309.新たな現場に入ります
昨日までトラブルでごたついていたとかそんな事実はさておいて、次の日になれば新たな研修の場へと送り出された。
荷物を新たに整え直し、皆、予定通りの場に向かったわけだよ。
私はカナちゃんと一緒にマリと合流。
講師は筋肉だるまとにゃんこ。
「薬草取りに行くわけだが。取りに行く薬草については調べたか?」
腕を組んで立つ筋肉だるまは威圧感がある。
筋肉だるまの得意分野が治療系で療養所を営んでいるだなんて、初見では絶対見抜けない。
パワー系、脳筋野郎に見える。
「はい。採取予定の薬草はシシゴケとシルビーの花の2種で、シシゴケはオオクマシシの鼻部分に生息するコケで、中級ポーションの原材料の一つです。」
びびらずに話せるカナちゃんはえらい。大の大人でもたまにびびる奴いるのに。
まぁ仕方ないと言えば仕方ない。
だって筋肉だるまって180センチくらいの長身で、がっちりとしたゴリマッチョなんだよ。で、顔は厳つい。サングラスが好き。
ゴリマッチョなやがつくお職業に見える親父。
うんうん、近づきたくはないよね。カタギに見えないもの。
「シルビーの花はクモワシの巣の周りに咲く花で、えっと、根ごと採取する必要のある薬草、です。えと…効能は…。」
マリがあちこちに視線を彷徨わせる。筋肉だるまにびびっている、ってことはなく。
単純に分からないだけだね。
メモして持ち歩けば良いのに、暗記しろだなんて誰も言ってないんだから。前勉強しっかりしたのに、もったいないなぁ。
「シルビーの方は塗り薬なんかの原材料だね。発赤やら皮膚の爛れやらに塗ったりする薬のもとになるんだよ。乾燥させてすり潰しての流れだけども、マリは変に枯らさないためにも根の部分を土付きでとって濡らした布で包んだりしたほうが良いかも。」
マリの言葉を引き継ぎ、話す。
私は採取したら基本、術式に入れちゃう。気が向いた時、暇な時に乾燥させたり、粉にしたりと加工するんだよね。
けど、基本面倒だから術式に突っ込む。
「なるほど。」
「お前ぇら、それぞれオオクマシシとクモワシの事は調べてるか?」
私の説明にコクコクうなずくマリの様子に調べたか心配になったらしいにゃんこが問いかけを投げかける。
調べていたのは知ってるだろうけど、内容が足りているかは分からないものね。
マリの様子からして事前の下調べが足りていないように感じたのかも。
「オオクマシシは図体の割に廃墟を好み〜、クモワシは崖を好む⭐︎」
とりあえず、ざっくりした返事を述べてみる。マリがバツが悪いって顔を逸らしたからね。
他の現場行った後だし、調べた内容を忘れちゃってるのは仕方ないじゃないか。
メモを準備しなかったのはマリの落ち度だけど。ま、それは次回から気をつけるって事で⭐︎
「桜花に聞いてねぇよ?」
筋肉だるまさんや、なして私に冷たいのよ?
口を挟むなって言いたげに言うけども、私も可愛い生徒なんだよ?
「私も生徒なのにぃ〜。筋肉だるまって脳筋なのに、意外に下調べキッチリだよねぇ。」
「たりめぇだ。知識なけりゃあ命がいくつあっても足りねぇだろ。で?オオクマシシはどんな魔物だ?」
私を鼻で笑ったのちに、カナちゃんやマリに問いかける。
問いかけられた2人は戸惑ったように顔をあわせ、カナちゃんがおずおずと口を開く。
「えっと…オオクマシシは猪のような見た目をしている魔物で、強靭な鼻が特徴です。頑丈な鼻での素早いタックルは岩をも砕く威力があります。弱点は額です。」
「身体の構造は豚みたいなもんで、味も豚肉って感じ。捌き方も調理方法もまんま豚だから凶暴豚とか言われるんだよねぇ。今日は豚丼だー。」
じゅるっとよだれが出そうになるね。美味しいんだよね、あの肉。調味料は…よし、きっちりあるね。
甘辛煮にしよっと。
美味しい魔物は大歓迎だ!
