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45.雨降って地固まりました③

名を呼べば姿を現してくれる。無条件に私ら持ち主に力を貸してくれる味方なのね。名を呼べば来てくれる。


スムーズに喚びたいならば名を知るしかない。


となると、どうしたら名前が知れるかって話に戻るわけだけどね。堂々巡りだねぇ。武器に聞けとしか言えないもの。


「こんせい武器だけでなく、つくも武器もまた、呼べば答えます。遠くに在るつくも武器を喚び出す、ということは出来かねますが、近くにいるならば名を呼ぶことで、武器が自ら使い手の元まで駆けつけてくれるのでございます。名はとても重要なのですよ。志貴様ほど武器と対話し関係作りが出来ていれば名を呼ばずとも武器が駆けつけてくれるようになりますが、それは深い絆があるからこそにございます。」


追加説明を変態野郎がし始めた。


話に夢中になっていた面々は変態野郎が教室内にいたことに気がつかなかったらしく、肩を揺らして驚いていた。


定時になった時点で静かに教室内に入ってきて、うちらの話を聞いていたんだけどね。気づいてなかった子も多い様子。


桜井や谷上は気付いていて、何も言わずに立ってた変態野郎が気になったらしく、チラチラ見てたけど。


他は私の武器やら話やらに釘付けになってて、入ってきた変態野郎に気づかなかった様子。いつ来たんだコイツはと顔に書かれている。


お兄さんは変態野郎に気付いていた上に無視すると決めたらしいけど。教室に変態野郎が入ってきても知らんぷり。


説明は聞いていたようだけど、存在そのものにリアクションを取るつもりはないらしい。


私に視線を向けたままだ。お兄さん、おねだりモード継続中。


「………桜花ちゃん。」


そう、見たいのね。変態野郎は無視するけど、言った内容については気になると。


名を呼べば自ら近づいて来てくれるってとこが気になるのかな?見たいのかな?


私はひょいっと童子をお兄さんの机の上に置いた。


「童子」


呼べば童子は自ら動き、私の手元まで来た。ぴょんっと飛んできた。なになにぃー?って可愛らしく私に寄ってきた。


うんうん、私の武器は今日も素敵に可愛いね。今日も今日とて私は童子が大好きだ!


「つくも武器でもこれが出来るってぇ話か。どんくらいの範囲まで可能なんでぇ?」


自ら動いて見せた童子にみんなが驚きを露わにし、目を輝かせていた。


水族館でペンギン前で釘付けになっている幼児のような純粋無垢な目だね。うんうん、可愛いっちゃ可愛いね。


私の童子のかわいさには劣るけど。


「さぁ。武器によりけりじゃないかな。武器が呼ばれてるって分かれば来てくれるだろうし。ん〜…チビを思い浮かべて?」


チビに窓の外まで行くように目で指示を与えれば、チビは即座に窓から外に降り立っていく。


地をかけ、どんどん私らから離れていく。あっという間に走り抜けていく。


「あの子は私が大好きだから、遠くから呼んでも私の声に反応して寄ってくる。チビと童子ならチビの方が反応が早い。」


小さくなっていくチビを見つつ、話し続けた。もうチビの姿はない。


視覚では確認できないまでに離れた。ま、木々があるから早々に見えなくなっていたのだけれども。


「チビ。」


姿は確認できないくらい離れていたが、チビの名を呼べば、チビは即座に戻ってきた。


瞬く間に戻ってきた。


離れていくときより、こっちに来る方が早かった。


「にゅっ!」


結構離れていてもチビの耳は私の声を拾って私の意思に従う。


実は名を呼ばなくても、チビの場合は、というか私の武器はみんな、念じれば来るんだけどね。


とてつもなく優秀な武器達なのね。私、武器との関係は良好だから。アツアツな仲だから来てぇと念じれば声は届くのね。


「呼ぶ、ねぃ。………名はどうしたら分かるんでぇ?」


「どうしたらって、武器に聞きなよ?」


さっきからずっと言ってるでしょうが。同じことの繰り返しになっとりますよ?


何度名前の聞き方を聞いても同じ返答しかできないし、名前を聞けとしかいえないのだよね。


「………どうやって。」


むぅと唇突き出して拗ねた風の顔してもどうにもならないのだよ?お兄さんや。


どうもこうもないのだよ。


「武器に名前は何ですかって聞けば教えてくれますよ。」


ムラ君が言う。


が。


やはり、伝わらない。頭を傾げ、訝しげな顔をしている。同じことをツバサも言ってたしね。


うーん、どうしたものか。


「童子、名前を教えて?」


私は童子を持ち、語りかける。


すると、童子から返事が来る。童子だよーって。


可愛らしい声で私に返事をしてくれる。これは私にしか聞こえないけど。


「こんな感じに。今、童子は私に自分の名前は童子だよって答えてくれたわけだけど。………ん〜…チビ。お兄さんとたまにお話しする仲でしょ?お兄さんに武器の名前の聞き方、教えてあげて?」


