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35.ツバサのお話ですよ④

今回は語り手は桜花ではありません。筆者です。桜花から語り手の役割をいただきました。


楽しんでいただけると幸いです。


優しい心でお付き合いくださいませ!


ツバサのお話です。


やや暗めです。ぎゃあって感じです。では、始まります!

ツバサはふわふわと浮遊感に襲われていた。


それに違和感を感じつつ、目を開けた。広がるのは真っ白の世界だった。


そこにツバサはふわふわふわと浮いていた。ぼんやりとただただ、浮かんでいた。ふわぁと水の中のくらげの如く浮かんでいた。


ツバサの周りには何もない。ツバサの周りはどこまでも白かった。真っ白。真っ白すぎて、勢いよく墨汁でもぶち撒けたくなるくらいに真っ白な世界にいた。


そんな中にツバサはぷかぷかと浮いていた。真っ白な世界の中、重力がないかのようにぷかぷかと浮かんでいた。


そうやって聞くと、気持ちよさそうな気もしなくもない。木と木の間に吊るされたハンモックでゆらゆらと揺られるが如く、気持ちの良い癒されるような心地のような気もしなくもない。




しかしながら。




ツバサに心地よさはなかった。一切がっさいなかった。心地よさなんてものは微塵もないわけだった。


アニメや小説で、転生したりするものだと、死んだら何もない真っ白な空間にいた的な場面があったりするが。イメージとしてはあんな感じの状況にツバサはあった。


今のツバサはなぁんにもない空間で、重力も感じず、身体は軽々としていて浮いている的な場面にあった。そんな感じなわけだった。


後は神様とかが出てきて「転生させます⭐︎」とか説明を始めれば完璧だ。神様はロリっ子か金髪碧眼の美女か美男子あたりで。あるいは寿老人様福禄寿様あたりみたいなご老人。ともなれば雰囲気も出よう。


だが、しかし。


それはアニメや小説の世界の話であって。転生物を見たことがある人ならば白い世界に浮かんでいたらよっしゃ転生して無双してやっぜ、やっふぅ〜!と連想するだろう。いや、無双するのたりぃなぁ。無難に無難にとか思うかもしれない。


だが、アニメや小説に疎ければ、あぁこれは夢かと判断するだけだ。そうそう、それが普通だ。普通は普通に夢かと二度寝三度寝しようとするはずだ。うん、寝に入りたいよな寝たいよな。私も寝たいや。


私は二度寝したいとかロリっ子神様がお約束だろとか思う中、ツバサはすぐに夢だと判断した。だが、二度寝をするわけでも、辺りを見渡すわけでもなく、またかと眉を潜めたのだった。


初めての体験ですというような初々しい反応はなく慣れてますというオーラで身を包み、あぁ、嫌だなと、また、この夢かとため息をついている。


仕事終わりのおっさんやら何やら、サービス残業をしまくった社会人のように、絶望感漂う眼をしていた。いや、十代でその目はないだろって目だよね。社会の闇をしっちゃった社会人のごとく闇に犯された目だよ、ヤバイよヤバイよ〜!


ま、そんな感じにツバサが深く深く吐いたため息にはどんよりとした感情がヒシヒシと込められていた。




そんな時。




夢だというのにリアルに熱気がジワジワと伝わってきた。


ツバサがこれは夢だと意識した瞬間。意識が夢の中で覚醒した瞬間。ぶわぁと突然、熱気が辺りを支配した。その熱気はすぐにツバサを包み込む。


ガッツリきっちり包み込み、しっかり掴み込み、逃す気がないかというくらいに囲い込んだ。いや、熱気には意思はないのだけれども。


嫌な熱気。嫌な感じしかしない。熱いのに体の芯の方がひやっとする。周りが悪意で埋め尽くしているかのようだ。実際はただの熱気。ただただ周りが燃えているだけ。そこに何かの意思はなく、善悪はない。


だというのに、その熱気はキャンプファイアの焚火のようなワクワクする熱気ではなく、辺りを暖めてくれる焚火ストーブのような熱気でもなく。


身体の芯から悪寒で身体を冷え冷えと冷やし、冷や汗で全身をびちゃびちゃにさせるものだった。全身の穴という穴から冷や汗が吹き出し、何とも気持ちが悪い。


まぁそれは。


ツバサの主観であり、この先何が起きるかをツバサが知っているからこそ、熱気がまるで悪魔か何かのように感じられているだけなのだけど。


そう、ツバサにはこれから何が起こるかは分かっていた。はっきりしっかり分かっていた。だから、全身から冷や汗が吹き出ているんだ。


嫌だ嫌だと泣きそうになっているのはこれから起きる展開が分かっているからこそだ。どんな展開か容易に想像が出来、かつ、想像通りにことが進むのに驚いたり怖かったり、後々ビビって1人でトイレに行けなくなったりするホラー映画のように展開がわかっていた。


何度見ようとも感動ものの映画では何度だって涙を流すわけだが。今のツバサも同様で、繰り返し何度見ようとも一切慣れることはなく。乗り越えることもできず。涙が溢れんとしていた。


これはいつもの夢。あの日から繰り返し、何度も何度も繰り返し見ている"あの夢"


忘れたくても忘れられない悪夢。悪夢のような"現実"


