264.通信機器をつかいます
私が作動させたのは、一回限りの通信機器。
どこにいても使える優れもの。
実は、いくつか持たされていたりするんだよね。もし必要だったら、この学園に来た初日に使っていた奴。結局、不要だったから使ってなかったけど。
今回、はじめて使ったわけだけど、問題なく作動した通信機器は師匠を映し出した。
師匠からしたら、いきなり目の前に映像が映し出された形だ。驚いたように目をパチパチさせた後、師匠は視線をぐるりとめぐらせ、怪訝そうに皆を見、最終的に私を見た。
『………今度は何をしたんだ、桜花。』
開師匠は不機嫌そうに私の名を吐き捨てる。
久しぶりな弟子の顔見ての一言にしてはひどくない??ひどいよね?
久しぶりぃー会いたかったよマイスイートレディー♡くらいに言えないのかな?
言ったら言ったでキモイと切り捨てるけど。
「失敬な!魔忌具を一つ、拾っただけだし!報告は忘れてたけども、チビ達が大丈夫って判断してるし、問題はないもーん。つか、久しぶりに会った愛弟子に愛の一つもいえないんかぁーい!だから師匠はモテないんだよぉ〜!」
報告しながら文句を言う。他の話にさっさと移行してくれれば上々。説教なしにできないかしらん。
『………ハァ。おい、丞。すぐに桜花の元に行って、魔忌具を確認してこい。』
あ!ちょうど師匠のとこに丞くんがいたんだ!
懐かしの丞くん!
ふわふわ癖毛は短く切るとあちこちに広がるからあまり短く切れないんだとか。常に肩くらいまで伸ばされている髪を後ろでひとまとめにし、何気に武器が装着されている。
優しい顔立ちで、かっこよくもなくブサイクでもない。主人公ではなく、主人公の友人的存在。そんな印象な丞君、久々の登場ですな。
『了解っす。桜花さん、ダメっすよ。武器を容易く拾ってくるとこは桜花さんの悪い癖っす。せめて、武器を拾ったなら俺に見せてほしいっす。桜花さんの武器の管理は俺らの役割なんすから。』
久しぶりなのに、師匠以上にしっかりとお叱りが来る。
けれども、メッと叱る姿に一切の威圧感はない。ほのぼのしちゃう小動物感がある。
「丞くん、久しぶりぃ〜。武器の手入れもついでにいい〜?」
にぃぃーっと笑みを浮かべて、おねだりだ。
手入れは怠らないけど、丞くんにそろそろ見てもらいたいんだよね。
きてくれるなら見てほしい。
『話を聞いてないっすね?……もぅ…良いっすよ。道具も一緒に持ってくっす。』
「武器師、ゲットだぜぇー!」
『桜花ぁ〜??』
甘い声。舌ったらずな甘えたような声。少年のそれ。師匠よりもシロトくんよりも可愛い声なのに、誰よりもその声がおっかない。
第六感が勧告を鳴らす。
危ないぞ、危ないぞとアラームが鳴り響く。これは経験からくる勧告音だ。逃げ出したい。けど、逃げ出したら事態は悪化するってわかっているから逃げ出せない。
「なんで月にぃがいるの…?」
思ったよりも震えた声が出た。けど仕方ない。怒った月にぃがいるんだもん。普通に怖い。なんなら自分より強い魔物と対峙するより、ずっと怖い。
『僕がいちゃあいけないのかなぁ?どうせ、僕にだって話が行くのは分かりきってたでしょ?もしかしてー、次会う時にはみんな忘れるってぇ?……ずいぶんと甘く見られたもんだね?』
にこにこと、あどけない少年の如き笑みを浮かべて、実に楽しそうに問いかけてくる。画面だけを見たら、可愛い系美少年の満面の笑み。
けど、内面を知ってる。あの笑顔がどういうものかを知っている。恐怖しかないわけだよ。
『……まったく。バレれば怒られると分かっていただろう。なぜ、すぐに報告しなかった?』
呆れた様子の師匠。
すぐに連絡しなかった理由なんて一つしかないってのー!何聞いてんのさぁー!
