していき、その後ろにマリが続いた。
特攻しなかったツバサや司が悠真の壁になるように立ち、コウモリが近づこうものなら、悠真達、後方メンバーの元まで行けぬように足止めをする。
その間に悠真は術式を展開していき、皆に術式をかけていき、サポートに周った。
その後方に樹里が銃器を構えて立ち、辺りの警戒に当たった。その横で桜花がチビと共に戦況を見つつ、悠真同様に術式を使いつつ、銃を度々撃ち込んでいる。
姿を現したコウモリ達はすぐに殲滅できた。スピードもあり、コウモリのくせに糸を操ったりもしていたが、いきなりスピードが落ちたりしたため、容易く倒せたのだ。
悠真や桜花によるサポート様々だ。それがあったから動きやすかった。
「まだ魔物が来ます!ーーーあれは…ヤギドリ?」
「5体います!!」
コウモリを倒し、ホッと一息をつこうとした面々に樹里が銃器を下ろさず構えたまま言った。樹里に続き佳那子も叫ぶように言った。
姿が目視できた瞬間、樹里は銃を撃つ。その弾丸は1番に姿を現したヤギドリを撃ち抜き貫通すると、後ろにいたヤギドリにも命中した。
「ひゅー。ナイスだぜ、樹里。」
一度に2体を倒した樹里を絶賛しつつ、秋明はヤギドリへと突進していく。
武器を手にヤギドリへと迫った。
「あべべ、近づきすぎるな!!」
「下がりなさいっ!!」
前にイベントで見た魔物であるがゆえか、持ち前の性格か。
自身の武器で攻撃出来る範囲まで詰めた秋明にユキや結弦が声を張り上げた。
読んでいただき、ありがとうございました^_^
楽しんでいただけてますと、幸いに思います!
昨日が誕生日でした
思いがけず、多くのかたに祝っていただき、嬉しい限りです
嬉しいことが立て続いています
この調子でハッピーに行かねばですね
ではでは、また次回お会いしましょ




