50.武器師達の放課後です①
ワクワク学園には数多くの教室がある。戦闘員達が鍛えるに困らないだけの設備があった。その中には武器師愛用の部屋も当然、存在する。
武器製造のために使われる部屋。
カーン カーン カーン カーン カーン カーン…
というように。
金属音を響かせても、術式を使用することで材料を熱し部屋を灼熱の如くしても、武器をどのように加工しても、問題のないような設備を完備した部屋。
主に武器師2人しか使用しないため、2人の作業場として、2人の私物も置かれていた。まぁぶっちゃけるならば2人の武器師が好き勝手使っていたわけだ。
「……ねぇ?」
授業が終了し、他へ寄るでもなく、自室へ行く間も惜しんで作業場に来ていた2人。自室へ行くまでもなく私物が置かれているからこそ出来る芸当である。
授業の終了後すぐにここに向かったから2人は黙々と作業を進めていたわけである。
ふと、結弦が口を開いた。
口を開き紡ぐのは、特に単語やら文やらにはなっていない言葉。ユキに呼びかける声だ。
「何だ?あ、それ取ってくれ。」
結弦に視線を向けることなくユキは返事をする。
キャラは全く違うものの、妙に馬の合う2人。
あれやらそれやらだけで何を指すかが通じるあたりが長年連れ添った夫婦のようだ。短い時しか共にしていないが2人は立派なパートナーになっていた。
そのうち言葉がなくとも無言で意思疎通ができる域まで2人は容易にたどり着くやもしれない。阿吽の呼吸が出来上がりつつあるのだった。
「はい。……今日、あの子がツバサにあげていた弓なんだけど。」
「あぁ!美しかったな!実に興味深かった!!!目を見張るほど細部に至るまで作り込まれていた!!ボクもぜひぜひ手に取り魔力を流してみたい。その細部まで確認したい!」
ユキはパァっと表情を輝かせ、ゆずるのほうを見た。
今日は様々な武器を間近で見ることが出来た。
その武器について、ぜひぜひ語り合いたい。語り尽くしたい。共にこの興奮を共有したい。それができる仲間が目の前にいるのだからこそ、なおさら、それをしたい。
まだまだ見足りない。もっと見たい。見たくてたまらない。もっと武器に触れたい。
そんな興奮がありありと伝わってくる。それくらいにユキは表情を輝かせていた。輝きまくっていた。
「そうね。手にフィットさせるために細かいとこまで工夫された形をしていたわ。魔力を込めてから反応するまでも早かった。」
作業の手を止め、顔を上げたユキに対し、ゆずるは作業を続けたまま、昼間に見た武器を思い出す。出来る限りじっくりと見た武器を。
実に素晴らしいものだった。
まだ、自分には作れぬ代物。到達できていない領域。
だがいつか、我が手から作り出して見せたい代物。いや、必ず作ってみせる、目標の一つ。
「そうだな!必要な魔力量も少なかったように見える!弓矢の数が調整できるのも中々に興味深い。」
「そうよね。……あれ、いくらくらいするのかしら。」
武器に興奮し胸を躍らすと共に、ふと冷静になる。
冷静にならざるを得ない。
今、自分達はワクワク学園にあるものを使い、作業をしている。足りないものは買い足しているが。
武器を作るためには材料が。材料を工面するためには金が必要なのだった。忘れるわけにはいかない世知辛い現実。
桜花の持つものは一級品。安いはずがない。いや、武器師達がテンションを上げてしまう素晴らしい一級品なのだ、むしろ高い。
「……………安くはないだろう。」
苦々しくユキは言う。
欲しいが手に入らない。それはタダではないからこそ。手が出せないだけの金額を誇るからこそ。
だからこそ、金額という概念は切っても切れない。忘れることができない。素晴らしければ素晴らしいほど付いてくる話だ。
「坂崎さんが受け取ったのは値段を知らないからだと思うわ。……志貴さんって何者なのかしら。」
値段を聞けば、ありがとうの一言ではもらえまい。そう、結弦は言う。
桜花にとっては不要な使い古しをあげたに過ぎない。ついつい集めてしまうアイテムをあげたに過ぎない。
とはいえ。
