40.眠れない夜もあります②
やっほー!私、桜花!地味に疲れているのに眠れなくて夜の校舎を徘徊してるとこを変態さんに捕まってあら大変!私、どうなっちゃうの〜っ!的な状況にいる桜花さんだよ。
いやぁ。実に疲れているみたいだよ。私。
本当に心底、疲れているのかもしれない。地味に昼のやつ、キツかったからかな。いや、全部言い訳だけどさ。どうしても愚痴が止まらなかった。
いやはや、かっこ悪いなぁ、私。昼間のツバサとの話、結構ブーメランになって自分自身傷ついてたりするんよなぁ。あー…しんどい。
しんどさMAX。もう当にてっぺん超えとります。許了量、オーバーオーバー。闇に向かって叫びたい。夜道を自転車やら何やらで爆走しつつ思いっきり大きな声で爆唱したい。無心に歌いたい。
ま、そんなことが出来る場所じゃないのだけど。
「ねぇ、はじめちゃん。」
「………私のことは親しみを込めてウサとお呼びくださいまし。」
うん、それは良いから。
ここには私とはじめちゃんしかいないんだから。
話は聞いてくれているのが分かったから良いけど。
「はじめちゃんはさぁ、化け物って罵られたり怯えられたりしたことーーーあるわけないか。はじめちゃん、強くないもんね。」
からかうように笑いかけつつ言えば、はじめちゃんは肩をすくめた。否定はしない。そんな態度だった。
そんな返答だけれども、その動きが私のよく知るはじめちゃんだった。既視感がある。
変態野郎こと、ウサは私が知っている戦闘員だ。いや、元戦闘員、か。今は非戦闘員だし。まぁともかくとして過去に共に依頼をこなしたこともある。
苦楽を共にし、魔物達に対して共に戦った戦友なわけだ。今はふざけたキャラに身を包んでいるわけだが、本来の彼、はじめちゃんは真面目な石頭だ。
真面目な石頭がどう迷走したらあんなふざけたキャラになるかは定かじゃない。
というか、何か知りたくない。知りたくないよね。知っても火傷する未来しか想像できない。
深層心理にあんなキャラ抱えていたとか変身願望があったとか変なものが引けてきそうだし知って徳はなさそうだもの。変なものを引き当てたら困るからね。
まぁともかく。
はじめちゃんは、決して弱くはない。弱いわけではない。戦闘員として活躍できるくらいには実力がある。
何だったらここに集められた子達より遥かに強い。でも、私から見るとそこまで強くはない。何だったら本気で戦えば私が勝てる。
私にとって強いは師匠達であって、戦闘員のトップだからね。はじめちゃんじゃあ、かなわないよね。
はじめちゃんは非戦闘員からすれば化け物かもしれないけど、抜きん出て優れているわけじゃないから矛先は向けられないはず。
「私、化け物って怯えられたことがあるの。まぁ、実際、そうだよね。私が出来る事って魔物とあまり変わりはないから。人間には見えなかったんだってさ。まぁ確かに人間じゃあないよなぁ。」
私も戦闘員の中ならば抜きん出ているわけじゃあない。師匠達のほうがはるかにすごい。比べ物にもならない。
けど。
同世代の子達を集めればやはり、私は抜きん出ているんだよね。戦闘という項目において、私は天才だから。いろいろと秀でているわけだよ。
とにかく、ずば抜けた天才なわけよ。ドャァ。
有心武器を複数保持して、かなりの術式を使いこなす時点で、ずば抜けているわけよ。しかも所有する有心武器は全てが戦闘特化型で単体でもかなりの攻撃力を誇るわけよ。
それを使いこなせちゃう天才児な訳よ、桜花さんは。とにかく凄いチートなの。ドヤっ!
「怖がられないようにあろうと思ってたけど。そうやって自分を隠して生きるのは、ありたい姿でもなければ美しくもない。……昼間の言葉がブーメランになって襲いかかってくるよ〜。」
昼間にツバサにえらそうに話したけども。一方的に話しまくってたわけだけど。
私も一度立ち止まって今一度自分自身を見直す必要がある。あるんだよなぁ。
あれ、ツバサに話していたようで、自分に話していたような気もしなくもない。どんな痛い子やねん。
「……どのような形であるにしろ、志貴様が選択された道ならばウサは否定致しません。全面的に肯定し、必ずや志貴様のそばで志貴様の支えとなりましょう。大丈夫ですとも。ウサはいつでも貴方様の御心のそばに控えております。」
変態野郎はいつもの教室でのテンションでうざったらしく、わざとらしく言葉を口にする。
どんな心境でキャラを被って立っているかは知らないけども。
この返答は大変うざったらしいものだ。優しい声をかけられたいわけでも厳しく怒られたいわけでもない。けども、その返答だってのぞんじゃいない。
けど。
変態野郎は嘘をつかない。ウザくとも嘘は言わない。必ず、裏切らずにそばにいてくれる。
そう感じてしまう。そう感じてしまうのがどうしようもなくーーー……
あぁ!ダメだダメだ!その思考だって美しくない!怖くとも凛と立っている。堂々と自分として自分の姿で立つ!その方が自己中だとしても美しい!
