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235.じゃれつきつつ、寄り道をします


「…………はぁ。祭りまでまだ時間がある。武器屋でも行ってきたらどうだ?喜藤君が行きたがっていた。」


いつもならば、マリや私達の会話にだる絡みをしてくるはじめちゃん。


今日はため息一つで流していた。


ただ、そのため息が嫌味ったらしい。そういうとこがマリ達には癪なんだろうねぇ。


「んな、テメェッ!」


はじめちゃんが言ったことに対し、お兄さんは珍しく大慌てだ。


私には聞かれたくなかったらしい。


なぜ?


「お兄さんが?」


けど、聞いちゃったからね。


私ははじめちゃんに聞き返す。うらめしそうにはじめちゃんを睨むお兄さんなんて見えない。


「あぁ。桜花ちゃんのナイフが買いたいらしい。」


肩をすくめて言うはじめちゃんをなおも、お兄さんはころさんばかりに睨みつけている。が、はじめちゃんには無視されてる。あわれ。


にしても、私にナイフ、かぁ。なして?私、武器はたくさんあるのだけども。ナイフはこれ以上増やせないよ?チビ達にも怒られちゃうし。


「前に桜花ちゃんのをなくしたんだろ?気にして俺にナイフを一緒に選んで欲しいって相談してきたんだ。使うのが桜花ちゃんなら桜花ちゃんが選んだ方が良いだろ。」


理由を問うようにはじめちゃんを見れば、意図を汲み取ってくれる。


察しが良くて助かるぜ。ヨシ!


「なるほど?」


前に任務の時に貸したナイフが紛失したことを未だに気にしてたか。


お兄さんの回収ばかりに気を取られてナイフやら何やらはそっちのけだったんだよね。気にしなくて良いのに。


話しやがってとはじめちゃんを睨んでるお兄さんだけど。なんで、私にじゃなくて、はじめちゃんを相談相手に選んだんだか。


私に言ったら、買わなくて良いよって断られるとかを気にしたのかな?


「ふぅーん?武器はあかんぼう以外では買わないんだよねぇ。勝手に増やすと怒られちゃうし。……近いから行く?私愛用の武器屋さん。」


はじめちゃんも言ってあげれば良かったのに。


多量にある武器を増やせば、武器たちにも師匠たちにも、愛用の武器師たちにも怒られるって知ってるだろうに。


「気になるわ!!」


「行く。」


お兄さんより先に、マリやツバサが反応した。


女の子が喜ぶような店じゃないけど、目をキラキラと輝かせている2人。可愛いんだけどね。


「じゃ、いこっか。お兄さん、ナイフは気にしなくて良いからね?」


「…………貸してもらって、なくすなんざ、だせぇだろ。せめて、新しく買って返したかったんでぇ。」


不貞腐れたように言うお兄さんは可愛らしい。けど、笑ったらなお、怒りそうだ。


まぁ借り物をなくしたわけだし、気になる気持ちも分かる。消耗品でもあるから、私は気にして無かったけどね。


「たくさんあるから気にしなくて良いのにぃー。」


私にゃ、軽く流すくらいしかできないね。


買ってくれたんだったら、受け取らなきゃかな。お兄さんが、納得しそうにないし。


「桜花ちゃんの横に立つにはもらってばっかじゃあいけねぇよ。」


頭を撫でつつ言うお兄さんは笑顔。……けど、意見は曲げそうにないね。仕方ない、か。


好意は普通に受け取ってもらいたいんだけどなぁ。重荷になるんじゃ、仕方ないかぁ。


「まぁ良いけどぉ。任務、どうだった?確か、お兄さんの任務の日は雨ざぁざぁでしょう?」


とりあえず、話を変えとこー。


「天に見放されてた。あわれ。」


話を変えればすぐにツバサが食いついた。


馬鹿にしたように鼻で笑うツバサ。


そんな態度だからしょっちゅう喧嘩になるんだろうけど。お互い様だからなぁ。


「うっせぇよ。ツバサちゃんの時だって、雨だっただろうが。……雨だったから取れたんでぇ。」


「お?雨石かぁ。運が良いねぇ。」


雨石は雨の日にのみ現れる、金平糖みたいな魔物。綺麗な魔物で、見る角度によって異なる色に見えて、七色に見える身体はかたいの。


魔石は雫の形をした青の石。


個体ごとに青の色やら染まり方やらが違うんだよね。お兄さんが渡してきたのは透明の中に青を垂らしたような今まさに混ざりかけているぞっていう模様の石が一つ。綺麗だ。


武器に加工したりはできないけど、綺麗でそれなりに丈夫な石だから装飾品を作ったりするのに人気なんだよね。


「おう。桜花ちゃんならもっと状態良く取れるんだろうけどな。1つしかねぇけど、せっかくだから。」


「十分、綺麗じゃん……て、くれるの?」


私に渡してくるお兄さん。お土産らしい。レアアイテムなのに、良いのかな?


