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311.


「たく。」


「にゅうにゅにゅ?」


声がするから見れば、目をぎらつかせたチビがいた。チビさん、殺気立った様子でおねだりをしてる。


視線は魔物がいる方向から離れない。


ほっとけば良いのにーーあ、あれか。私が系採取したいって言ったんだっけか。この辺に来るなら会えるかも、と。


「ん〜?筋肉だるまぁ、蜘蛛女があっちにいるらしいから、チビと童子に行かせて良い〜?」


チビだけだと暴れすぎるかもしれないし、童子達を喚び出す。


喚び出した童子はやる気満々だ。刀を片手に蜘蛛狩りだーなんて言いながらチビの周りを走り回っている。可愛い限りだよね。


和装の幼い双子の男の子がはしゃぐ様は微笑ましい。


「…………すぐに帰って来いよ。」


止めるより、送り出す方がいいと判断したらしい。


うん、筋肉だるまの判断は正しいと思う。


はしゃぐこの子らを止めるのは大変だろうから。


「にゅっにゅぅー。」


筋肉だるまの返答を聞くや否や、チビが動き出し、その後ろを童子達が続く。


「良い糸採ってきてね!」


声をかければ、一斉に元気な返答が返ってきた。


「くもー、血祭り〜!」


「糸が汚れないように注意〜!」


「にゅうにゅにゅー。」


猛スピードで蜘蛛の元へといってしまった。チビ、確実にいたぶる気満々だね。


やる気満々なチビだったもの。


童子はそんなチビを面白がっている。……ま、楽しいなら良いか。


「一度、足滑らせたチビが蜘蛛の巣に囚われになったのを爆笑した事、根に持ってるんだよね。」


だからこそ、チビは蜘蛛や蜘蛛系の魔物が嫌いで、過剰に反応する。


つい、笑っちゃったんだよん。


優秀なチビがすっ転んだだけでも珍しいのに、蜘蛛の巣にかかって呆然としているわけだよ。


……うん、笑うよね。しかたない。


「知ってる。蜘蛛見るたびに過剰に対応しやがるの、どうにかならねぇのか。」


呆れた様子の筋肉だるま。


まぁどうにかできたら一番なんだけど。何度か反応しなくていいように言っても治らなかったからねー。しゃあなし。


「過去に戻って、チビを笑わないように桜花さんに言えば何とか。」


そう、過去の書き換えをしなきゃ多分、治らない。あれは蜘蛛恐怖症みたいなもんだからね。克服は難しい。


「はぁ。まったく。糸の採取の依頼も出てから、採ってきた糸の一部、出してもらうぞ。」


「おけおけ。2、3体いるみたいだからたくさん採れまっせ〜!」


丈夫な糸は加工品を作るのに良いらしく、それなりにいい値段で取引されるのよね。


火にも水にも強い糸な上に、軽くて細いから服なんかも作れたりするのよ。良い素材だよね。


「分かった。チビ達が引き付けている間に、俺らはこのまま進む。」


筋肉だるまは立ち上がると進むために準備を始めた。


マリやカナちゃんは筋肉だるまの言葉にポップコーンが弾ける瞬間の如き反応で立ち上がった。


まだまだ緊張は解けない様子。


「は、はい。」


「分かりました!」


あわてて出発準備を整える。慌てる必要はないんだけどね。


マリやカナちゃんが猛スピードで準備を整え出すものだから、待たすのも悪いし、私も出来るだけ早く準備を整える。


自分がいた痕跡をささっと消して、広げていた荷物を片付け、軽く荷物を整理する。


といっても、夜間の休憩じゃああるまいし、食事もしてないからすぐに準備は整う。


いち早く準備を整え、地図と睨めっこしていたマリやカナちゃんを先頭に目的地を目指して進み出した。


歩き出してすぐ、だ。


「にゅ゛ぁあ゛あ゛ぁああん!!!」


突如、響いた声。


聞き慣れない人が聞けば、何事かと警戒するであろう怒声。声だと判断するのさえ難しいかもしれない。


いやぁ、近くに戦闘員がいたら申し訳ないね!まぁ仕方ない!


「ひっ?!何の声?!」


瞬時に声だと判断しているあたり、マリは頭のどっかで何の声かわかっているんじゃないかなぁ。


答えは冷静に考えれば分かるんだけど、パニックになってしまって、正常に判断できずにいる気がする。


「お、落ち着いてください。あれは多分…。」


チラリと困った様子で私に視線を向けてきたカナちゃん。咆哮の主が分かっているようだね。


いやぁ、筋肉だるまやにゃんこからの視線が痛いね!


「チビが大はしゃぎしてるみたい。楽しそうだねぇ。」


声をする方を見ても、姿は当然だけど見えない。


けども。


大はしゃぎな武器達の姿は容易に想像がつく。


「楽しそうなの、あれ?!怒ってない?」


めっちゃびびっているマリだけれども、チビは別に怒ってはいない。


怒っていたらチビさんはあんなに大声は出さずにいたぶるもなく、静かになるタイプだから。ちなみにキレた相手に容赦するチビさんではない。


確実に息の根を止めに行くだろう。恐ろしや。


「チビ、蜘蛛嫌いだから。大はしゃぎでなぶってるんだろうね。」


蜘蛛からの糸採取は糸をいっぱい吐かせなきゃいけない。つまり、なぶる必要がある。ビビらせればいっぱい吐いてくれる。つまり、脅威に感じさせなきゃなんだよ。


糸を採取するって大義名分を得て蜘蛛をいじめられる。


チビさんがはしゃぐわけだ。


「こわっ。」


「はは。ただ、あんだけ騒ぐとここらの魔物惹きつけちゃうねぇ。」


これが元来の任務ならマリやカナちゃんにとってはラッキーなわけだけど。


実践経験を積むって目的がある今は、チビにばかり魔物がよるのは微妙だなぁ。


……ん?あ、いや、全部は惹きつけられてないから良いか。


「落ち着いて戦えねぇのか、全く。…どうした?」


筋肉だるまって脳筋に見えて意外と聡いんだよね。よく見てる。


私の様子が変化したのを感じたらしく、こちらに問いかけてくる。


「向こうから都市伝説的なお化け来そう。伝える?」


魔物が近づいてきてるのを感知しただけなんだけど。


地図見るのに必死なマリとカナちゃんは気づいていない。近くで2人の話を真剣な顔で眺めているにゃんこも同じく、こちらの会話を気にする余裕なんかなさそう。


「危なくなったら手を出す。それまでは待機。」


つまりはこのまま、遭遇すると。回避する事も出来るけどしないつもりらしい。


よく遭遇する魔物だから慣れておいたほうがいいのは事実だしね。マリ達、落ち着いて対処、出来るといいけど。



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