60.遠足があるそうですよ⑤
カナちゃんは珍しく自分の意見を言った。
控えめでいつもみんなの意見に従いがちな子なのに、珍しく言ったわけだよ。
あら、珍しい。本当珍しい。駄菓子屋のガムの当たりを引くくらいに珍しい。マジで珍しい現象が目の前で起きてるね、ひゃっはー。
「私も稲盛さんに賛成よ。基本中の基本な薬草しかないわ。もしもの時、その場で採取して使うって事だってあるはずよ。」
ゆずるんもカナちゃんの意見に同意の様子。ま、知っておいて損はない薬草だからね。
これらの採取の依頼をはじめの方は受けて薬草を覚え、禁止地区に入ると言う事に慣れるっていうのをするのをはじめは推奨されていたっけか。
私は師匠がいるから、師匠について行った先々で学びつつ、ハナからレベルの高い魔物を相手したりしてた。
師匠とかがいない状態で任務を受ける人達は薬草摘みから始めたりすることが多いんよね。マニュアル通り。セオリーに従うとそうなる。いや、師匠達がいるなら、なおさら、薬草摘みからやらされるくらいにセオリーなんだよね。いない奴のが無茶してヤバイことになるんだった。他人事だから気にしてなかったけど。
「多数決で決めよっか。みんなで周りたい人〜。………決定ってことで。」
みんなに聞けばお兄さん以外は手をあげたのでした。お兄さん、どんまい。
みんながみんな、意外にもマニュアルに従う良い子達だったわけです。自分で一つ一つ摘んでいくのがセオリー。学んで覚えて、何かあった時に自分が使えるようにしとく必要があるわけですよ。
にぃと笑ってお兄さんを見れば、お兄さんは口を突き出して拗ねたような表情をした。可愛いんだけどね?みんなに意見を反対されちゃったわけだもんねぇ。仕方ない。仕方ないわけだよ。
私がお兄さんの可愛らしい表情に吹き出せば、さらに睨んでくるお兄さんでした。
可愛らしいとか言ったら多分、さらに睨んでくるんだろうねぇ。可愛らしいくらいに分かりやすく拗ねちゃっているわけだけど。
いやいや、分かるよ?お兄さんに気持ちだって、分かっちゃうよ?
桜花さんだって、戦う方が得意分野だもの。薬草なんて、必要な物はハナ持っているから、摘むのは移動中にあったのを適当にで充分。せっかく行くなら魔物を狩りたいよね。草取りのためにわざわざ時間なんざ取りたくない。
とはいえ、薬草の知識はあって損はないよ?そう私だって思うよ?不遜ながら私ですら、薬草は不要な知識とは言えないもの。
持っていて損するような知識はないとはいえないのは事実であるわけだけれども。いや、ないって言いたかったけど、言いかけたとこで、やはり、いらぬ知識ってあったりはするなとは思ったりするわけだけど。
知らぬは恥。
となることもあるけど、時には知っているからこそ、ヤバいってことも。とはいえ、薬草の知識は役立つほうの知識よね。いつ役立つかは分からないけど、何かあったときに役立つ可能性が高い。ゆえに知っていた方が良いんだよね。
遭難した時、木の実やら野草やらでどうにか生き延びる必要があるわけで。怪我したならば止血しなきゃいけないわけで。現場には応急処置に使える薬草大量にあるんだよ。気休め程度も少なくないけど。でも、時に救いの神になったりするんだよ。
自分自身が危険な時もだけど、仲間が怪我した時何も出来ないってぇのもすごく凄く悔しくてたまらない。応急処置を草やら何やらを用いながら出来た方が後悔せずに済むんでっせ。
師匠達が覚えておけって言ってきた知識だし、先人達が学べと言ったのは先人達が何かしらの苦難に陥ったときに必要となった必須な知識なわけだよ。とりあえず、学んだ方が良いわけだよ。意味が分からずとも、とりま、学べって話なわけだよ。
ま、大抵は覚えておいた方が良いとか学ぶべきだよとかいうアドバイスって、右耳から左耳に受け流して、痛い目あった後にそれを思い出して、あぁ、あの言葉はこういう意味だったんだって納得するわけなんだけどね。
結局、自分がそういう経験をしてから、あ、必要だったんだなって感じたりするんだよねぇ。後悔先に立たずってね。結局のとこ、経験しなきゃ分からないとこだったりするわけだけど。
ほらほら、大人は今のうちにたくさん遊んでおけとか学生の時間が大切なんだとか、今が1番輝く時期なんだから楽しみなさいとかとか言うけども。そんなの実感湧かないし。今の私が1番ならば先の私はもう価値が落ちるのみなのか。未来に光はないのか。だなんて下らない事を考えちゃうわけだよ。
意味わからねー。くっだらねー。はぁ…大人がまたまたほざいとりますわぁ〜。
とかとか。
斜め下から見て、聞き流しちゃいますよ。うるせぇなぁって聞き流すとも。
ただ、将来、振り返った時に意外と納得しちゃったりするんだよね。あ、こういう事だったんだって。で、自分も同じ事を言ったりしたりして。
体験してから思い知って。で、後悔しちゃったりするわけだ。
ワクワク学園の子達は素直に先人の声に甘んじるなんて良い子すぎる。私は無視して突っ切ろうとする。突っ切ろうとしたわけだよ。猪のように先々は見通さず、ひたすら、その時その時しか見えないままに"今"だけを見て突き進もうとするわけだ。
大人達は先々を経験してて、いろいろ考えて、未来まで視野にいれて、今は最善であると分からなくとも、未来には最善になるような、より良い選択肢を提示するけど、それを無視して突き進もうとするんだよ。
ま、それを幼き私が師匠にねじ伏せられ、学ぶことを強要されたなんて可愛い記憶よね。
お前は今、何もできねぇだろ。お前の思考で動いてたらできねぇままで死ぬだけだ。理解できなくても、できる奴の思考や行動を真似ろ。出来てる奴らの思考で動かなけりゃ出来ねぇままだ。
だなんて、師匠に叱られて。ひたすらお勉強もさせられたわけだよ。草やら魔物やらの勉強をしましたとも。いつか自分を救う知識になるかもしれないからって。
ともかく。お兄さんがさっさと魔物狩りに転じたいのはわかるけど、今回はみんなの意見に従うしかない。集団で動くと決めたわけだしね。
地味な薬草採りより派手な魔物狩りの方に胸が躍る年頃よね。若気の至りよね。ーーーっていうと私がババアみたいだけど。
でも、お兄さん以外はみんな、全員で採りに行きたいって言ってんだから、諦めるっきゃない。はい、残念賞〜。また明日ぁあ!