見せてみたとこでわからんか。


頭を傾げている。


武器に魂が宿っているって受け止めて、その存在を認めなきゃ、声は聞こえない。


ただの無機物じゃん。話すわけないじゃん。


なーんて思ってたらダメなんだよねぇ。みんなが出来ない理由はそこにあると思うんだよね。


武器の存在を受け入れてないんじゃないかな。


「にゅぅ〜??……お前、馬鹿なの?武器の名前なんか、自分で聞いたら?自分で聞くしかないじゃん。そんなことに主人の時間割くとか重罪だよ?」


どうにかなるかなぁとチビに話を振ればチビは気に入らないっていう態度丸出しで話し始めた。


もう少し態度を柔らかくして欲しかったのだけど。チビったら私以外には大抵こんな態度なのよなぁ。


「しゃ、しゃべったぁ?!」


話し始めたチビにマリが声を上げた。


マリほどではないものの、阿部達も目を見開き驚いている。


武器師たちは興味深そうにチビを見ているけど。予想出来ていたのかも。そこまで驚いてない。驚くどころか、嬉しそうにしている。


「チビ、やろうと思えば、みんなと意思疎通できるよ。口が悪い上に、私以外が話しかけても大抵無視するけど。師匠達も話しかけたりするけど、大抵無視されてたねぇー。はい、大前提はこれ。武器は意思があって、みんなの武器もしゃべります。うちの子が特別みんなと意思疎通できるってわけじゃなく、使いこなせば私とだってお兄さんの番傘は話してくれるようになる。」


チビは私以外と喋るのに、特別体力使うからやりたがらないんだよね。私との意思疎通が出来れば良いやって感じみたい。


基本、有心武器が心を砕くのは持ち主だ。持ち主に望まれたとか持ち主のためだからとか、そういう理由がなければ持ち主以外には関わらない。まぁ、例外がないかと言われたら、ないとは言い切れないのは事実だけどね。


お兄さんにチビが関わるのだって私が望んだから。私のためならチビは動くのね。


逆に言えばそうでなければ動かない。


たとえ、お兄さんが目の前で死にそうになっていても私が望まないならば、チビはお兄さんを助けない。私がお兄さん達が傷付くのを嫌がるから、助けようとするだけで、そうでなければ見捨てるんだよね。


「……自分で聞くってどうするんでぇ?」


チビと意思疎通をたまにしているお兄さんは驚くわけでもなく、チビに質問していた。


「は?主人が何度だって言ってるじゃん。馬鹿なの?知ってたけど、馬鹿だよね、お前。僕に今、そうやって質問してるよね?同じようにソイツに名前は何って聞くだけでしょ。お前がソイツの声に耳を傾ければわかる話じゃん。」


チビは苛々しげにお兄さんを見ている。


うんうん。


チビもまた、説明下手よね。


私と一緒でどうして名前が聞けないか分からないものね。


「……番傘に?」


「お前、ソイツに意志があるって分かってるの?ソイツ、ずっとお前に呼びかけてるよ。それ、無視してるのお前でしょ。無機物じゃなく、そこにソイツはいるって認識してる?無機物だって思って話すわけないと思ってたら声は聞こえない。主人に名前聞くようなつもりで、ソイツに話しかけてみれば?」


「………………………俺ぁ、魁斗でぇ。お前さんは?」


数秒間、チビを見つめていたお兄さんは番傘を手に取ると話しかけ始めた。


行動に移るのが早いねぇ。素直なのも良きかな良きかな。このまま名前が聞けたら良いんだけど。


「フンっ。しっかりソイツと対話して能力使いこなしてね。主人のためにキビキビ働いてもらわないと割りに合わない。」


ケッとでも言いたげなチビさん。


「チービー?」


さすがに態度が悪いよ?


叱っちゃうよ?


悪い子にはメッするよ?


「にゅっ!」


プイッじゃないでしょ、プイッじゃ。反省する気はないね?


まったくもぅ!


少しは行儀良く言葉改めなさいな!


「まったくぅ〜。お兄さん、ごめんね?チビ、口が悪くて。」


「…………いや、大丈夫でぇ。ありがとさん、チビ。」


声をかければ反応もするし、チビにお礼も言うけど、視線は番傘に向いたままだ。


今もなお、対話を試みているのだろうね。ファイト、お兄さん。


難しくはないから、きっと出来るはず!



童子いわく、

"僕らだって、大好きだよぉ?ただ、チビが異常なだけぇ!"

その言葉はスルーされたわけです。

喚ばずともやってくる奴はそもそも異常ですからね。


読んでいただき、ありがとうございます^_^

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