156.秋明と桜花の喧嘩のお話です
これは入学式イベントの前の話。
今だからこそ、みんながみんな、落ち着いて過ごすことができているワクワク学園。
が。
ここに連れてこられて1週間程度になろうとしていて、みんながそれなりにストレスをかかえていてイライラしていた、そんな時のことだった気がする。
「今は従うしかないって言ってんだろーに。……やっぱりいっぺん、のすしかねぇか。」
どすの利いた声で吐き出すように言った。言ってみちゃった桜花さん!苛立っていると瞬時にわかる声出しちゃった⭐︎
言われた相手は顔を真っ赤にさせて私を睨んできていた。喧嘩を売ってきたのはそっちだろうに。単細胞は少し声をかけただけで怒るから単純だよなぁ。
多分、お兄さんが腕を組んでため息一つ吐き出す姿なんて見えてないんだろうな。止める気はなくとも呆れられてんぞ、私ら。私まで呆れられてるんだぞ、こらぁっ!分かるか、クソヤンキーめ!まったくぅー!
「ぁあん?!女だからって手加減しねぇぞ、コラァ。」
凄みつつ、叫ぶように言う姿は小物にしか見えない。マジ、こっちと自分との実力差が分かっていないのがヤバイよねぇ。
これは戦地では死ぬパターンだ。
女だからっつー言葉も気に入らない。よし、殴ろう。手加減なしに殴り飛ばして泣かしてやろう。そしたら現実が分かるはず。分かるといいな。
「女の戦闘員だってそこらじゅうにいるでしょ。あぁ、登録したばかりの僕ちゃんは知らないのぉー?女は戦えんとか見下して自分は雑魚とかとんだ笑い物だよねぇ。」
「テメーっ!」
阿部が勢いよく殴りかかってきたからそれをひょいと避けると投げ飛ばす。机めがけて勢いよく投げた。
派手に飛んだヤンキーくんはすぐに起き上がってこっちを睨みつけてきた。まぁ一撃で倒れるとは思っていない。それじゃあ、面白くないからね。
じわじわと、いたぶりにいたぶって痛めつけなきゃね。恐怖をゆっくり骨の髄まで染み込ませなきゃだよね。
「お前が勝ったらお前に従ってあげるよ。変態野郎をどうにかして、島からお前を出してやる事くらいしてやらぁ。負けたら、素直に変態野郎に従ってここで生活してくれる?ぎゃぁぎゃあ、わめいたって雑魚じゃあ変態野郎には勝てやしないんだからさ。……あぁ、ハンデに武器使っても良いよぉ。雑魚は素手だけじゃあ、キツいよね?」
鼻で笑いつつ、挑発すれば、簡単に顔を真っ赤にさせて殴りかかってきた。それを今度は避けずにモロに受ける。受けてやる。避けずに顔面を殴られる。
女だからって手加減しねぇぞって言いつつ、女の顔面殴る男。
女としては気に入らないよね?徹底的に潰してやりたくなるよね?完膚なきまで叩きのめさなきゃ気が済まないよね?
殴られたのは痛みが好きとか変態じみた理由はない。絶対ないからね?よりヤンキーくんを効果的に潰したいだけで殴られるのは好きじゃない。
徹底的に完膚なきまで叩き潰す。そう決めたから殴られてやった。きゃ、私凄い!
許す?
