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226.やはり、ピンチです

魁斗は無表情で短く、問いかけに答える。無愛想な態度になってしまっているが、丞はそれを気にする様子もなく、人好きする笑顔を魁斗に向けていた。


「魁斗君っすね。仲間とはぐれたなんて、大変だったっすねぇ。げんさんに会えたのは良かったっすねぇ。不幸中の幸い。魁斗君、運が良いっすね!」


「……おぅ。」


なぜか魁斗の状況を話さずとも知っていた。げんか。あるいは桜花達が周りの戦闘員達に広めているのか。


分からないが楽しげに話す丞にわざわざ聞く元気もない。丞の話を聞きつつ、魁斗は丞の横を歩いた。


「げんさん、怖くなかったっすか?終始無表情だし、言葉足りないっすからねぇ。けど、優しい人なんすよ!魁斗君にも発信機を渡しててくれたから、俺も魁斗君に会えたわけっすから!ま、そのおかげでげんさんを発信機で見つけれなくなったっすけど…あ、安心してくれっす。あっちからは俺らの場所は分かるっすから!」


発信機やそれを探すための機械を魁斗に見せつつ、笑顔で話していたかと思えば、慌てだし。


大丈夫。大丈夫と繰り返し、不安を持つ必要はない事を主張し始める。


「そう、か…」


「す!げんさんの事だから良い感じに合流してくれるはずっすよ!賢い人っすから!!と、ご注意っす!」


「あ、ん?」


話途中に丞は魁斗を自身に引き寄せた。魁斗は丞の顔を見るが、ふざけている様子はなく。


彼の視線をたどって、魁斗は草の方に視線を落とす。そこには青々とした膝より下くらいの丈の草草があたりを覆い尽くしているのが見えた。


今、魁斗が触れそうになっていたのは"草"。どこにでもありそうな雑草しか、見当たらない。


おかしいとこは何もないと魁斗は怪訝そうに丞を見た。


「これは草っす。煎じると美味い茶が飲めるっす。けど、生きてる間は毒があるから注意っすよー。無防備に近づいた人間を毒殺する子っす。えいやっと殺すと毒が消える不思議草っすね。」