「(はやく、目覚めたい。)」


ツバサは切に願った。強く強く願った。


いつも通り、声は出ないため思うだけ。ツバサは夢の中では何もできない。いつもそうだ。手も足も動かず。されども、熱気や音などはリアルに五感を刺激してくる。何もできない中、リアルに目の前で映像が流れていくのだ。


夢は始まったばかり。まだプロローグあたりだ。だというのに、もうすでに泣きそうになりながらも、夢は覚めない。いつだって、見たくないと思いつつも目はそらせないのだ。


分かっている。分かってはいるが、目を背けたいと心が叫んでいた。まぁ出来ないのだけれども。




そんなツバサの前にぶわぁあああと燃え盛る炎があらわれる。今までは熱気だけであったが、熱気の原因であるそれが姿を現し、辺り一面に広がった。




「(やっぱり、この、夢。)」


分かってはいたが、炎を見てさらに絶望を強くした。


ツバサは姿をあらわした炎に慌てるではなく、絶望に満ちた眼を向けたのみだった。


これまたいつも通りの展開だったからだ。


炎の次に姿を見せるのは若干幼いツバサとツバサの父。


2人の間には炎があった。勢いよく燃える炎。それは魔物を焼き払い、なおも燃え続ける炎だ。勢いは収まることを知らない。


「いやっ!消えてっ!消えてっ!!!」


普段は大きな声など出すことのないツバサだが、幼いツバサは力の限り叫び、涙を流していた。


コントロールの効かないそれに必死に叫び続けていた。だが、炎は消えない。術者の意思の通りには動かず、燃え盛っている。


ツバサの父もまた、炎の向こうで叫んでいた。


が。


その声はツバサには届かない。なんと言っているかツバサは必死に聞こうと夢を見るたびしていたが、一度だってその声はツバサの耳には届かない。


「(はやく、終われ。はやく、消えろ。止まれ止まれ止まれ。消え去れ消え去れっ!)」


ツバサはいつも通りに聞くことを諦め、そしていつも通りに念じ始めた。


強く強く念じる。


親の仇を見るようにギッと炎を睨みつけ、消えるように、消滅するように願う。


だが。


願えば願うほどに炎はツバサを嘲笑うかのように勢いを増していった。




ーーーあぁ、やっぱりダメだ。いつものように全てを燃やし尽くしていく。




勢いを増していく炎を見つめながらツバサはツーッと涙を流し絶望した。


見慣れた夢。


いつも見る夢。


だというのに、毎回毎回、絶望感を味わってしまう。今回もまた、深く絶望し、消えない炎を力なく見つめていた。


バチバチと燃え盛る音。熱気。前面に広がる赤。赤い炎は青より熱くないから平気だね⭐︎なぁんて事を言えるはずもなく。ただただ、絶望する。


炎が全てを飲み込んでいく。残されるのは幼いツバサだけ。


「(……お願い、消えて。)」


声が出ない。


出たとしたら、何とも力ない弱々しい声が出ただろうか。自分でも情けないくらいに弱々しい消え入りそうな声が出たことだろう。




「ツバサ〜?」




と。


いつも通りではない事が起きた。


どこからともなく声が響く。


こんな状況だというのに。声の主に緊張感はない。


ツバサは声の主を知っていた。


「消えろって言いつつ、炎をイメージしてないかぃ?そりゃあ、消えないわぁ。炎が徐々に小さくなっていって消えていく。そんなイメージをしてみたらぁ?」


声の主はマイペースに話しはじめた。


ツバサは毒気のぬかれたような顔でキョトンとしていた。


「消したいとか言いつつ、炎をイメージして力放出してたら、消す方向に力は働かないよね?消したいなら消えてくイメージをしなさいな。」


ダメ出しをしてどうしたら良いか指示を出してくる声。


「ツバサ?さっさとやれ。はい、消すイメージ!消火!!へぃ、君は消防士だ!!はい、火が消え〜る。消え〜る。なくなーる!!はい、消して!」


声の主は意外に短気。


ぼーとしていたツバサにすぐに声がかかる。適当な声かけ。


だけど、ツバサはハッとさせてすぐに行動させるには十分な声だった。


声に従い、行動する。いつもなら動けないでいた。が、今は声の勢いに押され、消えゆくイメージを自然とする事が出来た。




するとーーー…




ずーと消えなかった炎は簡単に消えていった。ずっと消えないと思っていたそれはいとも簡単に消えていくのだった。


赤子の手をひねるがごとくたやすさ。今まで出来なかったと言うのが嘘かのようだった。


消えいく光景を初めて見た。


思いがけない光景にツバサは呆然としている。呆然と消えいく様を眺めていた。なんとも言えない感情に支配されながら。


炎が消えていく様を見ながら、ツバサは意識が浮上していくのを感じた。


いつもと違う終わりをぼんやりと見つめつつ、目が覚める感覚に身を委ねたのだった。


結構酒が好きで飲みに行きます


福島のシャラクって酒、旨かったです


肴に食べた浅漬けにカラシが添えられていてびっくり

意外に合うんですね美味いです


暗い話続くんで今週来週と頑張って週3運行


ファイトです私


さてさて。お付き合いいただけますと嬉しく思います!


見ていただきありがとうございました!

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