24.入学式をやるそうですよ②
村くんは狙いを定めて撃つまでも意外に早い。ちんたらするイメージだったけど、意外に早い。自分で状況判断して撃てるようになれば優れたスナイパーになれそう。
接近戦は全くダメだけど。
「次。んーと。」
「ま…ま、ま…まままっ……待ってください…つ、疲れてしまいまして…打てないです。」
はぁはぁはぁと息をきらしつつ、座り込む村くん。命中率もよければ威力も良い。だけど、数は打てない、と。
銃に弾を込めてなかったから、力を込めて弾として撃ち出す形なんだろう。有心武器でなくとも術式を込めて撃ち出せる銃はある。
弾を込める時間を短縮でき、かつ、術者の実力次第で連続して何発も銃を連発できる優れもの。私の持ついくつかの銃も術式を込めれるタイプだったり。
まぁ私が普段使うのは無心武器であるゆえ、頑丈さとかもろもろ村くんのやつのが優れているんだけどね。
にしても、村くん、肩で息しているなとは思ったけれど。まさか、3発が限界とは。
「……どれくらいで回復する?」
「1時間は動けないです。僕、体育2なんです。体力には自信がありません!」
笑みを浮かべて自信満々に言うけども。自信満々に言うべきことではないよね。
分かってはいたけど、村くん体力が本当に体力ないね。赤子の方が体力がありそうなくらい、体力ないね。谷上とどっこいどっこいだ。
前の時も谷上ほどじゃないけど、動き鈍かったからなぁ。
「そう。ま、とりあえず、魔石を回収しとこっか。」
「にゅぃっ!」
チビが3つ回収しにいく。
すぐに回収しおえ、魔物ごとあらわれるチビから魔物を受け取るけど…
魔石の取り出しがめんどくさいなぁ。
「さて。残り7体だね。一応、2時間かければ村くんが倒せはするかな?」
「え…」
さぁぁああと青ざめる村くん。うん、無理みたいだね。分かってた。言ってみただけだから青くならないで。
んな鬼畜なことするくらいならチビに行かせるから大丈夫。
やっぱり建物から出て戦いを挑むしかないよねぇ。
「だよね。よし、村くんはゆっくり休もっか。で、整理しよう。私にマリ、お兄さん、阿部、桜井が有心武器を持った戦闘員。谷上やツバサは術を使う補助要員。あとは治療担当か武器師か、だねぇ〜。」
周りを見渡しながら確認する。
武器師も戦闘、出来なくはないんだけど、ユキやゆずるんは難しいだろうねぇ。あまり期待できない。
「ちなみに谷上やツバサは何が得意なの?」
共に過ごすようになって1週間ほど経つが、知らんかったな。武器とかくらいしか、知らん。
あ、いや。
谷上は術式が中々上手かったか。サポート系を前に使ってたな。
「俺は防御系とか強化系が得意、だけど。」
「あぁん?ボソボソ話してんなよな。」
「………」
無言。無言でどこか一点を見つめる谷上。
谷上とヤンキーくんは水と油だね。
谷上、すごい顔してる。嫌悪感半端ないね?
1週間経っても2人は仲良くならんよなぁ。まぁ、相性があるから無理なんだろうけど。
「で?ツバサは?」
とりあえず、2人はスルー。話を進めときましょ。
相性の悪さなんて一々気にしてられない。
「………基本の3個の術しか、使えない。」
「あぁ?!」
ヤンキーくん、またしても絡みます。
いちいち、誰かに絡むのはやめてほしいとこだけど。
絡んでいる気はないんだろうねぇ。悪意やら自覚がないってぇのは面倒だねぇ。
「こらこら。阿部ぇ、無闇に絡むなよ。話が進まないでしょ。で?ツバサ。基礎のうちのどれ〜?」
「火、風、水の3つ…。」
ヤンキーくんを黙らせつつ、ツバサに聞けば、ツバサはぽつりと呟くように答える。
術式1〜10は基礎と呼ばれ、ほとんどのものが扱える。非戦闘員でさえ、1〜10の術式は扱えて当然とされているんだ。それを1〜3しか使えないっていうのは驚き。逆に珍しい。非戦闘員でさえ珍しいから、戦闘員ではもっと珍しい。
いや、それしか扱えないのに戦闘員にカウントされるだけの力があるってことで。それだけ潜在能力に富んでいるわけだよね。
いや、だからとしても。
3つしか使えないのに、試験パスできるかしら?闘魔隊は有心武器があれば、入隊は簡単だけど、武器がないならば試験を通るしかないのにね。ということは武器がある、とか?いやでもなぁ。
まぁ、それは今は気にする時ではないか。
今やるべきはあの花々を倒す事。花々に集中集中!
