194.お出かけしてます②
危ないとこに行く予定なんてないのに、任務を受けるにあたって、引率者を2人もつけられた。
重要だから繰り返すよ?
ワクワク学園の中でも、私は実力者に入るはずなのに、経験だって飛び抜けてるのに引率が2人もつけられた。
師匠が過保護すぎる件。
他の子に対してならば1人だけつけるはずなのに、私には2人。あり得ない。
「ウサ先生?否定はしてくれないんだね?僕、性格悪いってウサ先生に思われているのかな?」
ニコニコと何を考えているのか悟らせない笑顔を浮かべたまま、わんこ先生ははじめちゃんに声をかける。
性格が歪んだ質問はいつものことなんだけど。
「え、あ、いや…ち、ちが…」
はじめちゃんは狼狽る。
笑い飛ばせば良いだろうに狼狽るなんて反応は逆効果。もっと窮地に陥るだけだろうに、不器用だよねぇ。
「同僚に冷たいよね?仲間だって言うのにひどいね?」
ニコニコニコニコ。
笑顔でいつものノリで怒った様子は一切なく、わんこははじめちゃんに話しかけ続ける。
が、その内容ははじめちゃんを責めている。
「す、すみません。」
はじめちゃんは小さくなってもうしわなく無さそうになっちゃってらぁー。
今まさに性格の悪さを発揮してるんだから、性格悪いじゃんって切り捨てればいいのに。事実だろって言えないのが、はじめちゃんなんだよね。
「はじめちゃん、喋ってばかりいないで手も動かしてくれる〜?せっかく作ったのが冷めちゃうじゃん。」
まったく。
わんこ先生はやっぱり性格が悪い。
時折、意地悪な物言いをするんだから。とくにはじめちゃんへの当たりは強い。
「え、あ、あぁ…すまない。」
はじめちゃんは私にも狼狽る。うん、気が小さいよね。
とはいえ、止めていた作業を再開させ、キビキビ動き出す。
仕事はできるタイプなのよね。気は小さいけど。
はじめちゃんは三つある鍋を全て、机に持っていくと、蓋を取った。
煮込んでいる最中も香りがしてたけど、蓋を取ったことでさらに香りが強くなる。うん、良い感じに出来上がっている。お腹すいたね。
「ん?これは…イカかぃ?」
鍋の中身が気になっていたのか、わんこ先生は鍋を見つつ聞いてきた。
それ以外には見えんでしょうに。
「そそ。さっきの奴を使ってのお昼ごはーん!」
先ほど戦ったイカさんですとも。取れたてな新鮮なイカ。
イカのくせして水ではなく、もぐらのように土の中に生息する。しかも、墨を吐いて退避するでもなく、好戦的なのね。
なにより、コイツは生で食べられない。採れたてだろうが、刺身で食べると腹を下す。不味い。とてもじゃないが食べれるもんじゃない。
火を通せばイカみたいになって美味しく食べれるから不思議なんだよね。
「………イカとスープ?」
イカが丸ごと煮込まれている様を見て、わんこは私に視線を向ける。
笑顔のままだけど、戸惑いが手にとって分かる。おおいに戸惑っているね?普段、いけしゃあしゃあとみんなをいじめるわんこの戸惑う姿は見ててスカッとする。
イカとスープだけだと、主食がなくて物足りないよね。
とはいえ、こんな場所で作り立てのものが食べられるだけありがたいんだけどね。
「そ!量は十分あるからどんどんお食べぇ。」
みんなが十分に食べたって食べきれないくらいに作れちゃったし。
仕込みし過ぎたと思ったけど、思いの外、イカが取れたから、準備していた分、全て使い切って調理した。
残った分は術式に入れとけば腐らせずに持って帰れるし、困ることはない。晩ごはんにでも食べる。
「さっきの話はここにつながるのかな?」
さっき?さっきっていうのはまずくとも美味しいって言えって話かな?
