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171.合流します


何度もしっきーに呼びかけるゆずるんに、皆の視線が集まる。


「どうした?しっきー、返事しないのか?」


聞けば、ゆずるんは心配げな表情を浮かべつつ頷いた。


何かあったのだろうか。


「まだ戦闘中なんじゃねぇの?」


「移動中で、連絡に気付いてないとか?」


確かに何かをしている最中ならば気付かぬ可能性もあるか。


「志貴様ならば、戦闘中であっても返事ができますよ。」


未だに戦闘中。あるいは移動中。


それも返事がない要因の一つに考えられたが、ウサくんにより否定されてしまった。


しっきーとはやはり、連絡が取れそうにない。ボクも連絡してみたが、つながらない。


まだ戦闘中な気がしなくもないが。ウサくんに絶対違うと、あそこまでハッキリ言われると他の要因があるように考えられるが…何があると言うのだろう。


「戦闘は終わったからこっちに向かってるらしいよ?」


ふと、自身の通信機器を使い、連絡を取っていたわんこ君が言った。


あれはこりす君と連絡をしていたのか。


「………志貴さん、これの存在忘れているのかしら。」


「可能性あるわね。桜花、意外と抜けてるとこあるもの。」


ゆずるんがつぶやくように言えば、まりりんがそれを肯定する。


ありえない話ではないだろう。


しっきーはたまに抜けている。しかし、それだけではないように感じられる。何か、違和感がある。なんだろうか。


「えー?しつれぇーなぁ。私は覚えてたよ?倒してすぐに連絡しようとしたよ。」


突然、会話に加わってきた声に皆が驚き、そちらを見た。


不服ですと顔に記したしっきーが、行きと同様に足早にボクらに近づいてきていた。


「お疲れ様でございます、志貴様。……こりす先生も。」


ウサ君はしっきーが近くにいると気付いていたらしく、驚く事なくしっきーに話しかけている。


しっきーはなぜか、こりす君を荷物を抱えるように、肩に乗せてこちらに近づいてきていた。


「は、はぃぃ〜……。」


抱えられているこりす君はオロオロした様子だ。しかし、暴れるなどはせず、おとなしく抱えられていた。


「何で抱えてるんでぇ?」


「足が遅いんだよね。」


カイさんが問いかけば、オブラートに包むこともなく、しっきーは言ってのける。


遅いなら抱えてしまえは中々に脳筋な発想だぞ、しっきー。いや、そんな話じゃないな。本人の目の前で話すことではない。


「ゔ…ごご、ごめッな…さい…ッ。」


肩の上でビクンッと、鞭に打たれかのように身体を揺らす彼女が哀れだ。


彼女の動きはしっきーに比べゆっくりなのは事実。2人で行動するには、お互いのリズムが合わないかもしれない。


「置いてこなかっただけ、良しとするかな?」


「置いてくるわけないでしょー。他にも魔物がいないわけじゃないんだから。はぐれても困るから持ってみた⭐︎スピードアップして良き!」


良きではないが。


しっきーが当たり前のように連れ帰ってくる子であるのは良い。だが、スピードを合わせるのは嫌だと言うのはどうなのか。


「良くねぇ!こりす先生も怒らねぇか!」


「へっ!?いいいや、でででででもっ!つ、連れてきて、くくれ、た…し。あ、ああありがと。」


どもりながらも、こりす君はしっきーに礼を言う。本人が良いと言うならば良いのか。


「いーえー。」


しっきーは肩に担ぐという持ち方をしていたものの、下ろす時は丁寧であった。


術式でこりす君の体を浮かし、ゆっくりと地面に座らせる。そして、その流れで足の様子を確認し、それに対しこりす君が萎縮している。て、こりす君は怪我をしたのか。


「ん?足、怪我したの?」


「……ここ、転んじゃって…。」


「大丈夫ですか?」


「あん?早く言わねぇか!ちょっと診せてみろ。」


「あ、しししっしきっさんんが…てあて、して…」


足の傷に気づいた教員たちは即座にこりす君を囲う。オロオロと困り果ててしまっている姿はやはり、何とも哀れだ。


注目されるのが苦手だろうに、注目されてしまい、困り果ててしまっている。


「応急処置ね。血止めしただけだよ。」


ちゃんと手当てしてもらわなきゃですよーと手当てはいらないと言うこりす君に、しっきーは釘を打つ。


自分とて、怪我を放置するだろうに、他者には敏感なんだよな。ピンピンしている様子から見るに、しっきーの方には怪我はないようだ。


