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246.お芋取りの話をしますよ

眠そうに力なく言葉を口にする桜花。


対して、指示を出されたチビはいつも通りの様子だ。自らにもたれかかる主人をしっかりと支えた上で、主人の顔を覗き込んでいる。


「にゅ?にゅにゅ。」


チビはどうやら異を唱えた様子。


いやいやと首を振りながら桜花を見ていた。


「どーせ、やるのは芋掘りかなんかじゃない〜?だったら、チビはばっちぃーから嫌。」


「………にゅ。」


「寝ててぇ〜。」


「にゅぅ…。」


不承不承と言った様子で、チビは姿を消した。桜花の言う通りに眠りについたようだ。


未練がましく桜花を見つめるチビを桜花は視線も向けずにしまった。


チビが姿を消したのを確認したのち、桜花は猫のようにのびをする。寝るのはやめるようだ。


「芋掘り?」


「魔物って言ってたわよ?」


「植物型、か。」


なぜ、チビが代わりに寝るんだとか、そんなツッコミはせず、皆は魔物について思案する。


桜花が芋掘りというからには、芋系なのだろうと絶対的信頼を示していた。


「芋系っていうと…凶暴なの、多くなかったかしら?」


マリは不安げに皆の顔を見渡した。


それを皮切りに皆が話し出す。男性がいるというイレギュラーはあるが、いつもの雰囲気だ。


「芋を投げつけてくるやつ、とか。」


「それなら、まだ良いが。」


「ツタ系、痛い。」


「痛いですみませんって…あんなの、当たったら死んじゃいますっ!」


「死にはしねぇだろ、どんだけ軟弱なんだよ。」


「頭に当たったら死にますよ?秋明君は甘く見過ぎなんですッ!」


「あぶねーのは避ければ良いだけだっつの。」


「はいはい。皆様?お静かに。」


ざわめき、雑談を始める生徒たちにウサは声を張り上げた。


それにより、皆が口を閉じ、ウサを見た。何らかの説明があるのだろうと待ちの姿勢を見せる。


「今からウサが説明いたしますゆえ、ウサの美声に耳を傾けてくださいまし。……さて。」


ウサは説明を始める前に、視線を向ける。


仮面をつけているとはいえ、男性を見たのは明らかであり、男性もまた、目線で退出を促されたことは分かっているだろう。


「せっかくだから、僕は見学してくよぉ〜。」


分かった上で男性はにやりと笑ってみせた。実に楽しげである。


「は?」


呆けてしまうウサ。


何を言っているか、また、何を考えているか分からないと言った様子。


男性の予測外の言葉に困惑である。


「なになにぃー?僕に見られたら困ることでもありわけぇ〜?」


おちょくるようにウサを見る男性は、ウサのリアクションを楽しんでいるようにも見える。いや、確実におちょくっている。


「………いえ。」


言い返せば、より一層うさにとって困る事態に陥る。ウサにはそれがわかっていたため、文句を言わずに引き下がる。とはいえ、不服そうな態度が隠しきれていない。


「だよね?じゃあ、もうちょっといれるから、授業様子見てこっかなぁ〜。」


嬉しげに桜花を撫でる男性。


ウサが気に入らないと態度に出しているが、それを明らかに無視している。


「みんな、いじめないでね?」


チビを寝にいかせてから、多少眠気がマシになった桜花は男性を上目遣いで見つめた。


「いじめないよぉー。桜花のお友達でしょう?」


「んー、大事な仲間ぁ〜。」


にぃと嬉しげに笑う桜花。その笑顔がいかに皆を大事にしているかを示していた。


「そ。じゃあ、軽く鍛えるかなぁ〜。」


桜花の笑顔に、男性はまぶしげに目を細めると、皆を見渡した。


その目は獲物を前にした肉食獣のそれであった。


「志貴様?」


ウサの声は低く、冷たくなる。いつになく冷たい。


何、獣を皆にけしかけているんだと非難めいた声であった。


「なんで、私を怒るの?!……とりま、概要説明しとこかぁー。」


