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280.緊張感が続きます


誰だか分からない連中がうろついている。


しかも、2グループも。どちらも敵だとして、異種な2グループが目的は違えど、自身らを狙っている。


それも、魔物のいる地で。


「分かってはござるが…なんというか、どちらも危険な気配は変わらぬが、匂いが違うというか……。」


あちらこちらに敵がいる。その緊張感に司は逃げ出したい気分だった。


魔物だけでもしんどい中、おかしな連中がいるだなんて聞いていない。


一体、何が目的の人らなのか。


自分達をどうしたいのか。


今の現状のせいで、考えがどんどん嫌な方向へと誘われていく。


いけないと分かっていても、司にはどうすることも出来ずにいた。


「………ともかくどちらにも会わずに動く。んで良いだろ。」


考えすぎても良いことなどない。思考タイムは終わりと言わんばかりに魁斗は言った。


真っ直ぐに司を見る目は力強い。


不安がないわけではないだろうに、司のように負のスパイラルに陥るではなく、今何をするかを考えているようだった。


「…………して、どちらに進むでござるか?」


こういう時に魁斗のサバサバした性格は自身の思考を断ち切ってくれ共に悪循環にならずにすむと、司はほんの少しだけ混乱する気持ちが落ち着くのを感じた。


そして、一呼吸置き、思考を一旦片隅へと押し込め、問いかけた。


「…………方向感覚が狂う何かがあんのか。」


あたりを見渡し、クソッと毒づく魁斗。


どちらに進めば良いかわかっていれば、とっくに進み出しているだろうに、魁斗は中々前に進めない現状にイライラしげにしていた。


「叢雲華はないはずでござるよ。もしやと探しては見たでござるが、見当たらなかったから……故に原因が不明なんでござる。」


「そういう磁場とか…流石に事前に調べた時に分かるわよね。」


事前に行く先について3人とも調べているのだ。方向感覚を狂わす地があるなどという情報はなかった。だというのに、今の現状。


一体、どういう事なのか。


「………俺らは南に向かった場所でタクさん達と別れた。動きだしてから、おんなじ場所を回り出すまでに時間はかかってねぇ。なら、北に進んでみりゃあどうにかならねぇか。」


