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268.チェックは終わりです

マリの魔忌具に対する認識に誤りはないけど、それだけじゃあない。


マリに追加で説明しようとマリを見たけど、私が話すより先にお兄さんが口を開いた。


「確か、何年か前に駅で大暴れしたってやつがいたよな。」


詳しい内容を思い出そうとしてるのか、腕を組んだお兄さんは難しい顔をして唸り声をあげている。


お兄さんが言っているのは魔忌具


「それって包丁で暴れたって言う?あれが、魔忌具なのよね。ニュースでは精神状況がおかしかったとしか言われてなかったけど……確か、いっぱい人が斬られたのよね?犯人って……」


マリは事件を知っていた様で青い顔をして話している。


「亡くなってるねぇ。あん時のは包丁の魔忌具だったかなぁ。結局、封じたんじゃなかったかな。」


腕を切り落とせたけど、手遅れで操られた子は死んじゃって。武器も武器で、封じるしかできなかったんだよね。どこに封じられたかは知らないけど。


「武器に触れたら、武器に操られて、ひたすら暴れる。破壊衝動、殺人衝動が込められた武器?」


コテンと頭を傾げてツバサが聞いてくる。


「その認識に誤りがあるわけではない。危険なものであることに違いはない。生み出すべきものでもない。」


ツバサの問いかけに返答したのはユキだった。


「武器に私怨をこめるなんて、あってはならないわ。」


ムスッとしたゆずるんもユキの言う事に同意した。


ユキもゆずるんも、魔忌具を忌むものとして認識している。誤りはないけど、嫌いだって言う気持ちが強すぎて説明が不足してるねぇ。


「恨みつらみを込めて作ると、呪われた武器とかになるわけだけど、ごくごく稀に有心武器の出来損ないって言われるような状態になる事があるんだよね。」


私が拾った銃は恨みつらみで不安定になっているけど、魂が宿っている。有心武器と呼ぶには魂が不安定で武器としては未熟なんだけど。


「出来損ない??チビも言ってたよな。」


興味津々な様子でみんながこちらに注目する。


「魂が宿るんだけど、それが不安定でコントロールしづらい感じかな?しかも、作り手の恨みに引きづられて作り手の恨みの対象を襲うしか考えられなくなる。ただまぁ、コントロールできちゃえば、強力な武器!」


「にゅっにゅうにゅうにゅ!」


チビさんや?僕の方が強いって張り合わないの。


武器としての性質がそもそも違うでしょうが。チビは私の魂から生まれた武器。魔忌具は作り出された武器。比べるのがおかしい。


「有心武器の不思議なとこは完成後に主人の元で成長することっす。そこが有心武器が有心武器であるゆえの強みっすが。魔忌具もまた、成長して有心武器と呼べる程度に安定することがまれにあるっす。桜花さんの魔忌具……どちらも魂が安定しつつあるっす。」


「お?桜花さん所有の有心武器、ふえる?」


増えちゃうかにゃ?


それは面倒でもありつつ、感激しちゃうぜ?


「いや、どちらもやや安定しただけでまだまだ危ないっす。自分達や師匠さん達がいる時以外、使っちゃダメっす。」


「ちぇっ!」


条件付きとはいえ許可が降りたぜやっふぅー!


ワクワク学園出たら、丞くんやげんさんと任務いかなきゃだ!


