48.雨降って地固まりました⑥
ツバサのおかげで、嫌な空気が和らいで、空気が変わりつつあるのだし。
このまま空気を一変しとくかな。変態野郎が何を考えてんだか、空気を最悪にしたからね。
「そ。じゃあ、センシをうまくコントロールするとともにこれの扱いをきわめなよー?力を込めるとこんな感じになる。で、術式を込めてーーーー放つ。」
ツバサに武器の説明をしよう。ツバサに渡した武器を一旦受け取り、力を込めればそれは弓の形と変化を遂げた。
変化した武器を構え、弓を引く動作をすれば矢が現れ、手を離せば、矢は弧を描いて変態野郎の元へと飛んでいく。
本気で攻撃する気ではなかったからかもしれないけど、変態野郎は難なく矢を術式を用いて防いでいた。簡単に防がれるのは少し悔しいね。ムカつくね。続け様に攻撃したくなっちゃうね。
「志貴様?通常、教室での武器の使用は禁止でございますよ?また、ウサに対する攻撃も禁止でございますよ?」
私の攻撃を防ぎつつも変態野郎がこちらに視線を向けて言ってくる。
ツバサを挑発して、鼓舞したのかもしれないけども。鼓舞するために言ったのかもしれないけども。教室内の空気を悪くしたんだから、これくらいの協力くらいしても良しとしときなさいな。
「仕方ないですよ。ツバサにこれをあげるんだけど、使い方を見せてあげなきゃ使えない。打っても問題ないのはあなたくらいですもん。」
ツバサに武器の使い方を見せてあげたかったんだもん。せっかくなら標的を狙って打ちたいんだもん。私、悪くない。
空気だって一変できて一石二鳥で良いではないか。
「ウサを打つのも問題にございますからね?」
「どうせ、怪我などしないではないですか。1発しか打たなかったのですし。ツバサ、これコントロール次第でこうなる。」
今度は矢が放たれる時に矢がいくつも分散されるようにする。そして、今度は狙いを高めにした。
これで広範囲で攻撃可能となる。いくつもの矢は弧を描いて跳び、変態野郎と変態野郎を中心として半径1メートルあたりに降り注いだ。
空から矢が降り注ぐイメージ。いえい。
コントロール次第では攻撃スタイルを変えれるって美点よね。携帯もしやすいし。そういうわけで買った武器だった。
私は銃器の方が好きだけど。だからこそ、あまりにも活躍の機会のない武器となったわけだけど。見た目も素敵だし、欲しかったんだよね。ついつい買っちゃったんだよね。
「はい。これをあげる。これ、術式のコントロールが必須だから頑張って?」
ツバサの席まで術式で武器を飛ばしつつ言えば、パシッとナイスキャッチをしたツバサが嬉しそうに笑い、武器をうっとりと見た。
女性がパートナーから貰った指輪を見つめるかのようにうっとりとしているね。よほど嬉しいみたいだね。喜んでもらえて何よりだよ。
ツバサの前後に座る武器師たちもそれぞれが身を乗り出し、武器を凝視していた。本当、武器のこととなるとキャラが変わるよね、君たち。武器が心底好きだってよくわかるけど。
「うん。ありがと。」
マイペースちゃんは武器師が気にならない様子。ま、武器オタクちゃんたちは気にしなくても本人らで楽しみ完結するからいいだろう。
「武器集めるの好きでいろいろ持ってるんだけど、結局主に使う武器って決まってくるからねぇ。弓も他にもあるけど、とりあえず、それが一番ツバサに合ってると思う。」
「………練習、付き合ってくれる?」
上目遣いでのおねだり攻撃、キタァああああああぁああああああ!!
ゲームとかで言えば、そうそう滅多にはないご褒美スチルよね?