桜花は自分は悪くないと主張しつつも、取り返しはつかないと、話を進める方向で逃げた。


「…………皆様、腹を括ってくださいますよう、お願い申し上げます。」


「なに、その言い方はぁー。ひっどいなぁ〜。」


「まぁ、月にぃは時々悪魔的にしごいてくるからぁー。ま、いじめて良いのははじめちゃんだけね?」


「桜花までぇ。まったくぅ〜。」


桜花と男性の駄弁りを横目にウサは此度のイベントの概要を話し出した。


声はいつになくテンション低く、これからの事を憂いている様子だった。











◇◇◇桜花side◇◇◇


あう…ねむい。


チビに代わりに寝にいかせたけど、やっぱりまだ眠いなぁ。


まぁでも、芋掘りなら何とかなる。これくらいのコンディションでもこなせる。


普通なら。


そう、普通なら問題ないんだけど、今日は月にぃがいるんだよね。


あーぁ。サボりたい。けど、サボれない。つらたん。


夏休みの終わりがけに迎えにきたかと思ったら、師匠達と過ごした。で、師匠達は直前までそばにいようとした。離してはくれなかった。弟子離れができない人達だぜ、まったく。


本当に直前までそばにいたせいで、遅刻するわぁってなって月にぃに送ってもらったんだよね。


のんびり過ごせば問題なかったけど、組手したり術式見てもらったり、限界まで身体を動かしたから…


疲れたし、眠い。


師匠達は体力おばけで、加減ってのを知らないから困るぜ。……まぁ、調子に乗った私も私なんだけど。ギリギリまで動けるって食らいついて鍛えてもらっちゃったけど。


結果。


チビに代わりに寝ててもらって何とか活動できるとは…情けないぜ。もっと体力つけなきゃなぁ〜。


「桜花ぁー?はじめちゃ…あぁ、ここでは変態野郎だっけぇ?ほら、変態な子の話を聞きなぁ?」


ぼんやりしてたのが月にぃにバレた。この人、めざといからなぁ。


他人に興味がないかと思いきや、気に入った人には固執する。意外と執着する。ある意味、気に入られるなと言われる哀れ哀れ。


見過ごしてもらえない。


「ん?桜花ぁ?喧嘩売ってる?」


カンが良いから怖い。


ほっぺたぷにぷにつつくだけだから良いけどさ。


「お二方。お話を聞いてくださいまし。それから、私の事は親しみを込めてウサとお呼びください。」


いつになく、変態野郎の声が硬く、冷たい。


んー、月にぃを警戒して何だろうけども。冷たい態度取るより、普通にしてた方が波風立たないと思うなぁ。


その辺、ぶきっちょだよね。


「僕は聞いてるよぉ〜。みんなで芋掘りをする。単独でやっててぇ、採った芋の数を競うんだよねぇ。」


月にぃは言う。


競争するんかぁ。じゃあ成績良かった3名にはお小遣い的な?師匠達もやる気出させるためとはいえ、払いが良いねぇ。


「芋掘りかぁ〜。採った芋は食べて良い?」


上位を取るよりより、食べたいな。桜花さんは。


お小遣いはなしでいいから美味しいご飯を作って久しぶりにみんなで食べたいぜ。


マリさんが目を輝かせて変態野郎を見てて可愛い。


「……構いませんよ。」


テンション下がったね、変態野郎?


芋だなんて面倒な相手を相手取るなら楽しみなきゃ嫌だから。終わった後のご褒美必要だから。


「桜花、僕は大学芋が食べたいなぁ。」


上目遣いで言ってくる顔はゲームのワンシーンのよう。保存して何度も観れる系のワンシーンだ。


顔、整ってるからぁ。


「おっけぇ。」


月にぃも食べていくらしい。


月にぃ、甘い物、好きなんだよね。可愛いパフェ食べる月にぃとか可愛くてめっちゃ似合う。笑ったらキレられるけど。


女かよって茶々入れたバカが過去にいたけど……うんうん。人の好きを笑っちゃいけないよね。


いっぱい食べるから多量に作れてありがたいんだよね。

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