んな、天使のような慈悲なんていらない、いらない。慈悲なんてくそくらえなわけだよ。粗大ゴミに出しちゃおう。
さぁ、潰そう。徹底的に踏み潰そう。
その辺で踏まれてピクピクしている潰れたカエルのごとき姿にしてやろう。惨めな姿で泣かしてやろう。
「あ??」
凄んで睨む馬鹿に身の程を思い知らせねばなりませぬ。
桜花さんが睨んだだけで動き止めるとか、雑魚だって証拠だろうが。
「わざわざ受けてやったってーのにこの程度か。」
ザコが。そう言いながらヤンキー君を見るとヤンキー君は目を見開いて飛び退いていくと、鉄パイプを手にした。
そして容赦なく私めがけて鉄パイプを振り下ろした。
が。
おっそい。動きは単調でノロイ。こんなんがまともに通ると思ってんのか?つか、使うなら使うでまともな武器を出せよ。
馬鹿にしてんのか、あぁ?!ってなっちゃうじゃない。
私は素手で鉄パイプを受けとめると、そのままヤンキーくんの鉄パイプを握った。
ヤンキーくんは目を見開いて武器を私から取り上げようとするが、できず。困惑状態。動揺しているのが丸わかり。だっさいよねぇ。
にしても。
無防備すぎ。目の前に敵がいて敵に武器掴まれるとか馬鹿だろ。んで、そのままパニックになって動けないとか。
戦闘員としては致命的だ。死にたいのか、こらぁ。これが魔物相手だったならば死んでるぜぇー。
「ガハッ!?」
鳩尾を殴る。簡単に倒れたらつまらないから、それなりに手加減をして殴る。しかも1発だけ。あらあら、私ったら、優しくない?
顔面殴ってきた奴に手加減して1発殴るだけにする。私、手加減してあげてるわけだよ。優しいよね。うんうん、天使のようだよ。桜花さんはやっぱり天使のように優しい。
なんだけど……。
ヤンキーくんは容易くその場に崩れた。マジか。手加減してやったのに。私の気遣いは何だったのか。そう思っちゃうよね。加減って難しいな。
ヤンキーくんもヤンキーくんでなんで倒れているのか理解できないって面してらぁ。1発で動けなくなるっていうのが理解できないみたいだね。理解不能って顔で見られても困る。私だって分からんよ、加減したんだから。
喧嘩慣れしてそうな相手だと思ったけど……まぁ実力差があるのよね。ここまで弱いとは。ちょいと予想外。
「グフッ!!!」
弱いなぁとは思うけど、先に手を出したのはヤンキー君だからね。攻撃の手は止めない。今度は腹を蹴り上げる。もちろん、手加減は先ほどよりしてあげる。
苦しそうにもがくヤンキーくんに攻撃のスキなど与えない。すぐに今度は顔面に回し蹴りを喰らわした。
いろんな場所にぶつかって飛んでいくヤンキーくん。意識飛ばんように術式でコーティングするのは忘れない。
簡単に意識を飛ばしちゃつまらない。ジリジリと痛め付けなきゃいけない。加減が難しいけど、多分大丈夫。
所々を擦り剥き、血が滲み出てるけど、あれくらいなら気は失えないでしょう。まだまだ心は折れずで私を睨みつけているけど、動けずで地にふせている。
あの程度で動けなくなるってやばいよね。
ヤンキーくんから取り上げた鉄パイプを握りつぶすようにして、5つくらいに折って、それをヤンキーくんに向けて飛ばす。
ギリギリ当たらないあたりを狙って飛ばす。鉄パイプは床をえぐるように弾け、破片は辺りに飛び散った。当然、ヤンキーくんにも当たる。
あ、やっべ。刺さった。コントロールが難しいなぁ。かすった物はかすり傷を作ってるね。
まぁ、所詮はかけら。大したダメージにはならない。大したダメージにならないと分かった上での脅し的な攻撃だからね。床えぐれてくのは怖いじゃん?ガクブルものじゃん?
恐怖を植えつけて、徹底的に潰すのが目的だからこその攻撃よね。
簡単に終わらせちゃあいけないからね。
「はい、そこまででございます。」
鉄パイプの全てを飛ばし終え、吹っ飛んだヤンキーくんに近づこうとしたとき。私の前にどこから現れたんだか変態野郎は立った。
私と阿部とお兄さんしかいなかったってぇのに。いつの間にやら来やがっていた。途中、人が近づいてくる気配はしてたけど。来たのが変態野郎じゃなかったからまだ時間があるって思ったのは甘かったなぁ。
まさかこんなに早く変態野郎が来るとは。
変態野郎の表情は見えないけど、今の変態野郎には有無を言わさぬ雰囲気がある。




