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44.雨降って地固まりました②

ツバサに見せたのは、買ったは良いけどあまり使わないやつ()。使えはするけど、私自身が弓を戦闘時に選択する事ってあまりないからね。


でも、ついつい買っちゃうの。店で眺めていると欲しくなっちゃうの。集めたくなっちゃうの。


ツバサに見せたのは普段は閉じた扇子のようなサイズの棒切れだ。魔力を込めると魔力に覆われ、弓の形になる。弓矢も魔力で補える。持ち運びに便利な分、魔力を消費するタイプ。


魔力の多いツバサなら何とかなるっしょ。


「………良いの?」


ツバサに見せた弓を見て、ツバサは目を輝かせた。プレゼントを目の前にした幼児のように目を輝かせた。


餌を目の前にしたデブ猫のように興奮ーーーいや、あそこまでのテンションはツバサにはないな。静かに喜んでいる。


弓を武器にしたいだろうにツバサは武器すら持ってないからね。さすがに武器くらいは持っててくれないと。


「弓、私は使わないからねぇ。ただし、それは自分の力を矢として打つやつだから、術式のコントロール必要よー。銃が良いなら銃をあげても良いけど。」


慣れない武器はおすすめしないけど、希望があればそってあげましょう。


使ってない武器なら結構あるし。大抵何でもあるし。武器屋かってくらい持ってるし。


何だったら、この場では誰よりも武器持ってるし。暗器までしっかり取り揃えているし。作れないけど売るほどある。売らないけど。


「弓が良い。ありがと。」


目をキラキラさせ、嬉しそうにツバサは言う。


あまり表情は変わらないけども。ツバサにとってはテンションMAXなんだろうね。


マリとかほど激しい感情はしてないから分かりにくいけど。


「どういたしまして。」


喜んでもらえて何より。


「なぁ!どうやって名前を聞いたんだ?」


ツバサが私から武器を受け取るより先に阿部が動いた。


阿部は真剣な表情でツバサに聞いているね。


武器を名残惜しそうにチラッと見つつ、ツバサは阿部を見た。


「えっと…名前何って聞いた。」


「あん?」


ツバサが戸惑いつつも、返事をすると阿部はその返答が気に入らなかったらしく、顔を歪める。


ま、いわゆるガン飛ばしっすな。


喧嘩売るわけでもないのに無駄に飛ばすのがデフォルメな阿部なのですよ。そんなデフォルメ治せってな。


ツバサの動揺値が上がっている。ツバサ、はじめは無反応だったのに、阿部にかばわれて阿部が怪我したくらいから、阿部の反応に若干反応が良いんだよね。良いというか、阿部の反応やら言動に敏感というか。後ろめたさからとかだろうけど。


気づけよ、馬鹿ヤンキー。少しは気ぃ使えや。なぁんて、思わなくもない。


「こらこら。ヤンキーくんは簡単に人に絡む癖をどうにかしたらぁ?」


「あんだと、こらぁ!?」


軽いノリで声をかけ、ツバサから少し距離を取らせれば、阿部は私を睨むように見て、声を荒げた。


一応、これ、なんだよと視線を私に向けてきたっていうだけの動作らしい。多分おそらくきっと。絡む気はないらしい。


怒ってもなければ睨んでもない。つもりらしい、本人は。


言動なおせよ、ヤンキーって思わなくもない。いや、少しは言動改めろって思うよね。コイツ、勘違いされて友達絶対少ないタイプだよね。


前に実は良い子なんですって、ムラ君が語ってた。語られてた。悪気はない良い子なんですって。気づくムラ君が凄い。


「そういうとこだよー?有心武器は名の通り心がある。そこに魂が宿っているんだよ。その魂の声を聞いてやれるのは使い手のみ。ま、私とチビはラブラブだから必要であればチビの声はみんなに届くけどー。」


阿部の言動は言ってもどうにもならないだろうし。


今は武器の説明をしとくか。


「にゅぅ♪」


「何が言いてぇんだよ?」


私の言いたいことは全く伝わらなかったらしく、怪訝そうに顔面を歪めた。凶暴な鬼のような顔面になっている。幼子には見せられないね。


カナちゃんは阿部に慣れないのか、青い顔している。なんなら、ビビっているね。


イライラしているようにしか見えないからね、阿部。


そんな凶悪な顔面を真ん前にしてもうちの子はびびることすらなく、尻尾を揺らしている。阿部なんて意識すらしてないんだろうけど。


「そこに魂があるって認めてその存在を受け入れなきゃ声は聞こえないって話。無機物ではなく、魂の宿った生き物として。人間に接するように接しなきゃダメダメぇ。」


だから、名前を聞けないんだよ。


そう話してみても、名前を聞けていない面々はよく分からないって顔をしている。


こりゃしばらく、名前は聞けないままだろうね。


「チビは桜花ちゃんの護獣なんだよな?」


お兄さんがチビを見つつ、聞いてきた。


今更な質問だねぇ。


「ん〜?そうだよー。」


「桜花ちゃんの武器は何なんでぇ?有心武器が他にあるわけだろ。」


目をキラキラさせているね、お兄さん?