「さて、ではどう戦おうか?直接戦うのは、5人といったとこ。一人頭1〜2体倒すって事で各々行くのもありだけど。」
「それは危険よ。人喰い花は毒があるはず。あの口に噛まれれば動けなくなるのよ?」
「そうだな。全員で動くのも有効ではない。二手に分かれたほうが良いだろう。花々を惹きつけるチームと本体を叩くチームに別れるか。しっきー、君は後者が良い。」
周りを見渡しながら問えば、武器師2人が難を示した。
ちゃんと案を出してくれるから助かるね。しかも、妥当なものだ。
「ま、それが無難かな。チビ、お前は花々を惹きつけて。」
「にゅっ。」
私は本体を誰かと叩きに行き、チビたちに花を引き付けてもらうか。
「あぁ?!1人で十分だろうが。チームになる必要がどこにある。俺だけで十分だ。」
んー?ヤンキーくん。うちらの案が気に入らないってぇのはいいよ?
僕がやりますっていうやる気も買おう。
だけども、自分の実力はきちんと把握しなきゃ、だねぇ。
一人で怪我なく倒せるほどの戦力があるようには見えんし、あるならあるで、ゲームの時に怪我もせんかっただろう。
何でみんなで動くのが嫌なのかは分からないけど。実力もないのに無謀に行こうとするのは困るねぇ。
「花々を蹴散らしながら本体にたどり着いて倒すのよ?簡単にはできないわ。貴方1人で出来るのかしら?」
冷静にゆずるんがヤンキーくんに問いかける。
「……そいつだって1人で倒しただろ。樹里だって。」
ゆずるんに言われ、ヤンキーくんは私に視線を向けてきた。
馬鹿なのかな?
私に出来るならば自分にもできる、と。
まぁ不可能だとは言わない。鍛えていけばどうにでもなるだろう。私の実力も努力次第で抜けるだろう。けど、現時点においてはほぼほぼ不可能に近いと思うがねぇ。
「花の軌道をたった1発の弾で変える。容易くはないだろうな。あべべが扱うのは銃器でもないだろう?」
ユキもユキで冷静にヤンキーくんに語りかける。
「だからって足手まといを連れてって何になるッ!」
ヤンキーくんは叫ぶように言った。その声にツバサがぴくりと反応した。
ーーーなるほどね。
ヤンキーくんは先日のゲームで怪我を負っている。詳しくは聞いてないけど、ツバサも泣いていたし、ツバサを庇って怪我したとか。
ヤンキーくんが1人で行くって言っているのはツバサを連れて行きたくないからか。
「阿部は本気でそれを言ってる?」
「あぁ?!」
「足手まといだって、本気で思ってんのかって聞いているの。」
ヤンキーくんを睨みつければヤンキーくんは舌打ちをし、そっぽを向く。
ーーーカッチーン
教室内の空気が凍りついた。私が阿部を睥睨し、阿部はそっぽを向いて。
他も口を開かずにいるから、冷や冷や冷や冷やした空気があたりを支配する。いやぁ、寒いね!凍えちゃう。
寒々しい雰囲気出してるのは私なわけだけど。
「……阿部くんが言ってること、間違ってない。…武器もない。術式も3つしか使えないから…。」
凍った空気の中、ツバサが呟くように言った。ますます空気が悪化した。
足手まとい。
その言葉が自分に向けられていて、それをツバサは受け入れているようだ。
「………そ。じゃあ、阿部もツバサも来なくて良いよ?」
思った以上に冷たい声が出てきた。その声にヤンキーくんは顔をしかめ、ツバサは肩をゆらした。
2人を傷つけたかも。
けど、気にしてなんかいられない。
ーーーあぁ、しらけちゃったなぁ。
気に入らない。
ヤンキーくんもツバサも。
どちらも気に入らない。どちらも一緒に戦いたくないね。やっぱり私には共に戦うなんてことはできないや。
変態野郎が皆様とか言ってたし、1人でやるもんじゃないと思ってたんだけど。
「ーーーチビ、2人で行こうか?」
無駄に嫌なものに向き合う必要もない。
私は吐き出すようにチビに声をかけていた。




