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192. 間話ですよ②

ツバサは話には興味があまりないらしく、早く行かないの?と、視線で桜花を促していた。馬鹿にしようとかではなく、その場のノリでの発言でしかないわけだ。


しかし、マリには多大なるダメージを与えた。


「おつじゃなぁああああい!!!じゃあどうしろって言うのよ!」


両手を振り上げ、声を張り上げるマリ。目には涙すら浮かんできそうだ。


それをツバサはつまらなげに見つめ、引きずっていくと頭を傾げ、アイコンタクトを周りに送っていた。


「お、落ち着いてください、マリさん!マリさんは太ってないですよ?」


ツバサを即座に止め、マリに近づいたのは佳那子。場の収集を試みた。


「うぅ…カナちゃんは可愛いし、小柄だし、太ってないじゃないの〜…私、腕にも足にも付いてるのよ〜…。」


小柄な佳那子は確かに痩せ型だ。痩せすぎとまではいかないものの、肉はあまりついていない。


2人並べば、マリがぽっちゃりと言えなくもない。


「マリさんのは筋肉じゃないですか。筋肉は脂肪より高い重たいんですよ?きっと筋肉が増えたんですよ!」


「………お腹にもお尻にもついてるのよ。」


佳那子が何とかなだめようと、優しく言うが、マリの気分は浮上する様子はない。弱々しくマリは言葉を発する。


マリの様子に佳那子は狼狽え、言葉が出てこない。


「まりりんの場合、胸に増えただけじゃないか?ますます大きくなっているだろう?」


マリの後ろにいつの間にか回り込んでいたユキがにんまりとした笑みを浮かべつつ、マリに抱きつく。その手はいやらしい動きをしており、ギュッとマリの身体に触れていた。


たわわをしっかり掴む事で、マリのそれは強調される。なんとも視線の行き場に困る光景がそこにあった。


きゃあっとマリから上擦った声が上がる。そして、瞬時に目を吊り上げ、抱きついてきたユキを振り解こうと動き出すが、マリの拳がユキに届くより先にユキがマリから離れていく。


慣れた動きだからか、こういう時だけユキは素早い。武器作りに専念するだけではなく、身体を鍛えているからだろう。ユキは明らかに動きが軽やかになっているように感じられた。


「……逃げ足が早くなってない?」


ユキの素早さにマリは目を見張っていた。前よりも明らかに逃げ足が速くなっている。


ついついつぶやいてしまうほどに。


「ボクは強くないからな!」


褒められた!と言うかのようにユキは嬉しげに笑い、胸を張って見せた。


が。


その様子には呆れてしまう。


「威張る場所じゃないわ。」


「鍛えてるんだ、胸を張るさ!」


マリに突っ込まれてもなお、ユキはどーんと堂々と胸を張っていた。


「こんなとこに生かしてどうすんのよ!」


成長は確かにすごいが、生かす場所が違うと主張したい。


マリの主張を理解した上で笑っているだろうユキにはそれは無駄な気もしなくはないが。


「まぁまぁ。ほら?ご飯いきましょう?」


ユキの行動により、はからずとも空気が変わった。そこを樹里は見逃さずに、声をかける。


腕を持ち、立ち上がるように促してみる。


「………けど。」


マリは迷うような仕草を見せるも、立ち上がろうとはしない。


「マリ、知ってる?」


再び、桜花が声をかけた。


「な、何よ…!」


先程の前科もある。桜花の話にマリは2回目であるが故にさすがに、警戒する。


聞きたくなければ言わせなければいいのだが、真面目に話を聞くあたりが、マリである。


ふふふーと悪い笑みを浮かべながら桜花は口を開いた。


「断食ダイエットをした人って将来、骨粗鬆症になりやすいんだよ?」


「こ、こつ…?」


「骨がスカスカになりやすい。つまりは骨折リスク大って事ぉ〜。くしゃみだけで背骨が折れちゃうとかヤバくない?治療費もかかる上に日常的に痛みが伴う。生活費に加えて、痛み止めとか医療費がかかるとかぁー。身体的にも懐的にもつらたーん。」