静観していたユキやゆずるんまで気になるとこちらに視線を向けてくる。顔に気になる、見たいと書かれているね。


いや。


みんな気になるらしく、私に視線を向けているね。私の武器なんか、そんなに気になるものかねー?みんなの前では一切使ってないのは確かだけどー。


「刀かなー。」


「見せてくれないんでぇ?」


お兄さん。


甘えん坊モードに入っております。


なかなかの破壊力です。私、桜花では太刀打ちできそうにありません。


クッ!顔面偏差値が高い奴らって何でこうもおねだりとかがうまいの?やっぱり、顔面偏差値高いのってお得だね!!


私程度に太刀打ちできるわけがないじゃないの!普通の普通な顔立ちの私が負けるに決まってる!


「………………お兄さん、見たいの?」


せめてもの抵抗のためにお兄さんを見上げてみれば、お兄さんはにっこりと綺麗な笑みを浮かべた。


あぁ、これは勝てないやつだと実感してしまう綺麗な笑み。いや、勝ち負けなんてものはないんだけどね。


「見たい。」


ハッキリとおねだりされました。


お兄さんは自分を偽ることなく、素直にはっきりと主張するね。


そういうとこも大好きだけどね?


注目されるの、得意じゃないんだよなぁ。ま、仕方ないか。


「………"童子"」


名を呼べば童子はすぐに姿をあらわす。


二本の刀。私の私だけの武器。私のこんせい武器。見せたくないわけではないけど、使う機会がないからなぁ。


「それは双刀かぃ??」


「2つでワンセットなのね。」


「綺麗なフォルムだな!」


「刃は片側なのね。日本刀みたいな感じかしら?」


「刃が細いが鋭い。引いて切るのだろう!美しいな!!ほうっ!!実に美しい!!!細いフォルムだというのに、丈夫そうだな?」


「そうね。簡単に折れそうにないわ。材料はーーこんせい武器、だものね。」


「あぁ!再現は不可能だ!魂から生まれる武器!中々に興味深い!!!ちなみに能力は何なんだ?」


武器師たちよ。


迫らないでくれたまえ。じーっと武器を見ていたお兄さんを押し除けそうな勢いで武器師達がやってきた。


有心武器はたしかに珍しい。


けれども、この教室内だと半数が持っているはず。そこまで珍しくもなかろうて。


だから、そんなに迫ってこなくて良くない?迫られても困るんだけど。


「ひ、み、つ!」


能力は教えません!!


そんな残念そうに顔を歪めても教えません!秘密にございます!


チート能力は隠すに限る!


「どうやったら、そんなにスムーズに召喚できる??」


んん?


阿部、さっきから真面目だね?真剣だね?授業中、あくびしながら座っているか、寝てるかの君らしくない。いつになく、真剣だね?


阿部は武器をスムーズに呼べないみたいだ。名前もわからないんじゃ、仕方ない。


それを真摯に受け止めているんだね?どうにかしたいと考えているんだね?


けど、どちらの悩みも私には共感もできないし、解決案は出せないよ?どうやったら息が吸える?って聞いているくらい分からないもの。


「…………阿部は武器をどうやって喚ぶの?」


とはいえ、とりあえず現状を確認するか。


現状を知らなきゃ対処の方法も分からない。


「あん?………うらぁああああああ!!」


出でよ魔剣!!的なノリかえ?


手を前に出して叫ぶ姿は異様だ。


数秒間、力の限り叫んで叫んで叫んでを続けた阿部の前にポンッとバットが姿を表す。


ここまで時間がかかるから、戦闘時に使えないのか。携帯してれば良いって話だけど、こんせい武器って、意識して出すようにしてなければ意識がなくなった瞬間、消えるんだよね。


つまり、寝たら勝手に消える。訓練すれば出し続けることもできるんだけど。


喚ぶのもこれでは出し続けるのも難しいか。


だったら、毎朝、喚んで持ち続ければ良いのにとか思っちゃったりはするけども。


鉄パイプなんかよりはずっと強力な武器なのだし。


「ハァハァハァ。こう、だ。」


阿部ほ喚び出した武器を杖のようにして自分の身体を支えつつ、私の方を見た。


武器を喚び出しただけ。


ただそれだけだ。阿部は他に何もしていない。


だというのに息が切れてしまっている。こりゃあ、戦いには使えんわ。毎回、息を切らしてたら困っちゃう。


私と阿部が会話中だからか、阿部の武器に食いついた武器師達は2人で興奮しながら話をしている。


私達の邪魔にならないように小声で、それでいて興奮状態。うん、変態野郎と肩を並べる変態さ。


「………そう。意志を持ち、名を持つ子達なわけだからね。名を呼べば姿をあらわすよ?」


武器師達は無視して話を続ける。


阿部の疑問って簡単な話だよね。



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