まずくなんて作ってないけど?絶品だよ?美味しいはずだよ?わざと食べれないものは作らない。
「ん〜?イカ、嫌いだったー?まずくはないはずだよ?」
「イカの煮物とスープだけって斬新だね?志貴さん、普段ならご飯とかまで用意してるでしょ?」
ああ、いかとスープだけなのに反応してたんだね。イカを手に入れれるって分かってたからイカ飯作りたくて。作る気満々だったんだ。知らないと鍋開けてビックリしちゃうよね。
作る時にリアクション、期待はしていたけど、思った通りの反応だ。
まぁ…思ったより不満そうではなく、いつもと違うねぇくらいのノリだけど。
「準備してもらったってーのに、食事内容に文句言うって人間ちっちゃいねぇ。さすがはワクワク学園の教員陣。人間大きい奴がいない。」
「桜花ちゃん、口が悪い。」
「生まれつき〜。」
「まったく…わんこ先生、これはいかめしですよ。」
はじめちゃんは気付いていたか。作ったことあったもんね。
イカだけで煮込むでも良いけど、そうするなら切るでしょう。丸ごと煮込まんよ。そうするにしても私は主食がなきなゃ嫌な派だからパンかご飯かくらい準備する。
今回はイカが出現する場所を通る予定だったから先に3種のご飯を準備しておいた。いかめしが食べたかったんだよね。
「いかめし?」
あらあら。
わんこははじめてのいかめしなのかな?桜花さん、わんこの初めてもらっちゃったぜ!
「えぇ。………このように中にご飯が入っています。桜花ちゃんの事だから……」
それをはじめちゃんは食べやすいように輪切りにし、中に詰められたご飯をあらわにしていく。
3つの鍋から一つずつ取り出すとササっと切っていく。手慣れているからこそ早いね。
「ほら、鍋ごとに入っているご飯が違いますね。桜花ちゃん、3種は作りすぎじゃないか?」
切り終えた3つのいかめしを、皿に盛り付けて行った。大皿に3つとも綺麗に盛り付けてくれる。
ただし、作りすぎという注意付き。
「持って帰るから良いの。お兄さんとかマリに食べさーーー…あ、やべ。何も言わずに出てきたから……んん。あー…やっべ。今、大捜索とかしてるかも…?」
お兄さんに食べさせようとか思ってた。マリとか喜んでたくさん食べてくれるかなとか。そんな事を考えてたら、たくさん作りすぎちゃった。けど、消費できるし大丈夫とも思ったんだよね。
イカが獲れる場所に行くからいっぱい作ろってしっかり仕込んできた。
ただ…みんなを思い出して、ちょっと面倒な事が起きてそうだなと気付いてしまった。気付かなきゃよかった。気づかなかったことにしとくかな。
あー…でもなぁ…
朝一、というか、夜も明けないうちに出てきた。誰にも言っていない。日がのぼってから、いつものようにお兄さんが部屋を訪ねてくるはず。私がいないと気づいたお兄さんは探すと思う。
みんな、毎日顔を合わせるのが当たり前だからね。その当たり前が崩れたら……うーん。声かけてくるべきだったなぁ。すっかり忘れてた。てへ。
「大騒ぎになっているだろうね?」
ニコニコ笑顔を崩さないわんこ先生は面白がってそうだね?確実に面白がっているね?
他人事だからなんだろうけど、良い性格してる。
「言ってこなかったのか?」
嫌そうな顔をするのははじめちゃん。
明らかに騒ぎになるからね。そして、収束にははじめちゃんも関わらなきゃいけない。それがわかっているからだろう、嫌そうな顔をする。
「ん〜…変態野郎に擦りつければいいか。そんなキャラだし。」
良い感じに擦り付ければ、私が怒られる量が減るはず。
おそらく、にゃんこたちにも叱られるはずだし、叱られる量は減らしたい。説教はいやだ。
「こら。」
「だってお兄さん達、怒ると面倒だもん。とりあえず、これだけでいっか。足りなかったらさらに切る形で良いでしょ。」
イカ飯を並べつつ、話は終了させる。
はじめちゃんは気に入らないという顔をしているが、ムシムシ。
「なるほど?手がこんでいるね?」
わんこも自分は関係ないと、料理に関心を向けている。
箸を持って、食べる準備万端だ。
「術式で保存可能だからね。ご飯は前もって準備できたし、イカさえ手に入ればあとは詰めて煮るだけ。」
「休憩の合間にやっていたのはこれだったんだね?」
「そ。」
「ご馳走だね?ありがとう?」
さっきは若干不満そうというか、戸惑う様子だったけど、厳禁なもんだねぇ。
白飯を準備するかは迷いはしたけどね。準備しすぎても困るから今回はやめといたんだよね。
「どういたしましてー。開けたらイカしかなくて嫌がらせだと思ったー?」
イカ飯を知らないなら、驚く光景なのかな。
取立てほやほやのイカは美味いんだけど、さすがにそれしかないのは嫌だよね。
「まぁ?僕だってお昼期待してたからね?志貴さん、料理がうまいから?」
「さすがに我が身にも降りかかる嫌がらせはしないよ。ま、私だけなら、イカだけでも気にしないけど。」
さすがに食べ物で嫌がらせはしない。