桜花があまりにものんびりゆったりしたノリで言うから迫力はなく、怖さ半減。しかしながら、ほんわかとヤバいことは伝わってくる。


「いきなり食事をやめたら身体に悪いです。やるならせめつ、置き換えダイエットにしましょ?」


マリが言葉を失っていると、佳那子がね?と優しく諭してくる。


桜花の言葉を否定してくれないとか、心臓に悪い。それほどまでに身体に悪いというのか。


「置き換え?ダイエット食品なんて持ってないし…高いのよ。」


「マリさんがよく食べていらっしゃるオヤツ、アレを変えていきましょう。」


「お。作る?」


佳那子の言葉に反応し、桜花が楽しげに笑った。


作ると言うことはマリのおやつを桜花や佳那子が作ってくれるというのか。食べる量を減らさずにいけるならばありがたいが。


マリは佳那子と桜花を見比べるように視線を泳がす。


「はい。ご飯を毎回変えることはさすがに難しいですが、変えれる場所から変えていきましょう。あと、マリさんは早食いが過ぎます。噛む回数を増やしましょう。ゆっくり時間をかけて食べるんです。」


人差し指を立て、佳那子は話す。真剣な表情で話す佳那子につられ、マリも真剣にふむふむと聞いていた。


「噛む回数??」


それだけで良いのかとわかりやすく、顔に描いて問いかけるマリ。


「噛めば噛むほどに唾が出るだろ?唾がたくさん出ることで、頭が満腹になったって判断を下すんだっぺ。早食いすっと、満腹だって脳が判断するより先に詰め込んじまう。すると、満腹だって判断を下した時には食べ過ぎだって状況になるんだっぺ。何より、噛む回数が少なけりゃ、それだけ胃腸に負担かけちまう。胃腸が弱れば免疫力が下がる。風邪ひきやすくなるんだっぺ。」


カッカッカッカ。黒板に軽快な音を立て、文字を書きつつ、にゃんこ先生は話す。


綺麗に整えられた黒板に書かれた文字は読みやすい。書かれる位置が低く、見にくくは感じるが、授業中はきちんと、踏み台を使い、見やすい位置に書いてくれる故に、普段、文句が出ることはない。


今はまりに軽く話すだけであり、踏み台は使用していなかった。


「へぇー…。」


「あと、お前ぇは姿勢が悪い!悪い姿勢は背骨にも内臓にも悪影響だっぺ!頭の手っぺんから吊るされてるようなイメージで背筋を伸ばせ!で、腹に力入れるんだべ!」


カッと足音を響かせつつ、チョークを握った手をマリに向けるにゃんこ先生は見事にポーズを決めていた。


アニメとかなら後ろにドーンとか、効果音がつく場面だ。


「授業中とか歩いてる時とか、意識してみ?ついでに呼吸も。腹をぎりぎっりまで膨らます感覚で息を吸ってぇ、で吐く。これ以上吐けないってくらい吐いてで、息を止めて3秒耐える。これを繰り返すと腹筋つくから、ふと出来るタイミングでやる。」


桜花はマリの方を見つつ、にゃんこ先生が言った事を実践して見せつつ、話した。


呼吸も見せてくれる。


わかりやすいくらいに腹が膨らみ、そして、凹んでいく。それを繰り返して見せた。


「姿勢や呼吸は隙間時間にだって、簡単にできる。ダイエットは無理なもんだと続かねぇから、出来る範囲で無理なくやるっぺ。良いか?」


マリがとりあえず、何をすべきか書き記しつつ、にゃんこ先生は言う。


マリは真面目な性格もあり、それを慌てて、ノートに書き記した。


「成長の妨げになるから、断食によるダイエットは禁止だっぺ。食え。」


最後に。と言うように、にゃんこ先生は言葉を付け足す。


取り付く島もないマリにとっては無情な言葉。


マリにとっては罪人が判決を下された時のようなショックがそこにあった。


「は?!」


マリが目をかっぴらき、何を言っているんだとにゃんこ先生を見るが、にゃんこ先生は動じる様子もない。


「他の先生達にも通達しとく。誤魔化せると思ったら間違いだべ。」


有無も言わさぬ様子で言い放ちつつ、にゃんこ先生は再び書いた字を消し切ると、自身の荷物を持ち、教室から出て行った。


取り付く島もない。


「どんまーい。」


鈴を転がしたような軽やかな笑い声を上げながら、桜花がいう。


他人事だと思ってとマリが睨んでみても、一切、動じる様子なく笑っていた。


「とりあえず、言われたことをやってみなさい。話はそれからよ。」


「もし、それでもダメならまた一緒に考えましょ?」


仲間達からも、マリの味方が現れることはなく。


「うぅー…」


マリの断食ダイエットは開始一日目で頓挫したのだった。


「マリ。さっさと行く。お腹すいた。」


昼食は皆に引きずられるようにして連れて行かれた。ちなみに誰よりもたくさん、食べたのだった。

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