15.学園生活の初めにゲームを⑤
よし。予想よりもちょいと時間はかかったけど、一体、魔物退治達成。
だけどまぁ…これは桜井や谷上達を連れてやるのは無理だな。桜井や谷上はヤギドリの攻撃を回避するのは中々厳しいだろうし。
やはり倒すのは効率が悪い。
と、なると。
やはり逃げるが勝ち、か。1人だったら全ての魔物を殲滅してからバッチを探すけど。3人の動きを見る限り、今の3人じゃあ魔物には勝てない。
動かないヤギドリを見つつ、童子をしまう。
ーーーと。
戦いながら移動しすぎたみたいだ。
私らと別れてウサバッチを探していた4人の姿が見えた。1人でここにいるのが見つかってもなんだし、サッと姿を隠しつつ、4人の様子を伺う。
「あ、ありました!!」
村くんの楽しそうな声が聞こえてきた。声と同様に目もキラキラと輝き、楽しそうに笑みを浮かべている。
こんな状況も楽しめるってすごい才能だよなぁ。
「………あった。」
ツバサはツバサで興味はなさそうだったのに、宝探しを楽しんでる様子。
変化が分かりにくいが、若干声のトーンが高い。
「こっちもあったぞ。」
ヤンキーくんははしゃいではないけど、ちゃんと探しているし報告までしてらぁ。むすっとした雰囲気はデフォルトかな。
意外と真面目に探すんだねぇ。
「結構、見つかるものね。あいつの言い出す事だから見つかりにくいと思っていたわ。」
マリもマリで見つけたらしく、バッチを苦々しく見つめながら毒づいている。
ぶつぶつ文句を言いつつも、バッチを探している。うんうん、やはりマリはツンデレっ子だね。
「この調子で探していきましょう!!」
テンション高いなぁ、ムラくん。満面の笑みを浮かべ、頑張りますよー!と両手を上げている。ムードメーカーとして役立っているねぇ。
意外にこの4人、うまくいっているようだ。大丈夫かなぁって心配だったけど。ヤンキーくんも真面目にバッチを探しているようだし。
ーーーん。
近づいてくる魔物がいるな。凶暴化した状態の魔物のようで、ギラッギラの目をしている。
今回は私が散らしとこかな。
バッチを探すより魔物を壊す方が私は得意だしな。
幸い、私は今、単独行動をしている最中だ。みんなといるなら自重するし、悪目立ちしないようにセーブすべきだけど。
1人で相手取るならば、倒せる相手だし、他の子の目はない。んじゃま、敵の数は減らしておこう。やっりますかぁ!
村くん達に近づこうとしていた魔物を倒した後。
とりあえず、みんなが待ってるだろうし、談話室に向かった。
そこには先に談話室を目指していた3人がちゃんといた。
無事にたどり着いていたようでよかった。安心安心。
「おぅ。無事だったか。」
談話室に入れば、すぐにお兄さんがこちらを向き、笑みを浮かべて出迎えてくれる。
うん、こういうところがイケメンのイケメンたる理由だよね。さすがはお兄さんだ。
全身を自然な動きで確認して、怪我がない事を不自然ないように確かめられちゃうあたり、さすがだよねぇ。
「ん。単なる時間稼ぎだからね。それに私に何かあればチビが反応するから分かるよ。おとなしくは待っていないと思う。」
にぃと笑い、チビを指させば、チビは尻尾をパタンと動かす。
怪我したら許さない。
視線だけで伝えてくる私の武器。意外に過保護な子なの。
先に行けって言って行かせたら怪我したら怒るのね。ま、そばにいても怪我するのを嫌うわけだけど。
「へぇ?時間稼ぎ、長かったな?ま、無事で何よりでェ。怪我は大丈夫かぃ?桜花ちゃんは無茶すんなぁ。」
チビにチラッと視線を向けつつ、私の全身を見る。
確認を何度したって変わりはないんだけど。怪我はないって。
「怪我ない?大丈夫?」
「怪我はないですか?」
タタタタッと小走りで谷上やカナちゃんが近寄ってくる。
2人とも心配性だねぇ。ま、魔物を2体倒してたし、ちょいと待たせすぎたかな?
