66.遠足の準備をするようですよ③
空はトップ。国1番の戦力なんだから、実力差があるのは当たり前だよ。まったくもって至極当然のこと。
阿部達は特に経験の浅い戦闘員。
敵うはずがないんだよ。
「それだけ差があるって話だよ。となると、阿部にしてみれば空なんて化け物なんだよ。人ではなく化け物。いつ自分達に牙を剥くか分からないじゃん?怖いじゃん?阿部から見たら空は退治しなきゃじゃん?」
「あ?何でだよ。人守るために戦っている奴らだろうが。襲ってくるわけがねぇ。」
心底理解できない。
そんなリアクションを阿部は取った。
いやはや、純粋だねぇ。この世には悪と正義しかなくて、一般人は悪にはなり得ないって思うくらいに純粋だねぇ。裏切りだってお約束のネタだっていうのに。
空は、というか、戦闘員は人を守るために立ち上がった人達だ。人を守るために怖いのを乗り越え、覚悟を決めて武器を取った勇気のある人達な訳だよ。
一般的には。
中には悪人もいる。ま、当然だよね。どこにでも、どんな世界にだって悪人はいる。なんならたまたますれ違った人が悪人だっていうのもおかしくはない。
戦わない人たちは思うわけだよ。いつか自分達を襲う事があるんじゃないか。倒せるうちに倒すべきじゃないかってね。
空みたいな絶対的な戦力を持つ奴は人間じゃない。自分達を襲う魔物と変わらないじゃないかって。
勇者は人とみなされず、魔王を倒したら、不用品として殺されました。
そんなノリで魔物がいなければ私らも化け物として殺されたりして。あるいはかえがきくからと無碍にされたりして。せっかく助けたのに化け物と罵られたりして。
しかも。
戦闘員の中にだって敵はいる。権力を握りたいけど空には敵わない。で、あるならば空を殺せば良い的に行動する人もいる。
仲間を囮にして魔物狩りをするクズもいる。
そんな悪意は戦闘員の強い奴らに集中する。強くなくても恐れられるだろうけど。強ければ強いほど、そういう現実は見えてくる。
勇者は人間の闇を垣間見て、あれ?何を守っているんだろうって疑問に思ったりしちゃうわけだね。
知らない人が自分より遥かに優れた戦闘能力を持っていたら怖いのよね。自分達にはないものを持っている奴らがいる。
集団でつるむとおかしいのは持っている側になるわけで。おかしい奴らを攻撃するのは自然の流れなのね。自然なわけだよ。何日にいっぺんは雨が降ったりするくらいに起こりうる普通な出来事。何のおかしいことではない。
阿部みたいに純粋に戦闘員を信じられる方が少ない。阿部ったら希少種だよ。尊き存在だね。いや、マジで。日本狼のようだよ、って、これじゃあ絶滅してるか。阿部が絶滅しちゃった、テヘペロ。
恐れから襲ってくるだけではなく、様々な悪意もあるわけだよ。
悪意のある奴も臆病な奴も存外あちこちに多量にいるわけでもある。長年一緒にいても、それが見抜けない時だって、やっぱりあるわけだよ。
「なんでって言われてもねぇ。そうして出来た人達だからなぁ。みんながみんな、阿部みたいに思えれば良いんだけどね?戦闘員が自分達に牙を向いたらどうしようって思っちゃったら討伐する他なくなるんだよー。」
「気にくわねぇ。ソイツらを恐れて弱いままでいたら、死ぬだろうが。守れなけりゃ意味がねぇ。」
ケッ。
そう阿部は悪態をつく。
確かに強くなければ死ぬ。だから必死に強くなろうとするわけだよ。
でも強くなり続けた先に幸せがあるとは限らないのね。それを知った上で強くならなきゃ絶望感に支配されちゃうから注意。そうして堕ちていった子を見たことあるし。
「ははは。確かにね。とはいえ、強すぎると思われれば化け物とおびえられるんだよ。」
笑いながら言うようなことじゃないけど笑いながら言う。
笑ってなければやってられない。
1番怖い敵は人間であるだなんて。人間につけられた傷が何より癒えるまでに時間を要する。
ひゃっはー。こっわいよねぇ〜。嫌になっちゃう。
「怖がられる、か。そういうのにも、慣れてるのかぃ?俺ぁ、どんな強かろうが、桜花ちゃんが大好きでぇ。守ってやらぁ。」
んんん?
お兄さんから愛の告白受けちゃった。
そんな流れじゃなかったと思うんだけど?いつも、いつでもお兄さんは私に愛を語るねぇ。他の子には語らないのに不思議さねぇ。
親友には距離感近くなる子なのかな?
惚れてまうやろー!まったくー、勘違いしちゃいそうになるでしょうが。いや、しないけど!
