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180.共戦します

しっきーは"ウサ君が必ず出てくるというレベル"だと言った。


それほどの状況、か。


つまり、それがわかっていながらも、しっきーはぼんやりと眺めていたのか。


これはウサくんが説教するのは当然だ。叱るべき案件だ。


「良くない!!気を抜くんじゃない!なんだったら、もっと早く、攻撃を開始できただろ!」


「そしたらそしたで、はじめちゃんは突っ走るなとか言うんだよぉ〜。」


「ッ!!あげ足を取るな!」


1人で突っ走るなとでも怒るのか。見ていてもダメ。1人で先に動いてもダメ。


しっきーはどうしても怒られる運命にあったらしい。予定外の魔物で出てきた時点でアウトか。


「こらこら?ウサ先生、説教に夢中になってると、怪我するよ?」


呑気に話してて死んだ挙句に、僕らにそれが襲いかかるとか笑えないよね?って、言っているわんこ君自身は楽しげに笑っている。


わんこ君もわんこ君で緊張感がないな。


今の状況は確実に笑っていていい状況ではない。それくらいはボクだって分かる。


しかし、しっきーもわんこ君も笑っている。理解の範疇ではない。怖くはないのか。


「桜花ちゃん。」


ウサ君はメタルアントの方を見つつ、しっきーの名を呼ぶ………桜花ちゃん呼びなのは、あれが素だからだろうか。


しっきーもしっきーで、ウサ君をはじめちゃんと呼んでいるが。


「はじめちゃん、今、仮面ないんだから、後ろにいなよー。」


しっきーは普段通りの様子だから、多分、素なんだろうな。


知り合いなのは聞いていたが、あの話し方は普段を知っていると違和感しかない。


素は真面目な堅物だというしっきーの発言を思い出すが、あれは本当だったのか。


「桜花ちゃん!」


「えい!やぁっ!」


しっきーは手に持ってた弓を宙に放るようにして術式にしまうと、大腿にいつも装着している銃を手にすると撃った。


可愛らしい掛け声も気になるが、それ以上に気になる。なんだ、あの美しい銃は。


2体が1対となっているであろう黒い銃。銃全体的に龍が刻まれているが、片側は水色がかった銀で龍が刻まれ、もう片側は銀で刻まれていた。銃に刻まれた龍達が、しっきーが銃を撃つたびに美しく輝く。