「大丈夫。怪我したらチビに怒られちゃうから怪我できないよ。無傷だから気にしないでぇ。」
「にゅぅ〜。」
半眼になってこちらを見るチビ。
いやいやチビさんや、当たり前って。魔物との戦闘に多少の怪我は付き物なんだけども。
「まったく…しっきーは無理をする。まぁともかく、無事で何よりだ。」
《チリーーーン チリーーーン チリーーーン》
ユキが言うと同時くらいに音が響き渡る。魔物を凶暴化させたあの音だ。
「凶暴化のお時間、終了ってとこか?」
凶暴化させたり、おとなしくさせたり、もの好きなもんだ。
魔物にも音にも怯え戸惑う。
そんな姿でも見たいんかねぇ。
「あ、そうだ。バッチ、渡しとくねぇ。」
忘れないうちにユキにバッチを手渡す。
「ん?5つあるのか。」
渡したバッチを見てユキが目を丸くする。ゆずるんもバッチを見て、何で?と視線で問いかけてくる。
魔物と戦ううちに意外に見つかったんだよな。
「あれと戦ってたら、見つけたから。回収してきた。」
ん?
ユキやお兄さん、谷上、桜井は呆れたような顔をして、こちらを見てきた。カナちゃんも困ったような顔をして。
ゆずるんに至っては肩をワナワナ震わせている。
ふむ。桜花さんが察するに。
ヤギドリと戦闘しつつ逃げる場面だったからかな?バッチなど回収せずに逃げ帰ってくるべきだった、と。無茶をしたことに呆れるか怒るかしていると。
でも、見つけたら回収するよね?
再びバッチを探しに行くなんて非効率的だもんね?間違ってないよね?
「戦いに集中しないと危ないでしょう!バッチ回収は後回しにしなさいよ!」
ゆずるん、説教モーーード!!
スライムのようにぷるぷる震えてはいたが、やっぱりというか、爆発した。
ゆずるんはクールビューティなんだけど、おかん属性を兼ね備えているようだ。
今はお叱りモード中。
回収できる状況だったし。また探しにいくのは面倒だったんだもーん。
「ん〜?回収できそうだったから。次からは危なかったら回収せずに逃げることにするから。」
「アンタねぇ〜!」
ゆずるんは怒るが、2度とやりませんなどと約束は出来んよな。
守れない約束はしない主義!
「桜花ちゃんはおてんばだねェ。」
苦笑しながら、お兄さんはポンポンと頭を撫でてくる。
む。
おてんばとは何だ、おてんばとは。見つけたら回収するだろう。そういうゲームなのだから。
「失礼な。」
「昨日の怪我だってあんだろ?大丈夫なのかぃ?」
「たいした傷じゃないから大丈夫だって。お兄さん、気にするねぇ。」
「当たり前でぇ。まったく…時間稼ぎなら次は俺がやるから桜花ちゃんは逃げてくんな。」
「むー…だったら私も残りたいけど…今回は戦うのが目的じゃなく、魔物に遭遇しないようにかわしたり、隠れたり、遭遇したら何とか逃げ切るっていうのが目的なわけだよ。時間稼ぎがいらないように動こうか。チビ、魔物が半径100メートル以内に入ったら鳴いて教えて。……谷上も桜井も息整ってるね?ささ、次、探しに行こう。」
少し休んで落ち着いたようでみんなの息が整っている。
チビが鳴き声で3人に魔物の接近を伝えれば多少は対応もしやすくなるし。
これなら探しに行けるはずだ。
なんだけど。
谷上も桜井も不満そうだね?
「志貴さんは休まなくても良いの?」
心配そうにこちらを見る谷上。
「動いている方が好きだから、大丈夫。」
「だったら良いけど…。」
若干、不満げな谷上。
休ませたいけど、本人が言うなら仕方ないってとこか?
ま、休んでるよりはさっさと探して終わらせたいからな。
「落ち着きないわね。」
呆れた様子のゆずるん。
「無理しないでくださいね?」
対して心配そうに見つめてくるカナちゃん。癒しだな。