「肉多めで頼む。玉ねぎも獲ってくか。……で、クモワシは?」
食には食いつく筋肉だるま。うんうん、食べ物は偉大よね。
「えっと…。」
今度はマリに答えさせたいらしく、筋肉だるまはマリを見据えて問いかけていた。それにマリは困ったように視線を彷徨わせる。
ただ視線を向けられただけだろうに、ヘビに睨まれたカエルみたいな気分になってそう。
「卵が10センチくらいあって大きいんだよね。持ち運びに不便だけど体力回復効果があるから、これで卵焼き作って弁当に入れたりすると素敵。午後からも頑張れる。」
気まずい間が出来たからとりあえず、桜花さんが話しとく。
空気を和らげちゃう桜花さん、素敵!
「すっごい高いやつよね、それ。」
お、マリ、知ってるんじゃん。それだよそれ。
筋肉だるまやにゃんこからの問いかけに妙に緊張しちゃって、うまく答えられていないとこがあるね、これは。
変に力まず答えたら良いのに、マリは真面目なんだから。
「戦闘員なんだし、術式さえ使えればいくつかストックしとけるわけだよん。タダで獲れる卵〜。」
獲るのがちょい骨が折れるだけで。
私の術式内には常にストックあるし、今日も獲る気満々よ?
「危ないから勧めんじゃねぇ。」
「ははは。私は今日も獲るけどねー。」
「にゅ!」
やる気満々に鳴くうちの子、可愛いです。
私やチビがやる気なのに対し、筋肉だるまはあまり反応しない。にゃんこが顔を顰めているけど。
「で、マリさんや。クモワシは何に弱い?」
卵は獲らない方向で話をされる前に話題を変える。
弱点はなに?みたいなピンポイントな質問ならば答えれないかなぁ。自由回答って意外に難しいし。
「えっと……打撃。」
気まずげに視線彷徨わせるマリはクモワシの弱点を失念しているよう。
今度からノートじゃなくてメモ帳に調べた内容をまとめるように言わなきゃだね、これは。
「まぁ確かに。すばしっこさもあれば、岩のように硬いクチバシもやばいわけだけど、頭目掛けて拳を繰り出せれば倒せるね。」
答えとしては三角だけど、マリならどうにか倒せる範疇だから、良きとするか。
「無茶言うでねぇ!どんだけ頑丈だと思ってるべ!」
あ、ダメだったか。にゃんこが苦言を呈してきた。
にゃんこが倒すには確かに、打撃じゃあ効かないだろうからね。
「ん〜。筋肉だるまなら1発でいけるよん。マリなら6、7発でいけるといいねぇ。」
「そんなに?!」
私が言うと、マリは目をめっちゃ見開いた。いや、打撃は有効だけど頑丈なんだよ、クモワシって。
マリは何発でいけると思っていたんやら。
「……嬢ちゃんは見た目の割にパワフルなんだな。」
筋肉だるまは打撃で倒せると言う私の判断に驚いている。
よほどのパワー自身な人じゃなきゃあ打撃は選択しない魔物なんだよね、クモワシって。
「え?」
「ま、クモワシは鳥ではあるから打撃は有効なんだけどねぇ。電気系術式に弱いってのと、クチバシの下あたりの首が弱いからそこを狙って首を斬るのが早い。首切ると血抜きにもなるんだよね。炭火焼きが好き。」
網焼きするのが好きなんだよね。シンプルに塩だけの味付けも良き良き。
「………炭火…。」
「タレと塩、どっちが良い?」
「両方!」
マリが目の色変えたから、好きな味付けを問えばマリは迷いなく言う。
どちらも食べて、他も食べるんだろう。食いっぷりが良いから、桜花さんは張り切って作っちゃうぜ!