「何かあったのですか?」


「んー?こりす先生がゴブリン達相手に勢い余って木に突っ込んでいったんですよー。」


それはどう言う状況だ。勢い余って木に激突し、怪我を負ってオロオロするこりす君をしっきーが守った。そんな光景しか思い浮かばないが。


言っては何だが、やはり、足手まといにしかならなかったのではないか。


「あぁぅ〜…。」


項垂れている彼女を見る限り、足手まといにしかならなかったように思える。


「……こりす先生はドジっ子だからね?」


それはフォローのつもりか?もし、そうであるならば、フォローが下手すぎるだろう。


「……ゔッ。」


案の定、本人は言葉を詰まらせている。


なぜ、教員達はこりす君をしっきーのもとへ向かわせたのか。2人とも無事だったから良いものの、危ないだろうに。


「とりあえず、傷は大丈夫そうだっぺ。何かあったらすぐに声かけろ。また診るっぺ。」


「はぃ……。しししきっさん、そその!ぁ…ぅ…ごごっご迷惑ッ!ごご、ごめんなさい…。」


「ん?落ち着いてぇ?迷惑はかけられてないですよ。」


「ぁ、でで、でも…。」


「私がさっさと来たかったから抱えただけ。怪我について気にしてるならお互い様ですよ。誰かが怪我したら手当てするのはとーぜん。」


「ぁ…ぅ…。」


「気にしない気にしない。気にすることはない!」


にぃと笑って言うしっきーはこの話は終了だと暗に告げていた。ひたすら恐縮しているこりす君は黙る他ない。


「お前ぇは仲間の運び方を気にするっぺ。」


「あ、ゆずるん。さっきの通信機器の話なんだけど。これってアレの対策した?」


にゃんこ君からきた注意を当然の流れのように無視したしっきーはゆずるんやボクを見て頭を傾げる。


「あれ?」


「叢雲華。この辺もだけど、あちこちに咲いてるんだよね。」


周りを見渡し、あちこちを指さしつつ、しっきーが言う。


しっきーが指さした方向には花が咲いていた。見たことのある花。直接見るのははじめてだが、本で何度か見たことのある、知っている花だ。


「叢雲華?」


聞き返すゆずるんの声は震えていた。当然だ。ボクだって、頭をカナヅチで殴られたような衝撃を受けている。


目の前が真っ白になって、頭がガンガンする。胸がムカムカするのは衝撃の強さゆえか。


「通信を邪魔したり、方向感覚を狂わす電波を出すでござるよ。叢雲華はたまに咲いてる事があるから、通信機器を購入する際には対策がなされているかは確認しといたほうが良いでござるよ。」


いや、知らないから聞き返したのではない。ボクらはそれを知っている。そして、対策をせねばとも話していた。


なのに。


なぜ、ボクらは対策するのを忘れていた?


「………。」


「失念してたかぁー。動きはするけど、2人とも応答なかったから、もしかしてと思ったんだ。」


苦笑しつつしっきーは言う。もらったときに確認しなくて、ごめんねーと。


いやいや、しっきーが悪いのではない。明らかに悪いのはボクら(武器師)だ。


「何で忘れてたよ…それ、対策しなきゃ使えないガラクタを持たすのと同じじゃない。」


呆然とゆずるんはつぶやく。


最善を尽くした。しかし、皆に必要な武器を作り切れたわけじゃない。まだまだ不足している。そんな状態でありながら、作ったものにも不備がある。


自分の出来なさに呆れしかない。


「すまなかった。完全に忘れていた。」


「あ…いえ…私こそ…私だって気づくべきだったわ。」


そうだよな。


対策をどうするか、きっちり話し合っていたにもかかわらずの失態に頭を抱えたくなる。


明らかに悪いのはボクらだ。


「誰だって失敗はありますよ!そんなに気にしなくても!」


「そうでござる。反省は後にするとして、今はこれからを考えた方がよかろう。」


優しい言葉をかけてもらってもすぐには復活できないくらいに衝撃を受けている。


が。


ボクらの気分でまで、みんなに迷惑をかけるわけにはいかない。すぐに切り替えねば。


「そう、だな。すまない。取り乱してしまった。」


「まぁ、今回は個別行動する予定ないから大丈夫でしょ。だいじょーぶ。気にしない、気にしない。」


「次回までに修復する!」


絶対に、次回には使えるようにする。

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