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179.戦前には彼が来ました

水辺に4体ほどメタルアントがまとまっているんだが、一体を中心にして動いている。言われてみれば、他の蟻達もまた、まとまっているメタルアント達を守るように周りを固めているように見えた。


メタルアントには女王蟻と呼ばれる雌個体がいる。捨身で襲いくる魔物ではあるが、女王蟻は別。他個体がなんとしても死守しようとする。


あれはメタルアントを生み出すメタルアント。メタルアントの集団に出会っても、中々出会うことはないと言う激レアなメタルアントだ。


周りに守られる絶対的王だが、弱いわけではない。女王蟻はランクF。他のメタルアントよりは圧倒的に強い。


何より厄介なのは、女王蟻は他のメタルアントと比べ、見た目的違いがないのだ。人間からすると、違いがないため、女王蟻と気付かず弱いと思って挑んだら大怪我を負った。そんな話を聞いたことがある。


ボクとて、注意しろと言われた記憶はあるが、しっきーやチビ君がおかしいと言わなかったら気づかなかっただろう。




て、いや。




何で、チビ君は注意をしたんだ?


しっきーやチビ君が警戒するから、厄介なのかと思えばそう言うことなく。しっきーはあっという間にメタルアント達を弓を使って倒していく。


みんなが注目していた女王蟻と思われる個体すら、しっきーはさっくりと倒してみせた。


それぞれの蟻たちに使った矢は一本ずつ。狙ってから射るまでの動作にかかる時間がしっきーはざっきーにくらべ、圧倒的に短い。早い。


メタルアントたちがしっきーに気付いた後も、相手に攻撃の隙を与えず、しっきーは素早く攻撃を仕掛け、倒した。バトルドラマを見ているかのような気分だ。


「ん〜。まだ、みんな動かないでね。チビ、よろしく。」


「にゅ。」


しっきーはチビ君に声をかけると、メタルアントに近づいていった。いや、あれは女王蟻に近づいていったのか。


全てのメタルアントが地に伏せ動かないように見えるが、どうしたのだろうか。


「んんん〜?あ、へぇ。やっぱ、これ、子を宿してたんだ。笑える〜。」


しっきーはメタルアントまで1メートルというとこまで近づくと何やらカラカラ笑った。それと同時に蠢いた。倒れたはずのメタルアントの腹部分が動いたんだ。


宿してたんだ。


そうしっきーは言った。つまりは、子がいたと。腹に子がいて、それはまだ生きている。


だからこそ、腹部分が一人でに動いたのではないだろうか。すぐに腹を刺すなりすべきではないだろうか。


そうボクなんかは思ってしまうが、しっきーはそうはせず、メタルアントの蠢く腹を面白げに眺めている。


大丈夫なのか、あれは。さっさと刺すべきなんじゃないのか。


笑えるとか言っていたが、そんな状況なのか?


「桜花ちゃん!!!」


不安たっぷりでしっきーを見ていたら、叫ぶような声が、ボクの鼓膜に破ってしまうくらいに思える強い衝撃を与えてきた。


聞き覚えのない声だ。


誰の声だと、瞬きをする間に、声の主は姿をあらわしていた。おそらくは、声の主。そもそも、彼の素の声をボクは知らない。そう、彼ーーウサ君はいつだって変声機を使っているからな。


しっきーの背後にはウサ君がいた。しかも、その距離はゼロ。ぴったりと後ろに控えている。


しっきーを背後から抱きしめるようにして左手をしっきーの腹あたりに添え、右手に持つ槍で、魔物を止めている。


慌ててきたのか、ウサくんの仮面は取れ、素顔がさらされていた。一度だけ見たことがあるウサ君の顔がそこにあった。


今のウサくん、相当、余裕のない顔をしている。肩で息をしている様子から見るに、よほど急いできたらしい。


いつだって余裕綽々な彼が余裕をなくす理由は何なんだ?


何が起きている?


