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42.眠れない夜もあります④

今、気に食わない相手が、自分の大好きな相手の事を語っている。それもまた、魁斗には気に食わなかった。


しかも、相手が何が言いたいかも理解できない。サッパリ分からない。馬鹿にしているのかとしか考えられない。いっそ、殴った方が早いが、相手の実力が自分より高い事実があるから苛立ちも募る。


ワクワク学園に来てから、桜花やチビに付き合ってもらって鍛えているが。そんなすぐに向上するわけもなく。


まだまだ実力差がある。あぁ、気に食わない。


「が。」


いつ攻撃に転じようかと身構えている魁斗の様子には、やはり一切の反応を示さず、ウサは頭をコテンとかしげ、動きを止め、言葉を区切った。


そして。


「戦闘力はあっても、一番強いとは言えません。」


ウサはこれでもかというほどに、はっきりと断言した。


当たり前のようにはっきりと。他の事実など存在しないと強く断言するように。


普段、ふざけた言動ばかりのふざけた野郎がそのキャラを潜め、静かに語る。


「アン?」


当然、ウサの言い分が気に入らず。気にいるわけもなく。


ついつい、魁斗はガンを飛ばしていた。眉間にシワを寄せ、分かりやすいくらいに気に入らないということを前面に押し出していた。


ここまで低い声が出たかと驚くくらいに低い声が出た。


「志貴様は最も弱くいらっしゃいますよ。貴方様よりも遥かに弱い。」


なぁに言ってんだ、この野郎。そんな魁斗の視線を気にするわけもなく、ウサはなおも持論を展開させていく。


話し続ける続ける。


その様は凄く気に入らない。ギリィッと音が出てしまいそうなほどに魁斗の体に力がこもる。


「志貴様は魔物を倒すという点では最も優れている。ですが。生きていく上では1番弱くいらっしゃる。何でしたら、武器師や治療師よりも、弱い方にございましょう。ーーー納得できかねますか?」


一度、言葉を区切り、魁斗に視線をしっかりと向け、問いかけてくる。


納得できない。彼女は遥かに強い。自分なんかよりも強い。


っていうのが魁斗の回答であるゆえ。問いかけられても、ウサを睨むだけだが。


だが、そう容易には答えられず、考えさせられてしまう。弱いとされるのはどういうことなのか。なぜ、そう言われてしまうのか。


気に入らないながらも桜花に視線を向けた。今もなお、1人で舞っている桜花。


「あの方がこうしてここにいるという事実がそれが真実であると物語っているのでございますが。こうして志貴様がここにいるのはーーーっと。」


自身を睨むつける魁斗に話し続けていたウサはふと、言葉を切り、言葉を切る原因となった者への対応に当たった。


それはさっきまで舞っていた人物。今まさに魁斗が見ていた人物。


「なぁに話してるの〜?はじめちゃん?お兄さんをいじめたら承知しないよ?」


いつの間にやら距離を詰めていた桜花。いつの間にやらすぐそばまで来ていた。見ていたというのに、気づかぬ間にそばにいた。


音も気配もなかったように魁斗には感じられた。一瞬の出来事だった。視線を向けていた。向けていたのに、何が起きたか、理解がすぐに出来なかった。


だが、ウサは桜花の動きに気がついており、桜花からの攻撃を難なく防いでいた。


舞に使っていた扇を使って情け容赦なくぶっ叩きにかかった桜花。て、殺傷力を持っていそうではあるが本当に扇子で攻撃するのか。アニメとかにありそうだな。


それは武器か。扇子はひょっとして武器なのか。では、桜花は今まで武器を使って舞っていたのか。それは剣舞的なノリか。


だなんて、ツッコミは誰もせず。この場にはツッコミが不在だった。


この場において、ツッコミの役割を果たせるのは魁斗なわけだが。魁斗は目を見開き、動けずにいた。


桜花の動きが魁斗には全く見えなかった。残像すら追えなかった。


気がついたら、桜花がいて。気がついたら、桜花が攻撃に転じており。気がついたら、それをウサが防いでいた。


そう、まるで桜花が瞬間移動したかのように魁斗には感じられていた。


いつ扇子を閉じたのかさえ分からない。サッパリ分からない。


そんなふうに全く目で追えなかったが、当の本人らはまったく大変な事をしたという風でもなく、ちょいと手を上げ振った程度の動きと、そう相違ない程度の動きをしたくらいのつもりだろう。