意外とお値段するよ?お小遣い稼ぎには良き良きですよ?良いのかな?


「おう。桜花ちゃん、好きだろ。こういう石。」


にかっと笑う姿は子犬のよう。


褒めて褒めてと尻尾を振っているようで。尻尾が錯覚で見え始めてしまうから、可愛らしいとか思っちゃうんだよね。


本人に言ったら怒られそうだから言わないけど。


「綺麗ねぇ。私達には?」


「ねぇよ。2人は花より団子だろ?石なんざ、食えねぇぜ?」


「綺麗なのも好きよ!!私達を何だと思ってるわけ〜?」


「……加工したやつ準備が普通。だから、モテない。」


2人は容赦がない。ズバズバ物を言うねぇ。


お兄さんは多分、今後も二人にはお土産準備しない気がする。


「……うるせぇよ。」


嫌そうな顔でボソッと返事するお兄さんは本気で嫌そうな顔をしてる。


不機嫌丸出し。


マリやツバサがずばずば言う分、お兄さんの態度にも遠慮がないよね。


「あはは。まぁまぁ。ありがとう。雨石の魔石は意外に持ってないから嬉しいや。あんま出会えないんだよねぇ。」


私には雨石との縁がないらしい。任務中に雨も滅多にないんだよね。ま、仕方ないけど。マジ、遭遇するのは運だから。


「おぅ。」


はにかむお兄さん、眼福。


イケメンって嬉しそうに笑うだけで周りを癒すんだよ、凄いよね。


「確か、二つくらい採取出来てなかったか?1つ、ずっと何か作業してただろうに。」


「…………無駄なことばかり。」


じとーっと睨むが、やはりはじめちゃんは素知らぬ顔。


お兄さんもお兄さんで隠さなくて良いのに。


「何か作ったの?」


はじめちゃんからのリークを聞いた以上、私も聞くぜ?


気になっちゃうだろ?


「………これ。」


ちょい歪だけど、センス良く作られたものをお兄さんが見せてくれた。ネックレスには短く、ブレスレットには長い、か。


渋々ながらに出したけど、可愛らしいじゃん。


「可愛いわね!カイさん、器用よね!」


「生意気。」


「…………長さに失敗したんでぇ。」


お兄さん不服そう。実に不服そう。


まぁ…お兄さんは完璧主義なところがあるからなぁ。


「けど、十分可愛いわ!!見せれば良かったのに。」


「んなちゃちなもん、桜花ちゃんには相応しくねぇだろ。」


「ふさわしくないって私はすごい人になってないかぇ〜??十分、可愛い。ね?チビ?」


「にゅぅー。」


「こっちはお揃いになるようにしようか?」


「にゅっ!」


嬉しそうなチビさん。うんうん、可愛い。


「……チビにゃ、ちょうど良いか。」


「ピッタリぃー。」


可愛かろう?私の愛しの武器さんは可愛かろう?自慢のチビさんじゃぞ?


えらそうに胸を張っている様は偉ぶってる子供みたいで可愛いのじゃよ。


「へぇ。似合ってるわ!!」


「可愛い。チビの目、深い青だから。合う。」


「え?あ、本当!黒の瞳かと思ってたわ!藍色ね??」


「にゅ……」


こらこら、マリが近づきすぎとはいえ、チビったら、不機嫌そうにし過ぎだねぇ?可愛いけど、メッだよ?


唾吐き出しそうな様子で、鋭い爪を惜しげなく晒している。こりゃあ、マリがさすがに危ない。


「チビさん、爪はしまいなさいな。」


一応、注意はしとく。


本気で襲いかかったりはしないだろうけどね。


「こわっ!目を見ただけじゃない!」


「近ぇからだろ。マリちゃんは桜花ちゃんに近づきすぎでぇ。」


「自分だってベタベタじゃない。」


「俺は良いんでぇ。」


「にゅぅー……。」


「うんうん、チビ?爪をしまいなって。」


なんだかんだ話しつつ、武器屋に向かったのでした。


久しぶりの賑やかしさ。やはり、楽しいね。たくさんに囲まれるのは慣れてるから嫌いじゃないや。

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