あの魔物はメタルアント、か?腹が蠢いたと思ったら腹から、今、しっきーに襲いかかっているメタルアントが出てきた。


しっきーの顔まであと10センチ程度の距離まで迫るそれは、口をこれ以上開かないんじゃないかと言うくらいに大きく開け、しっきーに噛みつこうとしていた。


大きく開かれた狗地の中にある立派な鋭い歯を惜しむ事なく晒している。


メタルアントの形をしているが、全身は黒ではなく、銀。綺麗な銀色。それはメタルアントの腹から出てきたにはでかいが、メタルアントにしては一回り小さい。


よくよくみれば、腹が引き裂けたメタルアントの死体の周りには拳程度の大きさの黒い物体がうねうね動いている。


なんだ、あれは。


「おう───ッ「動かないで欲しいかな?動くなってチビにも志貴さんにも言われたはずだね?」


異常事態だと、あべべが動き出そうとした。しっきーの名を呼ぼうとした。ざっきーもカイさんも、まりりんもそれに続き、腰を浮かせ、しっきーに寄ろうとした。


しかし。


それはわんこ君によって阻止された。


わんこ君は近くの木にいたらしく、飛び降ると、ボクらの行手を阻むようにして、歩み出てきた。


「今、君たちは大人しく見学しててくれるかな?」


疑問系。だというのに、いいえという答えをわんこ君は準備していない。文句を言わせる気はないらしい。


逆らうためにはわんこ君を倒すほかない。


そんな状況か。いや、倒すなど出来るはずもないのだが。


「おう、かちゃん!何でそんな悠長に構えている!」


わんこ君に止められ、皆が悔しそうに顔を歪めていることなど、ウサ君には見えていないだろう。


ウサ君は自身の腕の中にいるしっきーに話しかけていた。


しっきーはしっきーで自身の顔のすぐそばまで迫ってきているメタルアントを眺めていた。……こちらには緊張感がない。普段の、しっきーだ。何なら顔には笑顔さえ浮かんでいるように見える。


「いやぁー。私、実際に見るのはあれが2体目だし。よくよく見たかったんだよねー。」


しっきーは口を開くが、その声色からも焦りやら怯えやらは感じられない。やはり、いつもと変わらないしっきーだ。


2体目?珍しい?


メタルアントがか?メタルアントから出てきて、しっきーを襲おうとしている、メタルアントの姿をしたアレがか。


いや、それよりも。


しっきーの様子にウサ君が明らかに怒りを強めたのがわかる。怖い。離れているが、ウサ君が怖くてたまらない。


ウサ君はメタルアントに八つ当たりするかのように、メタルアントを薙ぎ払った。


メタルアントは後方へと飛び、池の中に生える木の幹に着地すると、威嚇するように構えた。ノーダメージか。


ウサくんはしっきーを抱え込んだまま、魔物を睨むように見て、武器を構えている。


緊張した空気が流れーー


「ひゃぁああああああっっっ!!魔物!魔物!魔物如きが生きてんじゃねぇぇええっ!!」


ーーていたんだが、空気をぶち壊すように、場にそぐわぬ声が響き渡った。


…………あれはコリス君か。いや、背格好はまさにこりす君。こりす君の仮面をつけている。しかし、あれはこりす君であっているのだろうか。


叫び声を上げながら、派手に動き回っている彼女はとても、こりす君には見えない。いつもと違う様子のこりすくんはメタルアントを吹き飛ばし、暴れていた。


先ほど女王蟻の腹あたりでうねうね動いていた黒い物体。それはいつの間にやら、普通のメタルアントの大きさとなっていた。数は5。


それらはしっきーたちを敵と見做し、襲い掛かろうとしていたんだが、それをこりす君は地面を抉るようにして吹き飛ばした。


大きな斧は彼女の背丈ほどある。女性が持つには重すぎるそれを軽々しく振り上げ、忍者か何かかのような身のこなし、素早さで動き回っている。


吹き飛ばしたメタルアント達に高速で近づくと、自分に群がるそれらを切り刻んでいく。強い。


見た目のおかしなメタルアント以外は全てこりす君が倒してしまいそうな勢いだ。


「見たかったじゃない!!そんな理由でぼやっとしてるな!!」


ウサくんはこりすくんの変わり果てた様子を気にする事なく、自分のすぐそばに立つしっきーに怒りをぶつける。メタルアントに警戒しつつも、説教は続行するらしい。


はじめからあちらはこりす君に任す予定だったのだろう。視線すら送らない。


「どうせ、あれが出たんじゃ、変態が出てくるじゃない。一人で戦わせてもらえないんだし、近くでよくよく観察するくらい良くない?」


鬼の形相で怒るウサ君を目の当たりにしても、しっきーは萎縮するではなく、あからさまに嫌そうな顔をし、面倒だというのを隠さず、対応している。


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