本気で攻撃をしたわけでも、本気で防御に転じたわけでもない。ただただ、軽くじゃれあっただけ。


魁斗にとってはものすごい事だが、2人にとってはそうではない。そう痛いほどに思い知らされた。それが何とも悔しくて胸の中がぐっちゃぐちゃでなんとも言えない気分に魁斗は襲われていた。


ゆえに上手く思考が働かず、フリーズしていた。


「志貴様?お寝ぼけさんにございますね。私は貴方様の愛しのウサにございます。私達の事はカイしゃん、ウサしゃんとお呼びくださいまし。」


桜花からの攻撃を難なく防ぎつつ、普段のふざけたノリでウサは言う。


なぜ、魁斗の呼び方まで指定しているのか。いや、そもそも誰がウサしゃんなどと呼ぶか、気色が悪い。


まったくもって意味が分からない。


「もうっ!カイしゃんはウサしゃんにいじめられてない?大丈夫?もぉ〜っ!ウサしゃんなんかに近づいちゃダメだよ?悪いもの感染しちゃうよ?」


桜花はウサのそばで呆然としていた魁斗のそばに近づくと、魁斗の顔を覗き込み心配そうに話しかけてくる。


いつもならばお兄さんと呼ぶところだが、ウサの言葉に乗っかったらしく、変わった、というかふざけた呼び方をしている。


いったいどうして、素直に従ってしまうのか。


ノリの良さにウサと話した事で湧き上がった嫌な気持ちが吹き飛ばされる。綺麗サッパリとまではいかないまでも、結構しっかり嫌な気分は吹き飛ばされていた。


「……あ…あんな変態の言葉に乗るなんざ、しなくて良いんだぜ?」


表情は硬いまま。けど、何とか桜花に返答する。返答できた。


返答できるくらいまでには回復した。


「お兄さんだって、こんな夜中に変態に近づいたらダメだよ?穢されちゃうよ?汚されちゃうよ?やだやだ、下手すると変態が感染するよ?変態になりたくないでしょー。まったくぅ〜。」


歪な動きをし、表情も硬い魁斗に桜花は頬を膨らました。


ウサからすれば散々な言われようだ。まぁ、本人は一切気にしないだろうが。いや、逆に至福に身を震わすかもしれない。


だからこそ、そんなようなことを言われているわけだが。


「そりゃあ、こっちのセリフでぇ。俺ぁ、桜花ちゃんが変態と話す姿を見て来たんだぜ?変なもんがうつっちゃあ、いないかぃ?」


いつも通りの桜花の様子に魁斗の緊張は少し解され、いつもの調子を取り戻しつつ、魁斗は桜花を心配そうに見つめる。


「私は大丈夫〜。」


魁斗がいつもの調子に戻りつつある様子を見て、フッと力が抜けたような笑みを浮かべつつ、桜花は言った。


にぃ〜と笑う桜花の頭を魁斗は撫でる。


「念のために消毒するかぃ?」


アルコール消毒でもしとくか、と魁斗はなおも言う。


「誰が変態ですか。全く、失礼にございますね。ひしひしとお2人からの私への愛を感じておりますよ!お2人とも素直じゃないのはよく存じ上げておりますから!」


ぷんぷんと効果音がつきそうなわざとらしい怒り方をしていたと思えば、キャッ☆とでも言う効果音が聞こえてきそうなくねくねした動きをしつつ、もぅっお二方は恥ずかしがり屋なんでございますからぁと言う。