草に刃を突き立て、回収するかと思いきや、遠くに投げるようにして捨てつつ、丞は言う。そして、行くっすよと再び歩き出した。


その後も、げんとは違い、丞はしゃべるしゃべる。歩きながら、あたりへの注意もしているが、口も止まらない。


とにかく丞は話し続けていた。


魔物だったり、小話だったりと役立つ情報が数多くあってありがたくもあるが、よく話が止まらないなと感心してしまうくらいに丞は話す。


ゆえに。


丞の話が止まって、その場が静かになった時は魁斗は背筋が凍りつく思いとなった。普段話が止まらない人が黙ると不気味だ。


「………魁斗くん。君はこのまま進むっす。真っ直ぐ行ったら良いだけなんで、難しくないっすよ。」


丞は足を止め、魁斗を振り返ると言った。


先ほどまで、楽しげに話していた様子とはまったくもって違う様子に魁斗は眉間に皺を寄せた。


「あん?」


はあはぁと荒い息遣いとなっており、魁斗は聞き返すのも億劫な状態。嫌な雰囲気はひしひしと感じており、冷や汗は止まらない。


表情豊かで、コロコロと変わる表情で、ビビった様子も包み隠さず見せてくる丞。今はそれが強ばり、明らかに身をかたくしている。


何があったのか。


あたりの気配を探ってみるが、魁斗には分からない。しかし、何かがあるはず。答えを求めて魁斗は丞を見る。


「良いから急ぐっす!魁斗君は限界っすよ。早く安全なとこにいく必要があるんす。俺が時間を稼ぐっすから。」


オブラートに包み、魁斗を思いやっているが、丞の言葉は魁斗の胸をえぐる。


つまりは足手まとい。


つまりは自分をおいて先にいけと言う事。


守られるだけだと言う事。


悔しくて悔しくてたまらないが、魁斗は言い返すことはできない。


先ほど、魔物から得た傷は、応急処置はしたものの、ズキズキと痛み、思考を鈍らせる。頭も身体も重たく、鉛でも巻かれているかのようだ。


げんとともにいっとき、木に登ったときでさえ、うまく登ることができず、時間がかかった。歩くのさえ億劫であるのだから、まともに戦えぬだろう。


魁斗はギリッと奥歯を噛み締める。共に戦うことすら許されぬなんて。逃げるしかできないなんて。誰かに守られるしかないなんて。


「何かあったら、これを投げて欲しいっす。誰かしらが近くにいたら、もしかしたら。」


丞は押し付けるように球のようなものを渡すと、魁斗の背を押した。それはいつぞや、桜花が作っていた投げると煙が出る玉に似ていた。


「…ッ!すまねぇ。」


魁斗はふらつきながらも歩を進めた。必死に邪魔にならないように進むしかない。


わかっているからこそ、必死に前へ前へと進んでいった。


せめて。


せめて、邪魔にならぬように。


げんも丞も見ず知らずの魁斗のために動いてくれ、生かそうと最大限の事をしてくれた。


ならば、せめて生き残ってみせると魁斗は足に力を入れる。死んでは2人に申し訳ない。


魁斗は前に進むことだけを考え、足を動かしていった。


途中、げんや丞がくれたものを確認し、もしもの時はどう動くか考えつつ、魁斗は先に進んでいく。




丞と、別れて5分くらいか。




ともかく、言われた通りに直進していた。傷の痛み、疲労、恐怖…様々な要因が魁斗の身体を鈍らせ、上手く動けないようにしていたが、出来うる限り進んだ。


げんは、丞は無事だろうか。心配になるが、今は自分の事に集中しようと魁斗はひたすら、前に進む。


「シャアっ!」


時折、魔物には出会うが、幸いに今の魁斗でも何とか出会える連中ばかり。魁斗は番傘で襲いくる魔物達を薙ぎ払いつつ、前へと進んでいく。


誰かに出会えれば。


願わくば、桜花達に出会えれば。


丞やげんを助けてくれと頼める。他力本願な思いに泣き出しそうになりつつ、桜花達に出会えることを願ってひたすら歩いていく。


「gurururururururu」


歩く中で、唸り声が魁斗の耳まで届いた。


魁斗の身体が神経でも触られたかのようにビクンと反応する。


動物の唸り声も魔物の唸り声も大差ない。似たような音で判別などできない。


しかし。


魁斗の本能がヤバイと告げていた。これはヤバイ音だと警告音を鳴らす。


一度、聞いたことのある魔物の唸り声だったからこそ、敏感になっていたのかもしれない。


全身から噴き出す嫌な汗は止まりそうにない。魁斗は恐る恐る音の方を見た。


熊と狼を足したような見た目。獲物を見るような獰猛な瞳は魁斗を捉えて離さない。唸り声を上げるために開けられた口元には鋭い牙が姿をのぞかせていた。


やはり、先程遭遇した魔物だ。


魁斗は自身の血の気が引いていくを感じていた。


先程、魔物は5匹いた。それがいまは3匹。それだけが不幸中の幸いと言えようか。いや、言えるわけがない。


さっき、何とか応戦しようとしたが、手も足も出なかった。1匹に対してだって、敵うか分からぬほどに魔物は強い。


5匹ではなく3匹だから大丈夫だぜ!だなんて言えるわけがない。


目を血走らせた魔物は、先程会った5匹より気持ち大きく見えた。


「gurururururururu」


唸り声をあげつつ、じわりじわりと距離を詰めてくる。これはヤバイ。絶体絶命だ。


魁斗は迷わず、丞から渡されていた球を地面に叩きつけ、荷物からげんから受け取っていた蜘蛛型魔物を取り出すと切った。ありったけの魔力をナイフにこめる。


それは魔物たちが魁斗めがけて飛びかかったのと、ほぼ同時であった。


瞬時に発生した魁斗を囲うように現れたこと壁。それは魔物達を魁斗に近づけないように阻む。


壁があるとはいえ、距離は1メートル程度。口を開き、爪を立てている様は恐ろしい。迫力がある表情が目の前まで迫る様には、魁斗も腰を抜かしてしまう。


ピキ。ピキピキ。


嫌な音が聞こえてきた。これ以上、魁斗に為す手はない。だというのに、聞きたくない音が響いている。


魁斗が込めた魔力が少なかったからか。見れば、壁にヒビが入っている。これが壊れれば、ますます身の危険は高まる。




どうするかーー何もできない。できることがない。




逃げるかーー逃げるには腰が抜けてしまっている。身体も重たく、俊敏な魔物から逃げれる気がしない。




魁斗は必須に考えるが、良い案は浮かばず。目の前まで迫る魔物を呆然と眺める他、なかった。目がじんわりと熱くなるのを感じる。泣いたところで、何も変わらないのに。


できる事はないのかと魁斗は拳を握りしめた、その時だった。


「駄犬如きが吠えんなよ。うるさいなぁ。」


突如、声が聞こえた。そして、声をかき消すように続いて破裂音が響いた。


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