47.雨降って地固まりました⑤
私に返事をしてすぐに自分の武器に謝り出したお兄さん。まぁ、お兄さんに変な名前って言われて、護衛騎士が物申したのかもしれない。
「そっか。護衛騎士、か。そっかそっか。そうじゃないかとは思ってたけど。護衛騎士かぁ〜。」
お兄さんの武器の名前を知れて少し興奮しちゃう。
会いたかったんだよね、護衛騎士。ちひろにも見せてあげたい。きっと、いや、絶対に喜ぶはず。
「あぁん?知ってんのかよ?」
「桜花ちゃん?」
「ん〜?ひぃみぃつぅ。」
阿部やお兄さんに聞かれるが、話してはあげれなーい。
長い話になるし。
秘密は女を美しく形取るって言うし、秘密さッ!
て、あ。
今の私、かっこいいこと言わなかった?キラーンってなってない?え?あ、うん、ごめん。調子こいたよ。悪かった。私が悪かったよ。
とはいえ、お兄さん達に気になるって言われますが、話しません!口のお堅い秘密主義な桜花さんですよー!
「何でぇ。」
膨れっ面なお兄さんは可愛いんだけどね。キュンってなっちゃうけど、話さないよ?
「気になるなら護衛騎士に聞いたら?ねぇ、護衛騎士?ずっとなぁんにも言わずに、だんまりだったなんて随分と薄情な子だねぇ?」
お兄さん達に肩を竦めつつ、護衛騎士を見つめる。当然、護衛騎士から返答はない。まぁ今の護衛騎士の声は私には聞こえないから仕方ないよね。
お兄さんが知りたいことについては護衛騎士だって知っている事実なんだから護衛騎士に聞けば良い。話してくれるかはお兄さんと護衛騎士の関係次第だろうけど。
うん、頑張れ。本気でその子、口硬いから。
「…………何ともいわねぇ。口数少ない武器でぇ。」
護衛騎士は簡単には話してくれないだろうね。
護衛騎士は名前のように頭硬いし。カッチカチだから。ダイヤモンドみたいな、かた〜い頭しているから。
けど、無口な武器ではないから仲良くなればいろんな話をしてくれるはず!
「ふふふ。対話して絆を深めなよ。有心武器は絆が深い分、大きな力を発揮する。私と私の武器はラブラブな分、強いでしょー?」
簡単にはいかないねー。それなりの対話が必要だよ。だけど、心を通わせば通わすほどに力を発揮できる。やるっきゃないのね。
話をしてくれるかは分からないけど。
今後戦うためには対話は必須。やるっきゃないのだよ。
「すぐに追いついてやらぁ。」
にぃと笑うお兄さん。笑顔が眩しいね。
「ぜってぇ、負けねぇっ!」
腕を振り上げ、頑張るぞーと気合い満点の凶暴顔で見た目で損する阿部。マジ、損だよね。
だって、人殺した事あるだろっていう迫力があるんだよ?そんな度胸は阿部にはないんだろうけど。
「私も。今度は、私が桜花の力になれるように頑張る。」
センシを抱き抱え、宣言するツバサ。メラメラメラーっと目が燃えているね。そこまで恩義を感じなくて良いんだよ?たいしたことなんてしてないんだし。
「私だって負けてないわよっ!!」
私だってと手をあげるマリ。
あらあら、あらあらあらあらアライグマ。うんうん、なんだか良いね。
みんな、やる気ね。良い雰囲気だねぇ。うんうん、良いことだね。頑張るぞーって、これぞ青春って雰囲気だね。
さっきの嫌な雰囲気は消し飛んだね。良かった良かった。
「んんん。私ったら大人気っ!照れちゃうねぇ、チビぃ〜?」
雰囲気が一変したね。お兄さんのおかげだ。マイペースに対話し続けて元々あった嫌な空気を壊すとかさすがだよね。
「にゅぅ〜。」
「素晴らしき友情!!!美しい、美しい限りでございますよっ!!!お互いが高め合う仲間とはありがたきもの。素晴らしいお話にございます!!!」
ひゃっほーっと回り出す変態野郎。チビの声にかぶせるようにして騒ぎ出す。
それは無視して、みんな、自分の席に座りだした。浮かせた腰を下す。
さすがに授業開始時間はとうに過ぎているからね。座り出すなんてみんな、真面目!