無表情がデフォルメなツバサさんは実に可愛らしい顔をしている。
こんな時に限って普段は仕事しない表情筋がフルに仕事をして、可愛らしい表情を作り上げている。
ギャップですよギャップ萌えですよ!胸キュン必須な場面ですよ。
ツバサが攻略された後のデレ顔だよ、これ。いつの間にか私、ツバサを攻略ーーーなわけあるかーい!!攻略なんてしてない。できるわけがない。そんなスキル私にはないし。
ま、ともあれ。
はい、私の敗北ですよ!完敗ですよ。付き合いますよ、練習くらい。仕方ないなぁ。
「…仕方ないなぁ。良いよー。」
今回のことでツバサに懐かれた気がする。私としてはたいしたことはしてないんだけど…
なんだかツバサは猫みたいだから、猫に思いの外懐かれたような気分になるねぇ。懐かれるぶんには嬉しいから良いのかな。
「ありがと、桜花。」
まぁ、ふわっと笑うツバサは嬉しそうだし、良しとするかな。珍しく表情筋が仕事しとりますなぁ。
「僕らもいつでも付き合いますよっ!!」
はいはーいと手をあげるムラくん。何か、たのしそう。
誘ったらいつでも来てくれそうよね、ムラくん。いや、誘わなくてもいつの間にかいそうだよね。
ムラ君は人好きのする笑みを浮かべてツバサを見ている。
「そうねっ!また、みんなで練習しましょっ!」
ムラ君の元気な言葉ににのっかり笑顔で言うマリ。
また、みんなで青春よろしく練習をすることになるらしいねぇ。
まぁ良いけども。
「………全く。まぁ坂崎様が武器に気づき、武器の名を知れたのです。此度は目を瞑りましょう。しかしながら、ウサへ危害を加えることは禁忌でございますゆえ、心してくださいまし。」
変態野郎はため息まじりに言う。
先ほどまでのハイテンションやら挑発する態度やらがなかったかのようにシュン……と落ち込んだような悲壮感あふれる雰囲気を醸し出していた。
だが。
それに誰も反応せず、皆、それぞれの席に静かに座っていた。
それがいけなかったのか。
いや、それ以外の反応をしてもそれはそれで面倒になっていたはず。
ともなれば、防ぎようのない悲劇であったようにさえ感じる。
そう、これから与えられる苦痛は防ぎようがなかったんだーーー……
「良いですか、皆様方。よぉく聞いてくださいまし。ウサの麗しき声に耳を傾けてくださいまし?良いですね?ぜひぜひ耳を傾けてくださいませ。皆様に聞かれたいがために皆様のために特徴的にと進化いたしましたウサの声にございます。ウサは皆様方のためだけに進化したのであります。ウサはこの美声にて、僭越ながら皆様に語らせていただきますよ?えぇえぇ、ウサは何度も何度もウサの愛する皆様方に口を酸っぱくして申し上げております。僭越ながら申し上げておりますとも。繰り返し申し上げております。ゆえに、実に優秀であらせられます皆様方ならば承知であるとは存じます。存じておりますが、念には念をと言う言葉がございます。ウサは小心者な触れば砕ける繊細な飴細工くらいに繊細な心を持ち合わせておりますからね。石橋も叩いて、おそるおそるとわたるくらいに慎重なのでございます。ゆえに、しつこいかもしれませんが、ウサは今一度、皆様に申し上げておきますよ?今一度ウサの説明に耳を傾けてくださいませ。ウサはウサの美声にて説明いたしますゆえ、お聞きくださいまし。よろしいですか、皆様方。ここ、ワクワク学園におきまして、ウサへの攻撃はもちろん、陰口は禁止にございます。決してやってはならぬ禁忌なのでございます。それはそう…昔ながらの村に伝わるなぜか守り続けられている決まりのような。謎の拘束性があるのでございます。皆様から攻撃を受けること、陰口を言われます状況をウサは捨て置くことはできないのでございます。なぜ、そのような状況を捨て置くことが出来ましょうか?敬愛する皆様方からそのような事をされますウサの気持ちをお考えくださいませ。よぉく、深くお考えくださいませ。思考してくださいませ!皆様から攻撃、陰口を受けますと、ウサの繊細なガラス細工のような心はバッキバキになるのでございます。それはもう見事に砕け散ってしまうのでございますよ。ウサはそれほどまでにか弱く繊細であり、庇護欲そそる麗しく愛おしい心をしているのでございます。あぁっ!!そんなウサの心が砕けちるなど……皆様方のお優しい御心が痛みますでしょう?良いですか?攻撃や陰口はおやめ下さいませ。あとは無視、これも地味に傷つくのでございます。