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143.それぞれ動き出しています

料理組、風呂組、休息組、そしてまり達薪拾い組みに分かれ、それぞれ活動をスタートさせた。


「ねぇちょっと…大丈夫なわけ?顔色、悪いわよ?」


時折ふらつきつつも、何とか倒れまいと奥歯を噛み締め、動き続ける秋明。


その姿を見て、耐えきれなくなったマリは心配そうに声をかけた。


「大人しく休んでたらどうでぇ。倒れられる方が迷惑だって分かんだろ?」


秋明が返答するより先に魁斗が口を開く。無表情で言い放つ魁斗。その言葉は中々に冷たい。


絶対零度な視線、刺々しいハリネズミのような素手でさわれば怪我してしまいそうな雰囲気に秋明はさらに表情を歪めてしまう。


「て、カイさん?!言い方!!」


いくらなんでも、そんな言い方はないんじゃないかとマリは声を上げた。2人の衝突を止めるためにも何かを言わなきゃとマリは2人の間に立ちながら魁斗に声をかけていた。


マリはキッと魁斗を睨むように見て止まるように伝える。が、取り合ってもらえそうな雰囲気は魁斗からは感じられなかった。


「あん?間違っちゃいねぇだろ。その尻拭いをすんのはこっちだぜ?」


たくっめんどくせぇとでも言いたげなおざなりな態度を魁斗は取っていた。


改めようという様子は微塵もないというのは一目瞭然である。


「仲間なんだから良いじゃない!」


桜花がいたらそんな態度取らないくせにとマリは即座に魁斗を非難した。


が。


魁斗には一切響かない。響きようがなかった。自分は間違っていない。そんな意思が魁斗からは感じられた。


「馬鹿な行動の責任は自分で取るべきでぇ。自分勝手に動いて尻拭いさせんのは自己中すぎんだろうが。」


非難されても折れることなく、魁斗はハッキリと自己を主張する。ブレない芯があるのは嫌でも感じられた。


ギロリとマリを見る目さえも冷え冷えと冷めきっており、冷たい限りだ。


そんな態度を取られてはマリの方がぶれてしまう。正義は我にありと行動したマリだが、魁斗の態度に怖気付いていた。


「確かに?休めって何度も言われてるからね?それを無理に動いて倒れたら迷惑としか言えないよね?休んで英気を養う方が仲間としてはありがたいよね?我を通して仲間にかける迷惑量を増やすのは愚策というか?」


ははは?と楽しげに笑いつつ言うのはわんこ先生だ。こんなギスギスした空気の中で、いつものように笑っていられる彼はどういう神経をしているのだろう。マリには理解できない。