無視されるのは仕方ないよね。みんなの雰囲気を悪くしたのは変態野郎なのだし?
「ーーーそれは坂崎様の武器も同様。美しいお話でございます。それはお父上が坂崎様のために作り出したもの。武器師は武器を扱うものを考え武器を生み出すものでございます。使い手が扱うことを前提といたします。」
皆が席に座っていく中、何を思ったのか変態が語り出した。みんなに無視されているなんて気にせず話し出した。
ツバサの話。ツバサの武器の話。
んなの、いらないから授業始めろとか思うけど。構えば構うで面倒だからなぁ。放置が1番かなぁ?放置するしかないよね。
にしても。
やっぱり、というか、まぁ当然ながら把握しているよね。どうやって武器が生まれたか、誰が生み出したか。調べられているよね。
名を呼ばれ、ツバサがピクッと反応していた。
「ーーーしかしながら。」
変態野郎は強調するように言葉を区切った。
それにより再度、教室内に嫌な雰囲気で満たされる。緊張感が溢れる。冷たい空気に満たされる。
空気を変えて、変態野郎は再度話し出す。強調したいであろう話を。
「芸術家が時として生み出す武器は強力であることが多くございますが、使い手がいる事を前提に生み出さないが故に扱いが難しくございます。愛という強い感情があろうと関係ございません。ーーー恐れながら、申し上げますが。今まで通りビビっていては扱える代物ではございませんよ?」
ツバサを挑発せんがための言葉。
そうとしか取れないあからさまな言葉。明らかなまでに喧嘩を売っている。
それにツバサは顔色を変えなかった。まったく持って何も変わらなかった。表情筋は仕事を放棄していた。
が。
「アンタねぇっ!?」
沸点の低い子達は怒りを露わにして武器に手を伸ばしていた。ま、言わずもがな。怒ったのはマリと阿部だ。
まぁ他も不愉快そうに顔を歪めてはいる。なんだけど、2人は他の類を見ないくらいに怒りを露わにしている。
自分の事のように怒るなんてマリも阿部も優しんだからぁ。
にしても。
わざわざ、挑発なんてして。変態野郎はなぁに企んでいるんだか。
一変して、マシになった雰囲気をまた最悪なものにしなくても良くないか?何がしたいんだろうね?せっかく私が空気を和らげるのに成功したというのにね。
まったく、私の苦労を水の泡にしないで欲しいよ。
「マリリン、あべべ、落ち着きたまえ。」
「ムカつくけど、あいつの言う通りよ。扱いきれない武器は身を滅ぼすわ。周りを危険に晒すだけではなく、自分さえも傷つけるわ。」
さっきは不快感をあらわにしていた2人。今も機嫌は悪そう。めっちゃ悪そう。表情筋がしっかりちゃっかり仕事をこなしている。
気に入らないとマジックペンで顔に書かれてあるがごとく、不機嫌であるのは明らかではあるのだけど、一応は冷静でもあるようで。
暴れようとした阿部やマリを止めた。止めれるだけの理性を持っていた。
それは武器に関することであり、一概に変態野郎が言うことが誤りではないからなのかもしれない。間違っていると一蹴りに出来ないからこそ、なおさらむかつくのが心情よな。
「大丈夫。もう、決めたから。この子の使い手になって、立派な戦闘員になる。みんなを支える戦士になる。」
武器師たちに止められ、なおも気に入らないと顔を歪めていた2人にツバサは微笑む。
大丈夫、と。
ツバサの顔を見て、やっと阿部やマリが落ち着いた様子。あ、武器師達の表情も多少は柔らかくなったかな?
読んでいただきまして、ありがとうございました!
連載をはじめてから半年となりましたイエイ
今後ともよろしくお願いします^ ^
これにて今年は終了
次回は来年ですね。