「だって〜。見つけた時、はじめちゃんいたし。拾いたいって言ったらはじめちゃんは怒るじゃん?ダメって言うじゃん?だから…持って帰っちゃって、後から師匠に見せようと思って。」
『で、忘れたと。』
ギロリと師匠は私を睨む。
ま、平たくいえば忘れてた。それしかない。それ以外なんてあるわけがない。
「うん。チビに言われて思い出した。」
ヘヘッと笑いながらいえば、師匠はやっぱりと言うようにため息を吐いた。分かりきってたみたいだね⭐︎
『まったく。そもそも、報告義務があるんだから、後回しにするな。』
「へへ。」
『次から気をつけなさい。』
「はーい。」
素直に返事!私、良い子!
師匠からの説教はこれで終わりかな。ヨシ!
「空様!!」
『とにかく、今回の件には丞を遣わす。武器の保持の可否は丞が判断しろ。』
意を唱えた変態野郎の異議を聞き入れず、今後どうするかだけを師匠は指示していく。
師匠、さっすがぁー!
『はいっす。……桜花さんが説教を聞かないからって、怒らなくて良いわけじゃないっすよ?』
覗き込むようにして、丞君は師匠の顔を見た。
『…………分かっている。』
バツが悪そうに視線をそらす師匠。
自分に非があるって態度に示しちゃあダメでしょ。んなことすると、そこをつけこまれて、叱られるんだから。
『分かってないでしょぉ〜?桜花に甘々過ぎるよぉ〜?』
やはりというべきか、月にぃからの追加の説教がきた。ウッと師匠は言葉を詰まらすけど、桜花さんとしては激甘がいい。甘やかして欲しい限りです。
「全くです!桜花ちゃんは貴方からの説教の方がまだ、まともに聞くんです!」
よし!
矛先が師匠に向いたぜ!私が怒られなければよい!
「まだって言ったよ、まだって。」
『桜花が説教を聞き流すからでしょぉー?』
「へへへ。」
『まったく。笑い事じゃないよぉ〜?まぁ、チビ達が良いって言ったんだったらよほどの危険はないんだろうけどねぇ。』
はぁとため息をつく月にぃ。よし!そこまで怒ってないね。良かった!
『とりあえずは丞が着くまでは取り出すな。良いな?』
ギロリと私を見た師匠。師匠の眼力に、ヒッと息を呑む声が響くのが聞こえてきた。
素でビビられるのが師匠なんだよねぇ。
師匠ったら怒ったりしてないのに、怒っているかのように思われちゃう目力があるんだよ、哀れなことに。
「はぁーい。」
これ以上、叱られたくはないからね。しっかり、良い子な返事しとく。うんうん、桜花さんは良い子。
『どんな武器っすか?』
聞くタイミングを待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて丞君は聞く。
初めて見る武器に胸を高鳴らせている様子。
「銃!綺麗な子なんだけどねぇ。幼いの。良い子だよ!」
今、お見せできないのが、残念だ。
『それは楽しみっす!!幼いってことはーー!』
『それくらいにしとけ。お前ら、武器に関して語り出したら止まらんくなるだろ。』
目を輝かす丞君と楽しく喋っていたら師匠が水を刺してきた。
ちょっとしか喋ってないじゃんかぁ。
ケチめ。
『桜花?僕はあまりおいたをするなって言ったけどぉ〜、あまり聞いてないみたいだねぇ?次に会った時に覚えておきなよー?』
にーっこりと綺麗な笑みを浮かべる月にぃ。笑顔で圧をかけてくるだなんて!
大人げなーい。
次会った時ってぇー…普通に考えたら年末かな?多分、やすみあるよね。……さて、いかにして回避するか、だね?