弾の装填をしないあたり、魔力を込めて打つタイプなのだろう。しっきーの魔力で輝いているのだろうか。魔力を込めると共に光り輝き、弾を放つ。


なんだ、あれは。もっと近くで眺めたい。


しっきーは素敵な武器を大量に持っているから目を離せない。もっともっと見たい。


今まで、使った事はない銃。あんなに凄い銃をなぜ使わない。なぜ、今まで見せてくれなかったんだ。


常に持ち歩いてる武器の中にはあったようだが。


「当たってるよな、あれ。」


「全部当たってるはずよ。何なの、アイツ。何で平然としてるわけ?」


あべべが近くにいるまりりんに問い掛ければ、まりりんは眉間に深いシワを作って答えた。


意味がわからない。キモっ。そんな言葉で終わらせられるまりりんの思考の単純さはいつか、声をかけねばならない気がする。


いや、それより。


しっきーは何発か撃ったが、メタルアントは何のリアクションもせず、素早く動いては攻撃に転じようとしていた。ゆえに、当たってはいなかったのだと思い込んでいた。


素早すぎてしっきーが当てられずにいると。しかし、どうやら違うらしい。しっきーは当てている。が、ダメージを与えることができずにいるらしい。


「桜花ちゃんがわざわざ、持ち替えたんでぇ。普段の奴より威力があんだろ?」


カイさんが、顔をあげ、上方にひかえるチビ君に声をかける。


そう。カイさんの言う通りなんだ。しょっちゅう使う方ではなく、わざわざ持ち替えた銃。ならば、敵に合わせているはずなんだ。


それが傷ひとつつけれないのはどういう事か。


「にゅぅ。」


「桜花ちゃんの攻撃のがあんなの一体より弱いっつーことか。」


チビ君がどう答えたかは分からないが、カイさんは自分の中で納得したらしく、視線をしっきーに戻していた。


「……よく見たら?まったくの無傷じゃないでしょ。無駄な攻撃をするほど、主人は馬鹿じゃない。」


ムスッとした様子で吐き捨てるようにいうチビくん。主人が大好きなようで、主人が弱いと思われるのは気に入らないようだ。


「さ、斬るか!」


何発か銃を撃った後、しっきーは笑顔で言った。こちらの会話が聞こえているかは分からないが、実に楽観的に明るい。


攻撃が通らなくとも、いつも通りなんだな。あわてたり、不安に思ったりはないのか。


自分の攻撃が通っていないというのに、しっきーは余裕があるように見える。怖くはないのだろうか。自分の攻撃が通用しないのだぞ。


「俺が行く。桜花ちゃんは援護だ。」


「弱虫が強がんなくてもぉ〜。」


あからさま、ガッカリしたような顔をするしっきー。なぜ、ガッカリするんだ。


先ほど、しっきーの名を呼ぶ一連の会話はどちらが前衛となるかの話し合いだったのか。


名を呼ぶしかしてなかったし、しっきーもウサ君に下がれとしか言ってなかったが。


それほど共に任務に行っていたのか。……なぜウサ君は非戦闘員なのかが気になるな。十分戦えているのに。いや、詮索はマナー違反だ。おそらく、それを探れば、さすがのしっきーも怒るだろう。


「おとなしく言うことを聞きなさい。」


くしゃりと頭を撫でつつ下がらせると、ウサくんはしっきーを背に庇うようにして立ち、メタルアントに対峙する。


それはまるで幼児をなだめるような動作。


慣れた動きでウサくんはそれをし、しっきーはそれを嫌がる様子もなく受け入れて───いや、しっきーは嫌そうな顔をしてるか。しかし、それは撫でられた事ではなく、ウサ君が前に出ると言うことに対して不満があるようであった。


ウサ君は槍を構えると、メタルアントに近づく。メタルアントもまた、ウサ君を射抜かんばかりに睨め付け、ウサ君に襲いかかる。


《キン キン キン キン》


「早くないか?見えんぞ。」


ウサ君の槍、おかしなふうに歪んでないか?あれはただの槍ではないな。気になる。近くでみたい。が、早すぎて動きが追いきれない。


……ウサ君。止まってくれないだろうか、武器が見えない。


「………あの野郎、ヤバくないか。押されてるんじゃ……。」


あべべが心配そうにつぶやいた。そばに行きたいとうずうずしているのがありありと伝わってくる。何とか我慢しているのが偉い。


よく分からないが、あれはウサ君が押されているのか?つまりはそれほどに強い相手なのか。メタルアントが?


《パン パン パン》


しっきーはウサ君に当てることなく、銃を撃つ。メタルアントには当たっている、のか?ウサ君は完全にしっきーに背を向けた状態で、しっきーに視線すら向けない。


互いに信頼しているからこその芸当。……かっこいい。


「あれくらい正確な攻撃、出来たら良いね?」


「正確?」


わんこ君はウサ君やしっきーへと少しの間視線を向けていたが、すぐにボクらの方へと向いて話しかけてきた。


それに対し、あべべが反応する。


「2人とも?蟻の特に皮膚が軟いとこを狙って攻撃していると言うか?どちらも同じ場所にしか攻撃してないのは見たら分かるよね?一回で壊せないなら数当てろっていう脳筋作戦施行中??」


「…………最初に桜花ちゃんが撃ち込んだとこだけに攻撃打ち込んでるってぇのか。あんだけの動きの中で?」


目を見開き、驚いた様子でカイさんはウサ君を見ていた。


あのスピード、あの攻防の中で正確な攻撃をするなど、至難の技。ボクには当然できないし、カイさんにもできないだろう。



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