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273.はやり嫌がります

今後どうするかをげんさんに聞かれ、ユキは戸惑ってる。


いつもなら判断が早いのに、いつになく迷っているね。珍しい。


さっきの様子じゃあ、ユキには対処できそうにないし、迷うのは仕方ないのだろう。


はてはて、どうすることやら。


「今なら自分もげんさんもいるっすよ?普段なら自分に振られない仕事をやるチャンスっす。また飛ばされたら、今度は受け身を取れる様に意識するっす。俺らでフォローするっすから。」


「…………はい。」


丞君が優しくユキに語りかければ、ユキは迷った様な仕草ののち、強く頷く。


迷った末に腹を決めましたって感じだね。私としては、決死の覚悟を決めましたって感じなのが、解せないけども。


チビのチェックはそこまで難しくないでしょうに。全く〜。


チビが嫌そうに身体を縮ませ、私の胸に飛び込んできたから抱っこする。


「飛ばされた時、手のチェックはしたっすか?」


覚悟を決めた様子のユキに丞君は問いかけた。


んな余裕があればユキは目を瞑ったりせずに受け身を取っただろう。


「え?あ……余裕がなくて見れてません。」


「あちゃあー…じゃあもう一度手を見るっすか。チビさん、万歳っす!」


「ばんざーい。」


抱っこしたまま、しゃがんでチビの身体を私の足にもたれかからせて、万歳をさせる。


とりあえず、一緒にいてあげないと。チビが本気で嫌がっている。また何かあれば、手がつけられなくなっちゃう。


「にゅぅー…。」


嫌そうにしつつもチビは抵抗はしない。私に何かされる分には余程じゃない限り抵抗しない可愛いチビだからね。


「ははは。可愛い肉球ぷにぷにぃー」


隙ありだよ、チビ?


肉球触り放題じゃないか。ふっふっふー!


チビをチェックしているユキを手伝うと見せかけて、肉球をぷにぷにしまくる。気持ちいいぜ!


「にゅうー!」


あーぁ。さすがに肉球を好きにしたら怒られるか。


嫌そうに肉球を私の手の内からすっぽ抜かれた。いやん。


「4本、問題ないっすね?」


「はい。」


私が喪失感に打ちひしがれている中、丞君とユキは真剣そうにこちらを眺めていた。


その後ろでげんさんは腕を組んでその様子を見ている。カナちゃんは心配そうにげんさんの横に立っているのが見える。


私とチビとのじゃれつきをみんな、真剣に観察していると言うおかしな光景が出来上がっていた。


私とチビは動物園の動物か何かになった気分。


「じゃあ続き見ていくっす。」

 