………美しいんだけれども。あぁ、ダメだぁ〜。まだまだ回復には時間がかかりそうだなぁ。
私は扇子を腰袋から取り出すと、バッと扇子を開いた。
月明かりに扇を照らす。キラキラと月明かりに照らされ、美しく輝く。
その光輝く姿に手をひいて歩いて欲しいと甘えが顔を出してくる。そばにいてくれれば、後は頑張るから。頑張れるから。そばにいて欲しい。そう願ってしまう。
「ちひろぉ〜、そろそろ目覚めてくんないかなぁ〜。」
口調はいつも通り。軽くおねがぁいと頼んでいる程度のもの。
だけど、ひっどい顔をしているんだろう。目からは心の汗が滲み出てきているし。て、心の汗て。言ってて痛い子やな。完全痛い子でしかないな。
それを見てクーン…とチビが鳴いている。チビにしては珍しい、弱々しい消え入りそうな声。
近づきたいけど、触れて良いか分からず、でも離れることもできず。私のそばでうろうろとしている。
他の私の武器達も騒ぎ出す。私に語りかけてくる。うちの子達みんな優しいから。
けど。
悪いけど。申し訳ないんだけど。今は誰にも答えることはできず、手に持つ扇子に視線を向け続ける。
「あーぁ。美しき姿、か。美しくあれ。少年であれ。かぁ〜。」
涙を拭き取り、天を仰ぐ。
こんな弱々しくありたいわけでも、愛する私の武器に心配させたいわけでもない。
そんなのは美しくないから。
「………ハァ。チビ、先に寝てて良いよ。身体動かしてから帰るから。」
「にゅぅ。」
うん。明確な拒否、ありがとう。
帰りたくないのね。まぁ分かってた。チビが私から離れるはずがないもの。
天地がひっくり返る方がチビが私を置いていなくなる事より起こり得るよね。
「…………ほどほどになさってくださいね。明日も学園は通常運転にございますから。」
静かにこちらを見ていた変態野郎。
いつものふざけた態度は一切なく、こちらに話しかけてくる。話し方や口調は変態野郎のキャラ通り。けど、素が出ちゃっているね。
「だいじょーぶ。知ってるでしょ?私、何日もぶっ通しで活動し続けるの、慣れてるし、短時間でも寝れれば活動出来るから。そう訓練されてる。戦闘特化型、なめちゃあいけない。」
「志貴様、貴方様は人間にございます。保護されるべきお子様でございます。私が断言いたしますゆえ、間違いございません。」
変態野郎は人間であると言うことを強調するように話し出した。
声を機械で変声しており、違和感丸出しな声であると言うのにどこか温かみを感じてしまうのはそれを私が望んでいるかなのかな。
きっと願望が出ちゃっているんだろうな。
「ゆえに、無茶は厳禁とさせていただきます。我々が保護し寵愛すべきお子ちゃまにございますからね。あまり無茶をされるようでございましたらーーー」
優しく語りかけてくる変態野郎。何かを含ませたかのように言葉を切った。
とはいえ。
変態野郎に何ができるというんだか。
「んー?」
言葉を促すために声を出して、視線を送る。
とりあえずは何をする気か聞いてあげよう。
「僭越ながら、皆様にこの事をご報告させていただこうか、と。皆様ならば対策までしてくださることにございましょう。」
他力本願かーーーい!
けどまぁ、1番効果的か。
「………それは怖いなあ。ゆずるんとかクールに見えておかんだもの。カナちゃんも怒ると閃光弾持つしなぁ。お兄さんは離れてくれなくなる。」
ついつい苦笑を浮かべつつ、呟いてしまった。浮かぶのはあのメンバー。みんながみんな、無茶したら止めにきそうだ。
ほんと、いい子たちばっかだから。
意外に阿部とかも動きそうで面倒だなぁ。谷上にも怒られるだろうし。
「良い仲間にございましょう。」
「そだねぇ。」
「………………あまり無理はなさいませんよう。では、おやすみなさいませ。」
キャラを完全に脱ぎ捨てたりはしないものの、所々で素のテンションになってるなぁ。最初から最後まで素でいてくれればいいのに。
「おやすみなさーい。」
手を振れば変態野郎は姿を消した。とはいえ、まだ彼の気配はそばにある。そばに控えている気満々なんだろうね。
さっ!
悩んでたって、クヨクヨしてたって仕方ない。体動かして前向いて立ち上がらなきゃ。よし、頑張ろ。まだまだ頑張れる!
いつまでもクヨクヨなんてしてられない!美しく在れ、私!
読んでいただき、ありがとうございます!
仕事の時には弁当を作ります
水筒持参です
あ、水筒忘れたって日がありました
弁当はあります
しかし…はしが一本しかありません
二本で一膳なのに…どんな忘れ方やって今日この頃の月姫です
しんどさMAXになっちゃいますよね
とはいえ、めげずに頑張りましょ