「魔物がいる以上、力を持たないと思われてもいけない。力がなければ魔物に脅かされるとビクビクしなければならんしな。ただし、力を持ちすぎていると思われてもいけない。化け物と罵られる、か。敵は魔物だけではないのは面倒だな。」
「本当、無視できないのが煩わしいわ。」
つまらなさそうにユキは言う。ゆずるんはゆずるんで綺麗な顔を歪めちゃって。
2人ともお兄さんの言動は無視だね?まぁいつも好き好き言ってくれるから特別な話ではないけどさ。
ユキもゆずるんはどちらかと言えば、戦闘員に怯える側だというのに、そちらからの視線でモノを言わないんだね。
怯える人達のことを考え、面倒だとぼやいている。
あくまでも当たり前のように私ら側に立とうとするんだねぇ。実に厄介だよねぇ。
スイカの種くらいの鬱陶しさがあるよね。
なければ見栄え的に寂しいけど、思いっきり食べた時にガリってなって鬱陶しい。いやはや、厄介厄介。
「何も考えずに強さを示し続けると地位が上がるからね。魔物だけではなく、人の相手もこなさなきゃいくない。阿部には難しいんじゃないのー?」
「うるせー。何とかなんだろ。俺は守りてぇんだ、絶対強くなる。」
からかうように言えば、ムスッとした顔のまま、阿部は言う。
どこまで理解しているかは分からないけど阿部がには迷いがない。さすがだねぇ。単純ばかはこういうときに強いから良いよね。
「ふーん。」
「どんなに強くなろうが、お前は怖がらねぇだろ?信頼する奴らがいんだ。他に怖がられようがかまわねぇよ。煩わしいもんだってお前らがいたら何とかなるってーの。一人で何とかする必要はねぇだろ。」
阿部に茶化すように相槌を打てば、阿部は真っ直ぐにこっちを見て、真面目な表情で言い切った。
迷いもなんも無い。真っ直ぐな視線。
真っ直ぐ過ぎて、居心地が悪くなるねぇ。ムズムズしちゃう。全身痒くなっちゃう。ムズムズ病発症だよー!!
1人でなんとかしなくていい。失敗する子って抱え込みすぎて周りを頼らないって言う子も多い。向き不向きもあるんだから他人の手を上手く使って対処していくって大切なのよね。
阿部ったらそれを天然で理解してるから凄いわぁ。
「あらー。阿部のくせにかっこいー。」
阿部はすごいんだけど。
ついつい茶化すように返事をするしかなくなっちゃう。
だってムズムズしちゃうんだもの。
「おい、馬鹿にしてんだろ。」
案の定、私の返事が気に入らなかった阿部に睨まれちゃった。
確かにちょっぴり馬鹿にしたけど。ちょっぴりだけだもーん。無実だもーん。
「アハハ、馬鹿だからねぇ。」
「いやいや、あべべは立派だしかっこいいさ。それに大丈夫だ。みんなで対処すれば良いことであるという考えは正しい。人の相手ならばボクがいる。人に対してならばボクがどうにでも君らを守ってやれる。君らを脅かす馬鹿は蹴散らしてやるさ。」
ユキはかっこいい笑みを浮かべつつ、はっきりと言った。
あー…
戦えない人達が戦闘員に対して化け物と罵ったり攻撃したりすることがあるとか。人によって傷つけられた人たちが人に対して牙を向いたとか、そういう集団がいるとか。
そういうのを理解したうえで、私達を人から守ると言い切っているわけだ。私らのために死にそうで何より怖い人種だ、これ。
手伝いますねって笑顔で言うカナちゃんも中々どうして怖い。おそろしやぁー!手榴弾撫でたりしないで。何をする気だぃ?
「おー。ユキのほうが阿部よりかっこいい。桜花さんもビビっちゃうくらいにかっこいいねぇ。」
「……つかよ、桜花。」
笑いながら言えば、阿部がじーっとこちらを見つめてきた。
表情1つ逃がさねぇぜと言っているような視線。
「んー?」
何が聞きたいか知らないけど、私はポーカーフェイス得意だからね!
情報漏洩はしないぜ!
「俺らの前でまともに戦わねーのって、俺らがビビるとでも思ってんのか?」
んん?
ん〜…
阿部ったら意外と人を見てるよね。
その思考はやっぱり第一印象的に単純ではあるけど。
とはいえ、あの阿部が私のことを考えて発言してくれる時が来るとはねぇ。感動しちゃうね。
読んでいただき、ありがとうございます^_^
とてつもなく、嬉しいです!
前にオムライスの話をしましたが…
チャーハンに卵乗っけて中華出汁で味つけた餡をのっけても良かったなとふと思いました
卵には竹の子やキノコ、人参などを細かく刻んだ混ぜていためて。チャーハンはシンプルオブベストで食材とご飯を塩胡椒で炒めたもの。
上にネギ乗っけて、すみに紅生姜を置く。
うまいですよね。
まぁそれはすでにオムライスではなく、天津炒飯なんですけどね。
大好きです。