「はい!」


げんさんは見守る系だったけど、丞君は手取り足取りって感じだね。


そばで一緒に見てくれるわけか。あれなら、大丈夫だね。


「…………ほい、チビさん。いっといで。」


優しく優しくチビを撫で付け、チビを地面に下ろす。


膝から下りたチビは再び自身の大きさを大きくしてくれた。んだけども、視線は私に向けたまま。


「……にゅ。」


チビは少しの抵抗を見せた。


チビの背を撫でつつ、ユキの方へチビを押す。が、嫌々と頭を振っている。よほど嫌らしい。


しゃあなしだから、チビの横に移動して、背を撫でる。チビは私にぴったりくっついて離れる様子はない。


「チビ、目を見せてくれ。」


ユキはチビに視線を合わせるためにしゃがみ込み、頭を下げた。


「にゅ。」


嫌々ながらもチビがユキの方を見たことにより再チェックがはじまった。 




けども。




チビは言うことを聞かず、ユキはそれにイラつきを隠せず。


さっきとあまり変わらない流れだねぇ。


「……じっとしていてくれないか?」


目の動きをよく見るために、チビに指示を出すけど、チビは従わず。


「にゅっ!」


ユキはわかっているのだろうか。


チビは私の所有する武器であり、有心武器は主人にしか従わないことを。


何かをさせたいなら私に言えば良いのになぁ。


「ユキ、待て。お前ぇ何で全部自分でやる?」


あ、やっとげんさんが口を出した。


私がヒヤヒヤするから、もうちょっと早く声をかけてほしいとこだ。丞君もなんて言えば良いかって迷ってないでほしいなぁ。


「え?」


ユキはげんさんの質問の意図がわからないと目をパチクリさせている。


不思議そう。


真面目にチェックしていた。特にまだ、ミスはしていない。だからこそ、声をかけられるとは思わなかった様だね。


「チビは嫌がってる。で、無理やりやればまた同じだろうが。」


「しかし、チェックを…!」


ユキはまったく。頭がかたいねぇ。


出来ない事実があるんだから、多少は妥協しなきゃ。


「見れれば良いんだよ。チビ、目をかっぴらけ。」


げんさんはユキの横までくると、チビに指示を出した。


「にゅぅー?」


チビは嫌々ながらに目を開き、睨みつけるようにげんさんをみた。


多少なら主人相手じゃなくても付き合ってくれるチビはいい子の部類。


げんさんはどこまでなら指示が通るか分かっているからすごい。


「よし、眼球に問題はねぇな。チビはどっから話しかけても反応してたし、俺を目視・追視していた。その様子から、視野障害はねぇだろ。」


チビの目をあらかた確認したげんさんはユキに言う。


「それじゃあ正確なデータは…。」


げんさんの判断にユキは否と主張する。


先輩の判断に反対意見を言えるのは中々に我が強いよね。ただまぁ、納得できるまで追求するのは大切か。


妥協することもまた、重要だと思うけどね。


「検査は出来るならやる。できねぇなら、出来る範囲で動き見て判断しねぇとチビのチェックが二度とできなくなんぞ。」


「けど……出来る範囲では正確な評価が…」


二度とできなくなるリスクを負うくらいなら、できる範囲で確認するくらいで良いだろうに。ある程度、妥協しないと〜。


ユキは頑固で頭が硬いなぁ。


「正確なのは必要だ。誰が評価しても同じように評価できねぇと現状が異常か正常かもわからねぇからな。が。そうするためにゃあ、チビを見れるやつは武器師にゃあ、数人しかいなくなる。本気で嫌がられれば誰も見れねぇぜ。」


「それはっ!」


「手順も正確性も重要だ。だが、全てじゃねぇ。無理やり見るっつぅーのもできるが、労力がかかる。何より嫌な目に合わせりゃあ、次は本気で拒否される。そうならねぇようにすんのも、重要だ。」


がおーと吠えたユキにげんさんは冷静に返答する。


手順通りにだけが全てではない。ある程度、臨機応変にしていく必要がある。


つまり、そんな事を伝えたいわけなんだろう。


チビのチェックをさせて実感させたかったんだね、げんさんは。


「桜花なら無理にでも従えれる。本当に必要ならそうすりゃ見れる。ま、桜花が納得しなけりゃあ無理だがな。」


げんさん?いらんことを吹き込まないでくれないかな?


桜花さんはそんな方法を納得なんてするわけないじゃない?


「定期検診は必須なのでは?」


ほら。


必要だからやれとか言われそうな流れできちゃったじゃないの。


「桜花にそう言ってみろ。」


「……しっきー。」


捨てられた犬のような目でこちらを見てくるユキ。


げんさんが言っていた臨機応変に動けって言葉はどうしたのさ。そちらに従って欲しい。


「ん?んん〜…きゃっかー。だったらげんさんや丞君が見てよ。2人なら私がそばにいなくてもチビを見れるでしょー。……そんな目で見てもダメェ。」


いつになくしつこいなぁ。しつこいくらいに縋り付く様な目でこちらを見てくる。が、了承するわけにはいかない。


ユキも大切な仲間ではあるけど、チビも私の大切な愛武器だからね。


チビを無理やり押さえつけてまでユキにチェックしてもらう必要はどこにもないし。


「………しっきー。」


ユキはどうしても自分でやりたいらしい。


私を見つめてくる目は必死だ。


とはいえ、了承できるわけがないと、武器に携わる者ならば判断して欲しいねぇ。

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