どこからどうみても変質者だった。


夜中に燕尾服着てウサギの面をかぶって、変声機を使って声を変えた男がおかまか何かのようにクネクネ身を動かしていたら。


ドン引き必須だ。


で、あるというのに、桜花はまったくリアクションせずに魁斗を見上げた。


そして、手を自然に掴んでくる。


それだけでときめいて、変態など忘れるというのに桜花は更なる爆弾を投下した。


「ほら。お兄さん、行くよ。………布団持ってくからお兄さんの部屋で寝ていー?」


ーーードキン。


一瞬何を言われたか理解出来ずにフリーズした。


が。


すぐに思考は動き出す。


強制的に動かされた。


気に食わない()によって。


「不順異性交遊は基本的に禁止としております。くれぐれも志貴様にいかがわしいことは致しませんよう、ウサはくれぐれもご忠告申し上げます。ベッドを共にできます事は……ドンマイと言っておきましょうか。」


ススっと魁斗のそばに寄ったウサ。魁斗にのみ聞こえる程度の声でささやいた。それによって、気に食わないが思考は動き出す。


ウサにはいつものふざけた雰囲気はなく、真面目にささやく声に魁斗は片眉を上げた。


先ほどの話に加え、桜花を止めず、ふざけたりもしない。


そんな様子が気持ち悪くてならない。


というか、ドンマイとはなんだ、ドンマイとは。いや、分からなくもないが、ウサには言われたくないと魁斗は思う。


「え?何て?」


きょとんとするのは桜花だ。


頭を傾げてウサを見上げている。


「いえいえ。ゆっくりお休みくださいませ、志貴様。ごゆるりとお眠りくださいまし。」


ウサは自分を見つめる桜花に対して恭しく礼をして見せるのみで、桜花の疑問に答える気など一切ないようだった。答える気などないと態度に示していた。


それに対して、桜花はスッと目を細め、ウサを見たが、すぐに考えを読むのをやめ、気に入らないと言うような表情を作って見せた。


「え〜?まぁいっか。おやすみなさい。………チビで寝れば良いから布団、良いか。」


「にゅぅ。」


桜花が視線を向ければ、チビは嬉しそうに鳴いた。


この武器、布団になることすら厭わないらしい。どれだけ主人が好きなんだ。主人のそばにいれればそれで良いのか。どんな武器だ。


魂が宿っている武器とはいえ、本来の使い方をされたいはずだというのは他者の思い込みなのか。


「本当に俺の部屋に来るのかぃ?」


「いえっさー!え…嫌ぁ〜?」


魁斗に聞かれ、元気よく答えたが、すぐに不安そうに魁斗を見上げる。


そんな姿に魁斗は苦笑を浮かべた。彼女に頼まれて嫌だと言えるはずがない。言えるわけがなかった。


「別に構わねぇよ。ベッドで一緒に寝てやらぁ。」


「ん。ありがと。」


冗談半分で言えば、微笑まれてしまい、固まってしまったのは秘密。


チビが頭突きしてきてくれたおかげで我に返り、歩き出せたことに関しては、チビに感謝。


先ほどの変態野郎の言ってきた言葉のせいで、なんとなく言葉を吐いてしまって今に至る、というか、同じベッドで寝ることになったという事実は頭から抹消しておこう。


アイツの言動に左右されただなんて認めない。認めず、抹消。抹消すべき。


「"僕も一緒だからな?"」


チビが語りかけてきて、緊張やら何やらが少しは解れた。ぽんぽんと頭を撫でれば気に食わないというようにチビは鳴く。


さてさて。


夜はまだまだ続く。


読んでいただきありがとうございました^_^


まだまだ夜は続くわけですよ

ま、寝るだけですけどね


私は1人で寝るのが好きです

布団の中が一番いろいろ考えられるというか、布団から離れたくないです

最近は特に

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