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305.帰ってきました

タクらと合流した魁斗らはまっすぐに帰路に着いた。途中で魁斗らを迎えにきたウサ達と合流すると、タクらと別れ、学院へと戻ったのだ。


「おかえりーッ!無事だね?ぼろぼろだけど、3人とも無事で良かったよぉ。」


ドアを開ければ、すぐそこには笑顔の桜花がいた。肩にはチビが乗っているが、チビは魁斗らを視認するとあからさまに臭いと言いたげに鼻をおさえていた。


「本当に無事か?!」


桜花の後ろから飛び出したユキが勢いそのまま結弦に飛びかかった。


続けて距離を詰めてきた佳那子は飛びかかるまではしないが、結弦や司、魁斗を上から下まで何度も心配そうに見つめていた。


「お怪我は?大丈夫ですか??」


「桜花ちゃん、ただいま。」


ユキや佳那子をすり抜け、魁斗は桜花に抱きついた。


「おかえりー。薬草くさいから治療も受けてきたかなぁー?お風呂が良い?ご飯が良い?それとも、わ・た・しぃい??」


「にゅ゛ぅあ゛ん?!」


桜花がふざけた事をチビが般若のように顔を歪め、なおも抱きついたままの魁斗の頭に移動すると、魁斗の頭をガシガシと前足で蹴り始めた。


いつも通りな雰囲気に魁斗はものすごく嬉しそうである。


「……風呂入ってる間に桜花ちゃん、ご飯作っててくれるかぃ?桜花ちゃんのご飯が食いてえ。」


自身の頭に乗っかったチビの首根っこを掴み持ち上げると、魁斗は桜花をじっと見つめ、おねだりする。


しっかりと被られた猫に甘ったるく発せられる声。魁斗が甘えていると言うのは明らか。狙う相手が桜花であるのも明らかである。


「おけー。ゆずるん、お風呂に手ぇいる?」


が。


やはり、桜花には通じない。


しかし、いつもの流れに魁斗は表情を緩めていた。


「ご一緒します!」


桜花から問われたのは結弦であったが、第一に答えたのは佳那子であった。


可能か否かではなく、一緒に行くという回答をシュタッとしっかり手を挙げて主張していた。


「ボクもはいろう!」


佳那子の言葉にユキに便乗する。


にぃと笑う顔に邪気はない。がしかし、それが危険だと結弦は知っていた。


「ひ、1人で大丈夫よ?」


狼狽えた様子の結弦の頬は赤い。眉をハの字にし、困った様子で後ずされば、後ろによろめき、背後に控えていたウサに支えられてしまう。


「無事を確認せねばならないからな!」


「へ…へんな、とこ触ったら…承知しないわよ。」


キッと睨むようにユキを見る結弦に迫力はない。


むしろ、煽っているようにしか見えなかった。


「………それはやれの合図だにゃあ。」


にんまりと笑ってささやく桜花が結弦には小悪魔に見えた。


が。


当然の流れといえば、当然の流れであった。


「よしきた!」


桜花のささやきにユキは全力で反応した。結弦の言葉はスルーされている。


「ふぇ?!え?!」


ニタリと笑う桜花に喜ぶユキ。狼狽え慌てたのは佳那子であった。


顔を赤くしているあたり、わちゃわちゃ騒ぐぞって言うのは伝わっているらしい。


「違うわよ!」


結弦は吠えるが、自身の意見が通るかは怪しい。


いや、通らないだろう未来しか見えない。


「賑やかでござるなぁ。」


「おぅ。帰ってきたんでぇ。」


自身らには関わりのない事だと完全に見学人と化している魁斗と司。


ガチャガチャ騒がしい感じにほのぼのしている。結弦としては救いの手を求めているのだが、2人は介入する気はさらさらないようだ。


「さ、みんなのご飯作っちゃうから、さっさとお風呂いきなぁ?丞君、子供達のために手伝うでしょー?」


桜花は後ろで皆のやり取りを眺めていた丞やげんに視線を向けた。


「良いっすよ。美味いもん作るっす!」


にかっと人好きする笑みを浮かべる丞は隣に立つげんにねっと同意を求めた。


げんも強制的に巻き込まれるらしい。


「たく。さっきまで通夜みてぇな雰囲気だったっつーのに。うるせぇ奴らだな。」


げんはほぼ強制なムードに文句を言いつつも、満更でもない様子だ。


「こういう賑やかさは大歓迎でしょ?」


「ハンッ」


「げんさんは肉のかいたーい!ほい!」


ダンッと大きな音をたてつつ術式から大きな肉ーー肉というには捌かれてもいない状態の塊ーーを取り出すと、桜花は笑った。


解体から頼むと平然と言ってのけているのである。


桜花が取り出した肉の塊に、魁斗らはギョッとするが、げんは慣れているのかたいして驚く様子はない。


「………てめぇの術式内は何でもかんでも入ってやがるな。酒は?」


げんが気にするのは出てきた肉ではなく、酒の有無であった。


「学園内は?禁酒と言いますか?」


すかさず。


桜花が話すより先にわんこが口を開く。


「チッ。仕方ねぇ。良い肉だってぇのに。仕方ねぇな。」


「はははは。調理用にワインをあげよう。」


残念そうにするげんに、桜花は朗らかに笑った。


が。


笑う桜花に不穏な空気をまとわせて、近づく男がいた。


「志貴様?お酒もお持ちで?」


ウサ、だ。


変声機で声を変えられているとはいえ、声には凄みがあった。


「調理用と師匠達へのお土産用。」


「本当に?」


うるさいなぁとでも言いたげな桜花にウサはさらに問いかける。


「桜花さんは飲まないよん〜。ワイン使った料理ははじめちゃんかて何回も食べてるでしょうが。げんさん、赤、白どっちー?」


桜花は両手に赤白それぞれのワインを持ち、げんに掲げるようにして見せた。


ウサをまともに相手にするつもりはないらしい。


「赤。」


「ほいっと。」


返事を聞き、桜花はワインビンを迷いなく投げた。


げんもげんで狼狽える事なく、ビンを受け取り、にやりと笑う。良い酒だとつぶやく姿は調理に使うようには見えない。


「でけぇ刃物も貸せ。」


「でけぇ…薙刀?」


シュンっと薙刀を出す桜花。確かに武器の体積は大きいが、そうじゃない。


「だったら普通の刀よこせ。」


げんは桜花のボケを受け流し要求する。


要求に従い、桜花はいくつかの刀を術式から取り出すとげんに見せた。げんはそれを当たり前のように受け取ろうとした。しかし、それには待ったがかかる。


「いや、肉切り包丁あるっすよね。」


つっこんだのは丞だ。さすがに突っ込まざるを得なかった様子。


困ったように笑いながら桜花やげんを見ていた。



すると桜花は楽しげに笑いながら、今度は三つの肉切り包丁を術式により取り出した。


「あるよん。飾る用途の煌びやかなのも、鋭い切れ味のも、武器用途も。さぁ、どれ?」


桜花はげんに差し出すようにして肉切り包丁を差し出すように見せる。


桜花が差し出した肉切り包丁は派手な装飾が施されたものもあれば、シンプルなものもある。


「これ借りるぞ。」


げんは一通り確認すると、桜花が持っていたうちの一つを手に取る。


げんが手に取ったのはシンプルな肉切り包丁のうちの一つだった。

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