高価であるがゆえに、中々受け取れるものではない。ツバサにしても、谷上にしても。知らぬからこそ、簡単に受け取ったわけだが。
本人らが良しとしているため、ユキもゆずるも茶々を入れることはしなかったが、何とも言い難い光景ではあった。
「武器をたくさん持っていると言っていたからな。実際、しっきーのポーチの中にだって、常に数種類の武器が入っている。それ以外も身体中に武器を装備しているじゃないか。1つ1つじっくり見させて欲しいな。」
話は流れる。欲望のままに。欲望に忠実に。
たしかに。
一つ一つをじっくり見たい。眺めたい。見尽くしたい。
そうゆずるは思い、ユキの言葉にうなずく。
「あんなに武器を持っているのも珍しいけど…たくさんあるからって…簡単にあげちゃうような物じゃないわ。会って間もないっていうのに。」
うなずき、武器に想いを馳せながらもつぶやく。
普通ではない、と。
はたして、多量に武器を有していたならば無償で他者に渡せたか。
ーーー否。
できないだろう。
自分では決してやらぬからこそ、その行動が気になるのだった。
「………しっきーはお人好しなんだろうな。あべべに怒ったのだって、人のためだ。人のために怒り行動するなんて、実に戦闘員というものではないか。ボクはしっきーが好きだぞ?」
「私だって嫌いじゃないわ。」
不快とは思っていない。
印象的で、強烈的で、衝撃的であったからこそ、こうして話題にしてはいるが、不快感はそこにはなかった。
お金に無頓着であるという呆れは少しあるが、単純に凄いと感じる。
そのうち損とかしてしまわないか心配にはなる。
呆れや心配はあっても、妬ましいとか負の感情は抱いてはいない。
「だよな。人のために怒れ、人のためにあれだけの物を惜しみなく渡せる。心優しい奴だって言う証拠だ。ボクには出来ない。だからこそ、ボクはしっきーが好きだ。」
そう。惜しまない。惜しまず出せる。それはゆずるには出来ないからこそ、印象的であったのだ。
いや、桜花にとってはなんて事のないことではあるのだが。武器についてはまた買えば良い。金がないならば、魔物を狩ればすぐに貯まる。それを容易に出来るだけの戦闘力があるのだ。
なんて事はない。ユキやゆずるにとって困難ではあるが、桜花にとってはなんて事のない簡単な話なのだ。
そもそも、不要であるゆえにツバサ達に与えた物だ。使ってなかったからあげた。それだけに過ぎない。
どんなに価値があろうと桜花にとっては使っていない不用品であり、ツバサ達にピッタリだから持ってきたに過ぎない。値段など一切考えてはいない。
「えぇ、そうね。阿部くんを煽ったり、非常識な時もあるけど、良い子なのよね。」
「あぁ!!素敵なボクらの仲間だ!!…そういえば、あのローラースケート、おそらく、改良が必要だよな?」
「そうね。多分、谷上君は練習するでしょうから、その様子を見せてもらいましょう。」
「だな。使い心地を確認しなきゃだな!どう作り替えるか。……ワクワクするな!!」
自分達の仕事だとテンションを上げ、嬉しそうにするユキとゆずる。
これから行う自分達の仕事に胸を躍らせた。
「えぇ、楽しみだわ。あれも相当な物よね。あんな物まで持ってるって本当、志貴さんは凄いわ。」
「しっきーはボクらに比べて遥かに強い。戦闘員として稼いでいたのかもしれないな。あまり金に頓着していない。いろいろ企画外だな。」
「そういう子なんでしょうね。普段、あまり弓を使わないって言ってたじゃない。あまり使わない武器をあれだけ使いこなせるなんて凄いわ。」
ぜひぜひ自分達の作った武器もまた、試しに使ってみてほしい。そして、感想が欲しい。ゆずるは珍しく、テンション高く言う。
読んでいただき、ありがとうございます^ ^
先日、ハムカツカレーを食べました
カツカレーと迷いましたが、薄くて軽めのを想像してハムカツカレーにしたんです
そしたらどういうことでしょう?
カツと変わらないくらいの立派なハムカツが乗っていました
いやはや、立派立派
食べてみてさらにビックリ
肉肉しい
肉くさい
ハムのあのイメージなのに肉らしい
裏切られ感に月姫、呆然です