一概に正解とは言えないが、他に手も思い浮かばず、魁斗は投げやりな形で言った。


「……北ってどっちよ。」


方角すら分からない状態に、結弦はついつい魁斗に当たってしまう。


魁斗が悪いのではないとは言え、イラつきが隠せない。


「待て。………あっちだ。」


魁斗は腕時計と天を眺めたのち、あたりをキョロキョロ見渡した後、指さした。


大体だがなと付け加えつつ。


「あ!時計でござるか!忘れておったでござるよ。さすがは喜藤氏。」


「はん。桜花ちゃんなら知ってるだろうし、この状況自体どうにかできるだろうよ。」


「いやいや。喜藤氏がこうして我らの道を示してくださってるでござる。決定するのも苦手な故、助かってるでござる。全ては喜藤氏の功績。」


凄いでござるよと司は褒め続けるも、魁斗はやはり、なんて事ないと流していた。


結弦は2人の会話についていけず、目をパチクリとさせてしまう。


「ちょっと待ちなさい。時計で方向がわかるの?」


「佐々木氏はご存知なかったでござるか。腕時計の針と太陽の位置で方向を知る方法があるのでござるよ。」


結弦が頭をかしげ問いかけると、司が結弦の疑問に答えた。


司も知ってはいたものの、その方法を思い出せなかったと再度、魁斗を褒めた。


「サバイバル術、ね。……針のついてる時計に変えようかしら。」


結弦は自身の腕につけられた時計を眺め、つぶやいた。


結弦が眺める腕時計には秒針がなく、デジタルのものだった。


「良し悪しあるでござるし、チームに一つあれば十分ではござるよ。」


「行くぞ。」


「えぇ、そうね。」


3人は急いで、再び動き出す。先ほどの人らがまた帰って来る可能性があるからだ。


しかし。


動き出してすぐに結弦は遠くを見るように視線を巡らし、嫌そうに眉を顰めた。


「…………魔物の気配、ね。」


忌々しげに結弦はつぶやいた。疲れたと声に滲み出てしまっている。


「チッ。まだ、遠い。隠れんぞ。下手に戦って人まで引き寄せたらたまんねぇ。」


結弦の眺めていた方向を見た魁斗は舌打ちする。そして、周りを見渡し、身を隠せそうな場所へと動き出す。


動き出した魁斗に結弦や司が続く。


「承知。……にしても、多いでござるな。何度目でござるか。」


流石に嫌気がさしてくると司はついつい、弱音を吐いてしまう。


何度も魔物に出会うのは仕方ない。しかし、その数が多い。


何度か現場に出た経験はある。魔物と何度も出会い、戦闘経験もある。とはいえ、ここまで何度も出会うのは珍しいのではないかと感じてしまう。


経験が少ないが故に、この状況はもしかしたらおかしくないのかもしれないと思えなくもないが、そうだとしても心が折れそうなくらいに数が多い。


「……処理、甘かったのかしら。魔物の血に他の魔物達も引き寄せられてるとしか思えないくらいに多いわ。」


結弦は弱々しくつぶやいた。とはいえ、事実はどうなのかは確認できない。


とりあえず、結弦は木の幹の影に身を隠し、気配を消す。


「全部消した気でいたでござるが……後始末の練習もさせてもらったほうが良いでござるな。志貴氏が魔物を保持されているはず。いくつか、やらせてほしいと言えば、譲ってくださるはずでござる。チェックもチビ氏に頼めば腕をあげれそうでござろう。」


「志貴さんの武器、絶対厳しいわよ。」


「それが良いんでござる。」


「まぁ…現場で絶対役立つわよね。」


現実から目を逸らしたいのか、結弦と司は会話を続けていた。


「それは無事に帰れたら、の話だろ。」


雑談に花を咲かす司や結弦に魁斗は水を差す。会話が止まらないが故に。


とはいえ、言い方が悪い。


「不吉な事を言わないでちょうだい。……シッ!近いわ!」


結弦はキッと魁斗を睨みつけた。


「分かってらぁ。」


魁斗がフンと鼻を鳴らす事で、会話は終了となり、3人(魁斗、司、結弦)は周りの気配に集中した。


会話が終われば、あたりに沈黙が落ちる。が。沈黙は長くは続かなかった。


「こりゃあ、数がすげぇ、な。」


足音やら何やらが聞こえてきた。魁斗のつぶやきなどかき消されてしまう程度の音に、三者とも(魁斗、司、結弦)に顔を顰めてしまう。


「倒す自信は?」


魔物の気配を探っている魁斗に司が問いかけた。


問いかけられ、魁斗は司にチラッと視線を向けたが、すぐにあたりに視線を戻す。


「……お前ぇさんはどうなんでぇ?」


「満身創痍となる覚悟があれば。」


返答なく問いかけが返ってきたのに対し、司は真剣な顔で返事をした。


おそらくは魁斗も同じはず。


「はぁ…俺もでぇ。しかし、そうとあっちゃあ都合悪ぃ。こんなところで倒れらんねぇよ。」


案の定、魁斗は司が予想していた回答をよこす。


戦うは正解ではない。


これまた、司と同意見であった。


「同意。このまま隠れてた方が無難でござろう。」


「あぁ。気づく様子がねぇのが幸いだな。」


ドドドドドッと音を立てつつ走りゆく魔物達を眺め、魁斗はつぶやく。


「下手に目ぇ合わせたりしないでよ。」


音に顔色を悪くしつつも、何とか気丈に振る舞う結弦。ガクガク震えそうになる腕をぎゅっと抱きしめ、魁斗を見る。


戦闘になるのは結弦としてもごめんだ。


「んな下手ぁこかねぇよ。」


「ならいいけど。」


「喧嘩なさらず仲良くするでござるよ〜。」


ツンツンな態度の2人に司は苦笑してしまう。どちらも言い方がツンケンしすぎている。


喧嘩まではいかないが、もう少し柔らかい態度となれないのか。


「はん。」


「……。」


司の苦悩は続きそうだ。すでに胃が痛い。泣きたい気分な司であった。


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