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54.お休み時間のお話です③

魁斗に視点があたります。

◇◇◇side魁斗◇◇◇


夜。とはいっても、そこまで遅くない時間。放課後で、少し時間が経ったかなってところ。部活動があるならば、部活動は終わって帰るかなって時間。夕暮れはすぎ、太陽は身を潜めている。


魁斗はキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていた。今歩いているのは薄暗い廊下だ。鍛錬室の中を確認して引き返したところだ。


見つけたい相手は桜花だ。


この時間ならば鍛錬に励んでいるかと探しに来たが姿は見当たらない。部屋や食堂、図書館にも姿はなかった。


「どこに行ったんでぇ…風呂、か?」


辺りを見渡しつつ、魁斗はつぶやく。


そんな魁斗に背後から忍び寄る者がいた。


気配を絶ち、静か〜に歩み寄る。歩み寄っている人っていうのは桜花なわけだが。


まさに魁斗が探している人物だった。


桜花は魔物に近づくときのように息を殺し気配を絶ち、ジリジリと近づいてきていた。


そして。




ーーーむぎゅっ!!




強く背後から抱きついた。


何にってお兄さんこと魁斗に。背中から思いっきりむぎゅっと思いっきり抱きついた。その顔にはイタズラっ子のような表情を浮かべていた。


何の気配もしなかった。一切の気配を感じなかった。


ユキが昼間に言っていた。桜花や魁斗は中々背後が取れない、と。


これは間違いなく事実であり、2人とも周りの気配に敏感であるがゆえに近づかれれば即座に反応する。獣の如く速度で反応し、回避をはかる。


だからこそ、ユキは2人の背後が取れない。


そんな敏感な魁斗は触れられたその瞬間まで桜花に気がつかなかった。わからなかった。気配を察知することができなかった。触られて初めて存在に気がついた。


「ーーッ!?おっ…うか、ちゃん?」


魁斗は即座に背後の人物を確認し、さらに目を見開く。


ただでさえ、背後を取られ、心臓がバックバックいっているというのに、桜花の姿を確認してさらに心臓が高なった。


口から心臓が飛び出るんじゃないか。それはもう勢いよく飛び出すんじゃないか。


本当にそう感じるくらいには驚いていた。


「へへへぇ〜。昼間、背後を取るって話をしてたでしょ?やってみた!やっぱり出来るもんだよねぇ。ユキは私やお兄さんは出来ないとか言ってたけど。」


魁斗の驚きなんて一切気にすることなく、にぱっと笑みを浮かべて、桜花は驚き惚けている魁斗に話しかける。


桜花だけだ。桜花だから容易く出来たのだ。


魁斗はとっさに思うが、言葉には出さなかった。


高い能力を持ちながら、どこかその自覚に乏しい桜花。自分が容易く出来るならば皆にも容易いと考えるあたりが認識が甘い。


が。


それに対し困っていることもないため、何かをする必要はない。口出しする必要はないため、言葉を飲み込む。


今、1番にすべきことは1つだ。


「桜花ちゃん、この手はやめてくんな?」


モミモミモミ。


ユキの動作を忠実に再現していた桜花は魁斗の胸を揉んでいた。


ユキほど激しくなく、いやらしい動きもしないが、優しい動きで揉まれ続けるのもなんとも言えない気分になる。


しかも、やっているのが桜花だ。


勘弁願いたい。


「ん〜?お兄さんも私もたいして面白いリアクション取れないし、背後を取る意味ないよねぇ。やっぱりやるならマリでしょー。」


魁斗の反応につまらなさそうな顔をして、コテンと頭を傾げる桜花。


リクエスト通り、手はすぐにやめてくれ、というか抱きつくのをやめ、身体が離れて行った。それは少し、いや、かなり寂しい。


手をやめてくれと言わなければ良かったかと思ってしまいそうになる。が、そんなことはお首にも出さず、にぃと笑みを浮かべた。


「そんなこと言ってっと、殴られるぜ?ありゃあ、痛え。」


「確かにー。あれ覚悟で行くってユキは凄いよねぇ。」


「すごいって言うのかぃ?まぁ、良いや。飯、まだだろ?食べに行かないかぃ?」


「おっけー。お腹空いたねぇ。ーーーて、お兄さん?」


「気づかれずには無理でも桜花ちゃんも背後から抱き着けらぁって思ったんでぇ。」


先を進もうとした桜花に後ろから抱きついた魁斗。そのまま顔を肩にうずめた。


気付かれずにやるのは困難。だが、近くにいる時に抱きつくのは容易い。近づこうとしても拒否されることはないのだから。


「出来ない話ではないでしょ。ユキは変な動きで不自然に来るからおかしいんだよ。あれは流石に避ける。」


「そりゃあ、そうか。」


肩を竦める桜花に魁斗は笑う。


ユキは不自然な動きでジリジリと近づいて来るのだ。ゆえに、2人とも即座に視線を向ける。あるいは避ける。


が。


そうでなければ抱きつくくらい容易くできはするのだ。桜花に対してだって。


「え?!あっ!」


「ひゃっ!」


甲高い声が響いた。


桜花と魁斗の姿を見つけたがゆえに上がった声。


確実に勘違いしていることだろう。


当たり前だ。日が落ち、薄暗い中、男女が抱き合っていれば勘違いもしよう。いや、正確には片方が一方的に抱きついているだけだが、勘違いするには十分なのである。


「あ、マリ、カナちゃん。どうしたの、こんなとこで。」


だというのに。


マリも佳那子も真っ赤になっているというのに、桜花は一切気にすることなく、2人に話しかけていた。


「あああ、アンタたちこそ!どど、どどうしたのよ、抱き合って?え?ほ、本当に付き合って…」


「あん?羨ましいのかぃ?桜花ちゃんは俺のだって言っただろぃ?」


あからさまに動揺して見せたマリに魁斗はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべると、桜花の頬に口付けた。


わざとらしく、チュッと。


「ふっ!ふしだらよーーーーっ!!!」


ボンっ!!