「時間が余ったら、魔物狩りに付き合ってくんな。」
半眼になって私を見ていたお兄さんはやや不機嫌そうな声で要求してくる。むすーっと拗ねちゃってる。ここまで拗ねちゃってるのは、笑ったのが原因な気もしなくもないけど。
ま、いっか。
お兄さんはまだ諦めてはないのね、自由時間。可能だとは思う。全部集めるのに3日もいらないはずだし。
「ははは。順調に行けば2日もかからず採れるよ。1日半はあまるはず。そこを自由時間にすれば良いんじゃないかな?全員で回るならそれぞれ薬草を1人分採取するわけだし、終わったら解散して、帰りたい子は帰るでも良いわけだよ。」
拗ねた幼子みたいなお兄さんについつい笑いつつも、言えば、お兄さんはちょっとは機嫌が直った様子だ。現金なものだねぇ。
わかりやすく顔を輝かせてこっちを見た。ここまであからさまに表情が変わると面白い。可愛らしい。
「いいねぇ。デート、してくんな?」
イケメンが笑みを浮かべつつ、ジッとこちらを見つめて、おねだりしてくる。しかも、自分の整った容姿を自覚した上で、それを最大限に生かしておねだりをしてくる。
うん、破壊力満点ですわ。ついつい、ドキドキしちゃいそうですよ、はい。心臓がドックドクと仕事し始めちゃうよ。
何かの映画で見たあれを思い出す。好きな子のそばにいると自分の心拍が聞こえるから30秒当てゲームが容易に答えられると言う設定。
あれってあれだよね。うるさいくらいに心拍が聞こえるのは分かる。
たださ?
1分間に60回の心拍なら緊張してるわりには落ち着きすぎだし、120回っていうなら、好きな子が横にいるくらいで緊張やばくないかな?
そうも簡単に120回いくとか。将来が心配になっちゃうよね。すぐ不整脈起こしそうで怖いよね。不整脈起こして血栓作って、肺やら脳やらにその血栓が飛んでら。あら、大変。ヤバめな後遺症が残って残りの人生ーーー……
いや、そうなっても、私はどうにでも出来るか。最期の最期まで戦闘員でいる。って、そこは関係ないか。
ともかくとして、やっぱり、心音で1分に60回が測れるって怖いよね。自分で戦えなくなる恐れがあるんだもの。いやだわ、いやいやいやーーーん!
………なーんていう、無粋なツッコミを映画にして何が面白いのかって言われたらそれまでなんだけどね。
無茶も含めて、フィクションなんだから、そんな難しく考えずに純粋に楽しめって話よな。いやはや、それはそれとして。
にしても、お兄さんや。
さっきまで拗ねたような表情していたような子がする攻撃とは思えないよね。表情豊かにして自分の魅力を最大限に利用してのおねだり。もしや…拗ねた反応から計算でやっていたのかね。お兄さん、恐ろしい子!
魔物のいる場に女子をデートに誘うってお兄さんは中々のセンスをしているねぇ。ウキウキとデートに誘う場ではないよね。
「ん〜?チビ付きで良い?」
お兄さんらしいけど。
どうやらお兄さんは私に魔物狩りに付き合って欲しいらしい。小姑が付くけど良いのかな?結構うるさい子だよ?
「なしでも良いのかぃ?」
「にゅぃ?!」
お兄さんが嬉しそうに笑えば、チビが抗議の声をあげ、お兄さんの机に飛び乗った。
だが、お兄さんはその頭をポンポンと撫でるのみ。自由時間に胸を躍らせているらしく、上機嫌となっていて、チビに睨まれるくらいは気にならないらしい。
読んでいただき、ありがとうございます^_^
楽しんでもらえると嬉しいです!
あ、面白いと少しでも思っていただけたら反応していただけると、活力となります!
思いもよらず、時間を得てしまった今日この頃。
普段ならば予定がない日はないくらいに予定を詰め込むわけですが、予定がない。
んじゃ、お菓子作るかとお菓子作りをしております。
レパートリー増えちゃいました。
やったね。
女子力が高まったやもしれません。