ウサからの猛烈であり、過激であり、熱烈である皆様に対しての愛の表現に対し、皆様方が何のリアクションもなさいませんと、このウサの熱い熱い思いが皆様に伝わっていないのかも知れないと不安に思うのであります。この熱い思いは一方通行なのかもしれないとあり得ない不安に支配され、ガタガタガタガタと情けなくも震える思いとなってしまうのでありますよ。聡く優しく愛おしい皆様方ならば、ウサの思いなど手に取るように分かるとは存じますが、それでも繊細なウサとしましては不安に思ってしまうのです。優しく優しく接していただき、どうぞウサに安心をお与え下さいまし。小動物に関わるがごとく優しく慈悲深くウサに愛をお注ぎくださいませ。あぁ、あとは蔑むような視線、これもいただけません。確かに時にはトキメキますとも。皆様から注目されて、冷たい視線を受ける。あぁっ!至福ッ!!!至福にございます。とてつもなく至福にございますよッ!?全身しびれる思いにございますっ!皆様方に注視していただけますことは、幸せに身が包まれる至福の時でございましょう。それがなくなることは絶望とも表現できることにございます。しかしながら。しかしながらにございますよ、皆様方?それは皆様方にウサが愛されていることを前提としますからこそ、喜びがあるのでございます。分かりますか?もしかしたら、あり得ない話ではありますが、恥ずかしながらもウサは皆様方に嫌われているのかと不安に思うことがあるのでございます。繊細なウサでございますからね。えぇ、えぇ、不安に打ちひしがれ、夜な夜な枕を濡らしているわけにございます。毎夜毎夜ウサの枕はじっとりとしてしまうわけにございます。今や何代目かに変わってしまったウサのまくらにございます。はじめは大いに反応してくださっていた皆様が最近では反応一つしてくださらないのは、もしや、もしやっ!万が一にもないとは思いますが、ウサは皆様に嫌われているのではないかとガクブルしてしまっております。ガックガックのブルブルにございますよ。生まれたての子鹿の如くウサは震えてしまいます。震えてしまっているのでありますよ!ウサギであるというのに子鹿の如く震えようにございますよ!ウサは皆様のご存知の通り繊細な心を持つのでございます。繊細なわけにございますよ!一ミリにも満たない粒で描かれました絵画のように繊細に繊細に扱わなければ壊れてしまうくらいに繊細なのでございます。ゆえにウサの心は美しく、皆様方を魅了するわけでございますが!皆様方を魅了しメロメロにいたしますウサの心は吹けば壊れてしまうくらいに儚いのでございます。また、ウサは寂しいと死んでしまう弱々しさもあわせ持ちます。皆様、ウサは傷ついているのでございますよ?陰口、無視、暴言、暴力、冷たい視線…………全て、禁止でございますからね?ウサは皆様に暖かく優しく構っていただきたいのでございます。かわゆいウサギを愛でるが如く皆様に接していただきたく存じ上げます。分かりますか、皆様方?」
ーーーこの惨劇を防ぐためには変態野郎に一撃入れるしかなかったのかもしれない。情け容赦なく攻撃して変態野郎を地に埋めるべきだったんだ。
いや、本気でそんなことをやったりできないからこそ、こんなことになったんだけどね。
イジイジイジイジ……
梅雨時かっていうようなジメジメした空気を身に纏う変態野郎。それだけで鬱陶しい。だけど、それだけでは止まらない。それだけで済む変態野郎ではない。そんなわけがない。
鬱陶しくも、うざったらしく、面倒な限りを尽くして、変態野郎は言い続ける。
チラッ。チラッ。
視線を向けてはそらして。そんな鬱陶しいこちらに視線を向けつつ、イジイジと人差し指と人差し指をくっつけて指を動かす。視線もその動作も苛立ちを強める他の働きはなかった。あるわけがなかった。苛立ち以外に生み出すものなどあるわけがない。
あぁ、そろそろ、拳で片を付けたい。
結局最後は拳がものを言う気がするよね。
読んでいただき、ありがとうございます!
長々としたセリフ、、、
あれ、何度書き足したことか。どこまでならば許される所行であるかーーー……
はい、許されませんね。悪ふざけって大好きなんですよね。
お付き合いいただき、ありがとうございます。
感謝しかございません。
これが今年初の更新となってしまったのは私すら予想していませんでしたね。
あけましておめでとうございます
今年も更新し続けますゆえ、末長くよろしくお願いします!!