楽しげに話しているにも関わらず辛辣な事を言うわんこ先生は魁斗の意見に賛同している様子。笑いつつも秋明を追い詰めるようなことを口にしていた。


明るめのわんこ先生の声は明るめであっても空気を改善するものではなく、逆にさらに空気を悪くしていっていた。


「……お前らに迷惑はかけねぇよ。」


2人から言われ、気に入らないと顔を顰めていたが、言い返すことができず。苦しげに、つぶやくように、秋明は言葉を吐き出す。


小さい声には覇気がない。覇気を持たせるほどの余裕は今の秋明にはなかった。


「お前さんに何かがありゃあ、お前さんが望まなくとも桜花ちゃんが動く。迷惑なんざ、かけてくれるなよ?」


すぅーっと目を細めて見下すように睥睨しつつ、魁斗は秋明に言った。圧をかけるように。威嚇するかのように。


魁斗の視線に秋明は居心地悪そうに凶悪な顔を今まで以上に思いっきりしかめっつらに変えた。


弱々しげにしていても、魁斗は一切の容赦などなく、追い討ちをかけてくる。まだまだ追い討ちをかけてきそうな雰囲気すらあった。


「………分かってる!!あ゛ーっ!クソッ!分かってんだよ!!!俺1人の問題じゃねぇことくらい、分かってらぁっ!!俺のミスが周りに迷惑かけるくれぇわ!俺だって!!」


顔をしかめただけで感情をコントロールはできず、秋明は叫んだ。悲痛な叫びを上げた。


秋明が無茶をすれば、秋明1人の問題だけでは済まされない。必然的に周りに迷惑をかけてしまう。


そんな事を言い、理解できていると喚く秋明の様子にマリは胸が痛くなってしまった。


自分の行動が周りに影響を及ぼしてしまう。迷惑をかけてしまう。それを身をもってマリも体験した。嫌なくらいに痛感したのはマリも同じだ。


秋明もまた、何かがあったのだろう。悲痛な叫びからひしひしとそれがわかってしまう。自分もまた、ツバサや樹里におおいに迷惑をかけてしまったため、気持ちはよく分かり、マリが泣きそうになってしまった。


睨む魁斗に叫ぶ秋明。泣き出しそうなのを耐え、黙りこむマリ。その場は嫌な空気が漂っていた。


「ん〜。桜花さんは秋明君が行くのを了承しましたよ?それに対して、何かがあって労力を割くことになっても、迷惑とは思わないと思いますよ?」


みんながギスギスピリピリした雰囲気となる中、のどかな声が響いた。それは場の空気を破壊する声であった。


悪く言えば能天気な空気を読まない声であった。空気を読まずにのほほーんと発言するわけである。


「んな話をしてるわけじゃねぇよ。」


その場の空気を見事なまでにぶち壊した能天気な声に魁斗は荒々しく言いはなった。


そんな話はしていないと。そこに自分は重点を置いてなどいない、と。


魁斗は秋明から樹里に視線をずらすと、黙るように暗に言う。


「桜花さんは確かに手を差し伸べてくれます。僕だって出来ることをします。それに対して迷惑をかけたっていうのはスッキリしません。迷惑ではないです。」


分かっているのか、分かっていないのか。


定かではないが、樹里は物怖じする事なく、魁斗に穏やかに語る。


暗に伝えただけでは樹里に効果があるはずがない。


「負担にはなんだろうが。」


魁斗にとって桜花に負担をかける事が気に入らない。樹里を睨みつける目に力が入ってしまうくらいに感情をあらわにしてしまう。眉間にしわがより、秋明と話す時より荒々しくなっていた。


「桜花さんは負担だとは思いませんよ?」


態度がさらに悪くなっていく魁斗を一切気にすることなく樹里は言う。コテンと頭を傾げ、不思議そうに魁斗を見つめていた。


その顔面を殴りつけたい。魁斗はそんな衝動にかられる。が、何とか我慢した。えらい。


「チッ!だとしても気に入らねぇんでぇ。桜花ちゃんに甘えきる態度は黙っちゃおけねぇよ。」


舌打ちで怒りを何とか収め、魁斗は言葉を吐き出す。


「甘える、ですか。んー?逆に思いっきり甘えてみたらどうですか?」


怒りを募らせていく魁斗に、煽るつもりはないのだろうが、樹里は自身の考えをぶつけていく。それは煽ると変わらない行動であった。


お互いがお互いに考えを言葉にし、魁斗も樹里もお互いにぶつけ合っていた。キャッチボールではなく、ドッチボールのように一方的に投げ合っている。対話なんてものは成立しておらず、雪合戦のように戦いとなっていた。


「あ?」


メンチを切るヤンキー。そんな聞き返し方を魁斗はした。凶悪な人相の秋明にも負けず劣らずな迫力が魁斗の顔面にもあった。


樹里は気にする様子もないが。


「桜花さんは甘えられるの、嫌いじゃないと思います。距離を取られる方がさみしいかなって思うんです。甘えたら、相手してくださいますし、面倒って反応しつつも最後まで相手してくださります!」


会話が平行線となっている。どちらも相手の意見に従う気はないようだ。


樹里もまた、主張を続けていた。


え?桜花が面倒だって反応してたの、感知していたの?だなんてツッコミは誰もしない。桜花がいたならば、聞いていたかもしれないが、この場に気にするものはいなかった。そんな空気でもなかったしね。


面倒だっていう反応にきづかなかったのではなく、スルーしていた。そんな桜花にとって驚きの事実はスルーされていく。

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