顔から火が出るかと思うくらいに一気にマリは顔を赤らめた。そして、叫びながら走り去っていった。


「あらー…走って行っちゃった。純情だねぇ。」


走り去るマリを見つめつつ、桜花は苦笑を浮かべていた。


当の本人が、マリの反応に苦笑を浮かべるのみ。


マリの反応は予想ないだ。桜花の反応とて予想通りではある。あぁ、やっぱりと思う。


だが、納得できるかどうかとなればまた違う話だ。


「桜花ちゃんも、少しは反応してくれて良いんだぜ?」


気に入らないというように拗ねた様子で魁斗は桜花を見る。


マリほどまでとは言わないが、多少は反応して欲しい。


せめて。


せめて、耳を赤くして、多少の意識はしているって言うのを見たい。平気なフリを装いつつ、内心動揺して耳だけは赤いとか、そんな様子が見たい。


「んん?何が?」


きょとんとした顔で聞き返される事は希望していない。桜花らしくて笑えてはくるが。


可愛い反応を見てみたい。


はたして、どう接したら赤くなったりの反応をしてくれるのだろうか。


「…………なんでもねぇ。飯ぃ行こうぜ。」


とりあえず、今は諦め、ついでに抱きつくのもやめ、魁斗は桜花の手を握る。


「あ、あの…お、お2人は付き合っているんですか?」


その場に残っていた佳那子。マリほどではないが、顔をあからめさせていた。


戸惑いを隠せない様子で、桜花や魁斗を上目遣いでチラチラ見つつ、質問する。


慌てた様子がどうにも可愛らしい。オドオドした小動物を思わせる可愛らしさがある。


こちらもこちらで初心な反応だった。


マリほど激しさはなく、だけど、女の子らしく恥じらいもじもじする様は見ていてほんわかしてくる。


「いやいや。ないよ。私がイケメンと付き合えるわけがないでしょぉ。昼間に言ってた背後から抱き着けるかってのを検証してたの。」


「え?じゃあ…」


ハッキリと言い切る桜花に佳那子は頭を傾げた。


見るからに魁斗は……だが、桜花は言い切った。どう言うことかと、佳那子は戸惑いを隠せない様子で桜花を見ていた。


「私の背後が取れないとか言ってたけどユキみたく怪しい動きでこなけりゃ、だきつけるよねぇ。ほら、かんたーん。」


佳那子の戸惑いを知ってか知らずか。


桜花は魁斗の手を離すと佳那子に正面から抱きついてきた。


「………え、と…そうですね。」


抱きつかれて、より顔を赤らめさせ、恥ずかしそうにしつつも、佳那子は桜花の言葉を大人しく肯定していた。


「正面から行くのはナシなんじゃねぇのかぃ?」


「んん?カナちゃんに背後から忍び寄って揉みしだけと…お兄さんのエッチ〜。てか、可愛いカナちゃんにそんなことできないでしょ!」


「えっ?!」


「俺にはやったけどな。」


「え?!」


「お兄さんはありー。揉みまくり〜。」


「えっ?!」


「そぉかぃ。まぁ良いけどよ。桜花ちゃんならどこ触ったって良いぜ?」


「えッ!」


全ての"え"は佳那子の声であり、同じ一字でありながらも様々なバリエーションで発し、いちいち2人の会話に反応していた。


交互に2人の顔を見ながらリアクションしている。


表情が変わる様が可愛らしくて、桜花はにぃーっと笑みを浮かべると佳那子の頭を優しく撫でる。


からかわれていたのかと、佳那子が頬を膨らませれば、桜花はますます笑みを深める。愛おしいと言わんばかりの笑みだが、佳那子にとっては面白くない。むぅ〜と抗議の視線を向ける。


「ほら、行こうぜ。」


楽しそうに佳那子に夢中になっている桜花を佳那子から引き剥がしたのは魁斗だった。


腕を引き、何度目かの食事の誘いをする。


「だねぇ。…カナちゃん達はどうしたの?」


「え…えと…桜花さんがここにいるだろうって話になりまして。マリさんと晩ご飯のお誘いに来たんです。」


「そかそかぁ〜。じゃ、ご飯へゴー!」


「はい!」


結局、2人の関係はモヤモヤするが。マイペースに話を進める2人の様子に口を挟む余裕はなく。


佳那子は桜花と魁斗に関して考えることを放棄し、とりあえずうなずいたのだった。


今はとにかく、マリを見つけて宥めねば、と。


そちらに意識を向けることとした。


今日も今日とて、佳那子のスルースキルが磨かれていく。



読んでいただき、ありがとうございます^ ^


スルースキルって大切ですよね。

私も時々発動させます。

聞いていないだけっていうこともありますが。

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