「にゅぅう!」


「けど、いる時は良いんだ?」


チビの反対の音頭をにやりと笑って潰す。


チビが睨みつけてくるけど知ったこっちゃない。


「そうっすね。そばにいる時だけっすよ?」


「やった♬」


「甘くはありませんか?」


「にゅぅう〜!」


こういう時だけ変態野郎の肩持つんだから、チビさんったら。ま、私に関する事だから仕方ないか。


「そう心配せずとも大丈夫っすよ。にしても、桜花さんは相変わらず、武器に好かれてるっすねぇ?」


羨ましいと言いたげな視線を向けてきた。昔からの体質なのか、何なのか。私は武器に好かれやすいんだよね。


へへへ。


「へへへ。」


「変なものを引き寄せないでいただきたいのですが。」


「魔忌具はこめる魂を間違えただけで、変なものじゃあないっすよ。立派な武器っす。」


ムッとした様子で丞君がいう。


武器のことを武器師の前で悪く言った変態野郎が悪いね。


「しかし、私怨を込めた武器など、忌むべきものではありませんか?」


「人に害なす武器なんか、認めれません。」


ユキやゆずるんは丞君の言葉に賛同出来ないと異を唱えた。


真面目な2人らしい。


変態野郎、助かったとばかりにホッとしないの。


「生み出したらダメなものである。その認識は正しいっす。もし、お2人が作り出したりしたら、自分も含め武器師一同、ただじゃあおかないっすよ。」


丞君の口調は穏やか。けど、視線は鋭く2人を射抜く。


ユキやゆずるんが緊張した面立ちでツバをごくりと飲み込んだ。


「けど、責めるべきは生み出した人であって、武器に罪はないんす。危険はあるから、時には封じる必要があるっすけどね。」


たじろいだ2人に丞君は困ったように笑いながら言葉を続けた。


「魔忌具を見つけた場合、触れず近づかず、報告するっす。他の人が近づいたりしないように分かりやすく囲うのも必要っす。」


「誰かが魔忌具に操られて暴れ始めたら魔忌具が触れてる身体の部位を切り落としたり結界張って閉じ込めたりってのが過去の例かなぁ。」


「切り落とすっ?!」


甲高い悲鳴のような声をマリはあげた。


武器の支配下にあるうちは死なない限りは暴れ続けるから恐ろしい。


銃ならば銃を持つ手を切り落とせば、武器を身体から引き剥がせるから銃の支配下から開放される。ただ、全力で抵抗するから簡単にはいかないけども。


「身体の一部で何とかなるなら運が良い方だ。大抵は魔忌具に操られたら、武器の使用者を諦める他ない。」


他まで死なぬためには、な。とユキは言う。


出来るだけ少ない被害で場を収集するには魔忌具に堕ちた人を犠牲にする方が容易いから、そうする場合が多い。


何とかしようともがいた仲間達が多量に死んで、結局、操られていた本人もだなんていうことも過去にはあったし。


魔忌具に堕ちたら、少なからず周りに被害がある。そんな被害を出して助かるってのも後々辛い目に遭うから考えものだ。


「だから危ないとされているのよ。所持するには空の許可が必要なのはそのためよ。本当、気をつけなさいよ!」


ハハッ。最後は説教で締めくくられちゃった。適当に笑って誤魔化したら、ゆずるんは全くと睨んできたけど、それ以上なにかを言うつもりはないらしい。


話が終わったタイミングで、ユキとゆずるんはなにかを視線で互いに訴え出す。


何やらもじもじしてるけど、どうしたんたろう?説教が早く切り上がったのも、何か気になることが他にあったからかな?


「…………あの、」


ちょっとの間の後。


ユキが遠慮がちに口を開く。


ハキハキものを言うユキはいつだって堂々としている。が、今は引っ込み思案な少女って感じ。


「ん?」


普段のユキは知らないものの、声をかけられ丞君が頭を傾げユキを見た。


「志貴さんの武器の整備をされるんですよね?」


「ボクら、見学しても良いでしょうか?」


上目遣いで遠慮がちにおねだりをする様は人見知りのか弱い幼児がおどおどとおねだりをするような様子。


いつもの強気な2人はいない。


猫被りすぎってくらいにキャラが違う。


「勉強熱心っすね!良いっすよ。何か気になることがあれば、自分で良ければ答えるっすから聞いてくれっす。」


「「ありがとうございます」」


ぱあぁあああと花咲くように笑みを浮かべた2人はやや顔を赤らめていて、恋する乙女って感じの表情。


普段とのギャップが半端ない。


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